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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2 ④
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「このまままっすぐ行くと、めちゃくちゃ面倒なことになる気がする」
嫌な声が聞こえた、と続けて呟いた篠原が、ぴたりと足を止めて、出てきたばかりの校舎を振り返っている。
もうこれ以上はやらないと宣言して、着いて出てきたくせに、今にも戻りたいと言い出しかねない雰囲気だ。
その横顔を一瞥して、構わず歩き出す。あいかわらずの動物的な勘の良さだとは思うし、戻りたいのなら好きにすればいいとも思うが、そこに付き合う気はさらさらない。
「おまえは、どうせ、このあと寮で会うだろうが」
「だからだよ。だから、余計なところで関わり持ちたくないの」
わかるだろ、と言いながらも、結局、足音はついてきた。大方、自分にだけ水城との接点を持たせたくないのだろう。
「いい性格してるのも知ってるし、メンタル強いのも十分に思い知ってるけど。それはそれとして、あの顔に向かって、なんかいろいろ言いにくいんだよな。……いや、まぁ、そもそも、向こうがなにも言わなかったら、こっちも言う気はないんだけど」
「おまえ、それでよく皓太焚きつけたな」
「年の差」
そう言ってやると、嫌そうに篠原が首を振った。
「俺がやり合うのとは、また違うだろ。勝手なこと言ってる自覚はあるけど、いなかったら平和なのにって考えるのと、直接どうのうこうのっていうのは別というか」
ちょっと押したら吹っ飛びそうだし、と続いた台詞に、呆れ半分で失笑する。
「あいつがアルファくらい簡単に転がせるって高括ってんの、おまえみたいなやつが多いからだろうな」
なんだかんだと言ったところで、この学園には自分より弱いものを痛めつける趣味のない、お上品な人間が多いということだ。水城は、そのあたりも織り込んでいたのだろうが。
「相手が誰だろうとお構いなしのおまえにだけは言われたくねぇ……。おまえ、そのあたりまったく躊躇ないもんな。あの茅野でさえ、成瀬の顔は殴りにくいって言ってたのに。おまえ、ぜんぜん平気でやりそう」
「話が違うだろ、それは」
「なにがどう違うって……、あ」
出た、と囁いて寄こす声は、完全に「ほら見ろ」と言っていた。遠目だが、見ればわかる。背の高い男子生徒と一緒に木陰でなにやら話しているのは、まちがいなく水城だった。
相手の生徒が前寮長でも目立つアルファでもなかったことが意外だったのか、「誰だ、あれ」と篠原が呟く。
「さぁな」
歩く速度を緩めることなく、おざなりに受け流せば、隣から突き刺さる訝しげな視線が強くなった。
「おまえ、もしかして、鉢合わせしたくてこの時間に生徒会室出たり……、マジか」
勝手にひとりで納得し始めているのを、「まさか」と一笑する。
「タイミングが合えば、話くらい聞いてもいいかと思ってやってたってだけだ」
「うわ、こわ」
呆れ切った調子で篠原が応じたのとほぼ同じタイミングで、水城が振り返った。たった今こちらの存在に気がついたとでもいうように、その顔に華やかな笑みが浮かぶ。
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