パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 2 ④

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「うちの寮のことに、おまえが口を出す権利はないだろうが」
「俺にはな」

 悔し紛れのような反論を一蹴して、笑う。

「でも、楓寮の中にも不満に思ってたやつはいるんじゃない? あれだけ五階で好き放題されたら、俺は嫌かな」

 うるさいと嘆いていたのは篠原だけではない。言い逃れさせないだけの証拠も揃えている。

「おまえ……」

 なにかに思い至ったのか、声がさらにワントーン低いものに変わる。

「人の寮でなにした?」
「なにしたって、人聞きの悪い。してたのは、おまえだろ」

 証拠を揃えにわざわざ出向いたわけではないのだが、勘違いは正さなかった。そう苦笑すると、教室内で小さな笑い声が立った。楓寮に所属しているベータの生徒だ。迷惑を被っていた筆頭だったことを思えば、あたりまえの反応である。
 寮にいるのは、限られた特別フロアの住人だけでも、一部の特進科の生徒だけでもないのだから。
 世間一般の高校に比べてアルファの比率が飛び抜けて高いと言われていようが、学園の大半を占めているのは、支えているのは、ベータだ。
 そのベータを丸無視して、アルファとオメガしか存在しないかのような世界をつくるから、足元をすくわれる。
 溝をつくったのは、間違った選抜意識だ。そうしてそういうものは、往々にして歪な秩序を形成するのだ。些細な切欠で崩れかない、不安定な秩序を。

「だからこうなったんだろ? 俺じゃない、おまえのせいだ」

 言い切った瞬間、篠原が椅子を蹴った。それ以上はやめとけと言われていることはわかったが、退く気はなかった。ここで退いたら、煽った意味がなくなってしまう。
 机に置かれたままの指先が、怒りで小刻みに震えている。それを見て取って、成瀬は駄目押した。

「違うって言いたいなら、おまえの寮生に聞いてみろよ。五階で踏ん反り返ってる三年だけじゃなくて、全員にな」

 ダンと大きな音を立てて、机が揺れる。冷めた目でその威嚇を見つめていると、今度は腕が伸びてきた。けれど、こちらに触れる前に止まった。
 視線を向けると、長峰の肘を背後から掴んだままの状態で、茅野が呆れた顔で溜息を吐いた。

「言いすぎだ。――まぁ、間違ったことは言っていないとは思うが。そのあたりでやめておけ。長峰も」

 茅野が手を離すと、どこからともなくほっとした空気が流れ始める。入れられた横やりに、しかたなく成瀬は口をつぐんだ。

「文句があるなら俺に言え。寮生委員会への提言を出したのは俺だし、決定権を持っているのは寮生委員会だ。寮生委員会の決定に生徒会は不介入。おまえも知っているだろう」
「その前提があやしいんだよ。トップがおまえと成瀬の時点で」

 苛々とした調子のまま、長峰が茅野に向かって吐き捨てる。

「昔から好き勝手してるだろうが。みささぎ祭がいい例だ」

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