パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅥ ③

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「だって、……なんか、俺じゃなくて祥くんが言うと、保護者が出てきたみたいっていうか」

 茅野はそんな見方をしないとは思うのだが、自分のプライドが邪魔をするというか。
 ぼそぼそと言い募るさまが、あまりにも幼かったのかもしれない。ふっと成瀬が笑った。

 ――あ、珍しい。

 懐かしい、顔。

「そういえば、おまえ、ここに入ってすぐくらいのころにも言ってたな。懐かしい」
「忘れてよ、いいかげん」

 三年も前の話を持ち出されると恥ずかしいものがある。譲らず主張して困らせた覚えもしっかりあるものだから、余計に。
 苦い声になったのだが、成瀬は気にしなかった。

「いや、だって。そもそも、俺が言わなくても、篠原だって向……、向原も知ってたから」
 あんまり意味ないのになって、と続いた声も、表情も、完全にいつもどおりのものだった。ぶれたように思えたのだって、本当に一瞬だった。自分でなければ、気づかなかったのではないかと思うくらいに。

「あのさ」
「あ、茅野。ちょうどよかった」

 呼びかけを遮るようにそう言って、成瀬が食堂の出入り口に視線を向けた。
手招かれた茅野は、嫌な予感でもしたのか、うんざりとした顔を隠しもしない。

「なんだ、その組み合わせは。おまえ、もしかしなくとも、取ったな」
「まだ取ってはないけど、そうしたい」
「おーい、高藤」

 恨みがましい声に、つい愛想笑いになる。

「言っただろうが、四月にも。こいつが生徒会に引き入れたがっているところを勝負してまで寮生委員会にもらったと」
「だから、それが、そもそも皓太の意志を無視してるって話だと思うんだけど」
「おまえにだけは言われたくなかったぞ、それは」

 呆れた溜息ひとつで、茅野が空いていた席に腰を下ろした。

「じゃあ、なんだ。今回は、高藤の意志で生徒会の補選に出ると。そういう話だと言いたいわけか」

 なんだ、補選の話、茅野さんも知ってるんじゃないか、と思いながらも、
「はぁ、そのつもりで」と愛想笑いのまま頷く。

「向原の後釜に、か」

 試すかのような強い視線に、皓太は愛想笑いをやめた。そうして、まっすぐに見つめ返す。
 やると決めたら、きちんとするつもりでいる。自分にとって、大切にしたいものがなになのかも、少しはわかったつもりだ。

「そのつもりです」
「そうか」
「はい」
「……まぁ、それはたしかに、妙な二年や三年に当選されるよりはいいと思うが」

 自身を納得させようとしているふうではあったけれど、了承してくれるつもりらしいとわかって、ほっとした。
 まさかとは思うが、自分の処遇で揉められたくはなかったので。

 ――でも、そういや本尾先輩、言ってたな。茅野さんは成瀬さんに甘いだとか、なんとか。

 みささぎ祭のときのことだ。その話を聞いたときは実感がなかったのに、最近では少しわかる気がしている。
 榛名の一件のときも、成瀬の言い分のほとんどをこの人は通していた。もちろん、それが最善だと思ったから、ということでもあったのだろうけれど。
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