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第112話 妖精

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夕食後、魔物に関する研究を読んでいると目に留まる論文があった。

そこには”魔物の身体を構成する要素”と書かれていた。



『…そういえば魔石が核になってることくらいしか知らないな。』



読んでみると、どうやら魔素が関係しているとのことだ。



神聖魔法でフィールドの魔素を薄くする実験を行った結果、まず魔石が突然現れた。

そしてその魔石に吸い付くように魔素が集まり、身体が少しづつ構成されて出来上がっていったらしい。



『魔素か…ってことは世界中の魔素を神聖魔法で浄化したら魔物はいなくなるのか…?』



しかし、俺の疑問は浅はかだったようだ。

論文の最後に”ただし、魔素は浄化しても時間とともに発生するため、魔物の殲滅は見込めない”と書かれていた。



『まぁそう簡単にいかないのがこの世の中だよな。』



とりあえず生態研究より明日の支度をしようと思う。

”アイテムボックス”内を確認してみると、何故か所持金が増えていた。



『…え?あ、そうか。』



奴隷たちの屋敷に、俺の”アイテムボックス”に繋がる空間袋を置いてきていたのを失念していた。

契約通り、毎月所得の何割かを払ってくれていたのだろう。



奴隷の企業は最初、お金を稼ぐために始めたものだ。

しかし、今となっては俺一人でいくらでも稼げるので不要となってしまった。



『…まあ有用な人材を奴隷で終わらせるのはもったいないし経済が回るか。』



拠点作りにもなっているので、今後も継続することにした。

このように色々確認していると時間が過ぎ、眠りについた。



翌朝



「ダグラス、起きてる?」



「ああ。」



「入るわね。」



リヴェリアの部屋着姿はとても艶やかだった。

朝からいいものが見られた。



『…って俺は変態か!!』



脳内で自分に突っ込んでしまった。



「これから精霊の森に向かうの?」



「その予定だ。」



「じゃあこれを持っていくといいわ。」



そういうと、リヴェリアは巻物を渡してきた。



「…これは?」



「手紙よ。精霊の森は認められた者以外入れないの。場合によっては迎撃されるわ。」



「そうだったのか…」



もし知らずに行っていたら危なかった。

正直精霊たちの強さを知らないため、不安だ。



「それで、これは精霊の言語で書いた手紙なの。これを見せればきっと入れてくれるわ。」



「ありがとう。じゃあ行ってくる。」



「ええ。気をつけてね!!」



精霊の森は幻惑の森深部にあるのだが、幻惑の森全体に結界を展開することで方向感覚を狂わせてその存在を隠しているらしい。

精霊の森に近づけば近づくほどその結界の強度が上がり、更に感覚を狂わせるそうだ。



『俺なんかにたどり着けるか…?』



だいぶ不安だが、とりあえず行ってみないことにはわからない。

バフと風属性魔法を行使して超高速で飛び、数時間で幻惑の森の入り口に着いた。



『思ったより時間かからなかったな。』



そこは特に変わったところがない普通の森だった。

誰かに教えてもらわない限り、ここに精霊がいるとは思わないほど平凡だ。



『よし、行くか!』



一歩踏み出した瞬間、何か膜を通ったような感覚に襲われた。

おそらく今のが最初の結界だったのだろう。



『…もしかして”デバフ無効”の影響で無効化されて、普通に進んでいくだけで着くのでは?』



そのまま奥へと進んでいき、中間くらいに着いた頃、奇妙な事態が起こった。



「…出ていけ…この森から出ていけ…」



圧力のある低い声で誰かが警告を始めた。

ということは順調に精霊の森に近づいて来ているのだろう。



「…それ以上進んだら力尽くで追い出すぞ!!」



「待ってくれ!!少し話がしたい!!!」



攻略しに来たわけではないので、俺は対話を望んだ。



「お前と話すことなど無い!!!」



声の主がそう声を荒げて言うと、真正面から強い風が吹いてきた。



「ハイエルフの子から手紙を預かってるんだ!!!せめてそれを読んでからにしてくれ!!!」



「ハイエルフだと…!!!…分かった。今使いを出す…」



そう言うと、白い光の粒がふわふわと飛んできた。

真祖との戦闘後習得しまくったスキルの中に”精霊視”というものがあったので行使してみると、四つの羽が生えた小人のような女の子が飛んできていた。



「…妖精か?」



声を出すと、ばっちり目が合った。



「…っ!!おじいちゃん!!!!この人間私のことが視えてる!!!!」



「なんだとっ!!!」



視えないふりをした方がよかったのだろうか。

もしこれで反感を買っていたりしたら、二度とここへは来れなくなってしまうだろう。



「…お前、”精霊魔法”を使えるのか?」



「ああ。まだ精霊と契約はしていないがな。」



「そうか…なら最初に言って欲しかったぞ。」



「言葉も聞かずに武力で脅してきたのはそっちだろ…」



「うっ…すまなかった…」



声の主は思ったより話が通じるようだ。

それも、素直に謝罪ができるのは好印象だ。

この世界では基本的に態度がでかい人が多く、中には絶対に謝らない輩もいるのだ。



「気にしてないさ。それより、手紙はどうするんだ?」



「このまま進んで精霊の森に入ってくれ。中で読む。」



「分かった。」
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