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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2 ⑤
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「お疲れさまです。もう、今日は生徒会はもういいんですか? 篠原先輩、寮に戻ってこられるの、いつも遅いですものね」
お忙しいそうだなぁって、心配してたんです、とにこにこと労われた篠原は、いや、まぁ、と微妙な反応だ。
指摘されたばかりとあって、若干バツが悪いらしい。その対応に嫌な顔をするでもなく、水城は隣にいた生徒へと笑顔を向ける。
「あ、ごめんね。ちょっと先に帰ってもらっててもいいかな? ――うん、いいよ、また明日」
一言二言水城と言葉を交わした最後に、自分たちのほうに軽く一礼をして、その生徒は立ち去って行った。
一応アルファであるのだろうに、華もなければ圧もない、ベータと称しても疑われることのなさそうな存在感。
その背中を見送って、似ていないな、と内心で向原は判じていた。似ていない。あれはもっと性根の歪んだなりをしていた。まぁ、血の兄弟でも必ずしも似ているわけではないのだから、そんなものかもしれないが。
「今の彼、ご存じです?」
同じように立ち去るまで視線を送っていた水城が、そこで振り返った。
「轟爽希くんって言うんです」
反応を見るような顔で、にこりとほほえんで続ける。
「彼は、真面目で、こう言ってはなんですけど、そう目立つタイプではないですが、一緒にいると落ち着くので、最近はよく一緒にいるんです。クラスメイトでもあるので。――特進科なんですよ、彼も。まぁ、うちのクラスで目立ってるのは、高藤くんですけどね」
新学期になってから、まだ始まってもないのに、選挙、選挙ですもんね、と嫌味とも取れるものをにじませてから、そう、そう、と水城が笑みを深くした。
「彼の従兄さん、先輩方と同じ学年にかつて在籍していらっしゃったそうですよ。轟実春さん。こちらはさすがにご存じでしょう」
「まぁ、なぁ」
懐かしい名前を聞いて戸惑った、といった雰囲気でこちらを見やった篠原が、面倒くさそうに口を開く。
向原に応じる気がないと判断したらしい。話聞いてやるって言ったのは誰だよ、と言いたそうな顔もしていたが、応じてやってもいいと思える目新しい話でなかったのだから、しかたがないだろう。
「中等部までは一緒だったから、さすがに存じてはいるけど」
「あちらは、先輩方のこと随分と覚えていらっしゃるみたいでしたけど。冷たいんですね、篠原先輩」
にこにことほほえむ顔を居心地悪そうに見下ろしていた篠原が、そこで小さく溜息を吐いた。
「あのな、水城」
「はい、なんでしょう」
「一応、同じ所属寮の先輩として忠告しとくけど。轟――一年のほうじゃなくて、その一年の従兄のほうな、あんまり関わらないほうがいいぞ。本尾とか長峰の比じゃなく、性質悪いしゲスいから。今ここにいないのが、その良い証拠」
その所属寮で、水城がなにをやっていたのか十分に知っているだろうに、あいかわらず無駄に人のいいことを言っている。
半ば以上呆れた向原とは裏腹に、水城はうれしそうな表情を崩さなかった。
お忙しいそうだなぁって、心配してたんです、とにこにこと労われた篠原は、いや、まぁ、と微妙な反応だ。
指摘されたばかりとあって、若干バツが悪いらしい。その対応に嫌な顔をするでもなく、水城は隣にいた生徒へと笑顔を向ける。
「あ、ごめんね。ちょっと先に帰ってもらっててもいいかな? ――うん、いいよ、また明日」
一言二言水城と言葉を交わした最後に、自分たちのほうに軽く一礼をして、その生徒は立ち去って行った。
一応アルファであるのだろうに、華もなければ圧もない、ベータと称しても疑われることのなさそうな存在感。
その背中を見送って、似ていないな、と内心で向原は判じていた。似ていない。あれはもっと性根の歪んだなりをしていた。まぁ、血の兄弟でも必ずしも似ているわけではないのだから、そんなものかもしれないが。
「今の彼、ご存じです?」
同じように立ち去るまで視線を送っていた水城が、そこで振り返った。
「轟爽希くんって言うんです」
反応を見るような顔で、にこりとほほえんで続ける。
「彼は、真面目で、こう言ってはなんですけど、そう目立つタイプではないですが、一緒にいると落ち着くので、最近はよく一緒にいるんです。クラスメイトでもあるので。――特進科なんですよ、彼も。まぁ、うちのクラスで目立ってるのは、高藤くんですけどね」
新学期になってから、まだ始まってもないのに、選挙、選挙ですもんね、と嫌味とも取れるものをにじませてから、そう、そう、と水城が笑みを深くした。
「彼の従兄さん、先輩方と同じ学年にかつて在籍していらっしゃったそうですよ。轟実春さん。こちらはさすがにご存じでしょう」
「まぁ、なぁ」
懐かしい名前を聞いて戸惑った、といった雰囲気でこちらを見やった篠原が、面倒くさそうに口を開く。
向原に応じる気がないと判断したらしい。話聞いてやるって言ったのは誰だよ、と言いたそうな顔もしていたが、応じてやってもいいと思える目新しい話でなかったのだから、しかたがないだろう。
「中等部までは一緒だったから、さすがに存じてはいるけど」
「あちらは、先輩方のこと随分と覚えていらっしゃるみたいでしたけど。冷たいんですね、篠原先輩」
にこにことほほえむ顔を居心地悪そうに見下ろしていた篠原が、そこで小さく溜息を吐いた。
「あのな、水城」
「はい、なんでしょう」
「一応、同じ所属寮の先輩として忠告しとくけど。轟――一年のほうじゃなくて、その一年の従兄のほうな、あんまり関わらないほうがいいぞ。本尾とか長峰の比じゃなく、性質悪いしゲスいから。今ここにいないのが、その良い証拠」
その所属寮で、水城がなにをやっていたのか十分に知っているだろうに、あいかわらず無駄に人のいいことを言っている。
半ば以上呆れた向原とは裏腹に、水城はうれしそうな表情を崩さなかった。
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