パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 2 ③

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「でも、その、なんだ。実際、こうなると、気の毒な気がしないでもないというか」
「気の毒、ね」

 振り回されているという点において、違いはない。
 苦笑ひとつで同意すれば、そうだろ、と呆れ半分憐み半分という感じで篠原が言葉を継いだ。

「うちの寮のほうも、休み明けて、まぁ……、少なくとも、表面上は、多少なりとも落ち着いたわけで。ついでに言うと、ハルちゃんも気持ち悪いほど大人しくしてるしな」
「根本的なところはなにも変わってねぇだろ、両方とも」
「それもそうなんだけど。表面上だけでも大人しくしてくれてたら、それはそれで目も瞑れるだろ。長峰と好き勝手してんのは、この際どうでもいいし」

 だからってわけではないけど、と迷うような調子で苦笑する。

「なにも今すぐやらなくてもいいんじゃねぇのかなって。俺ら寄りの二年をあいだに挟んだら、一年楽できるだろ。そのあいだはこのまま補佐してたらいいし、問題がありそうだったらコントロールしたらいい」
「まぁ、それもそうかもな」
「だろ? 本人がやりたいっていうなら、水差す気はないんだけどな。最終的に決めたのは、皓太のほうみたいだし」

 そうかもな、と同じ相槌を向原は繰り返した。べつに、そのこと自体はどうでもよかったからだ。一年早く出ようが出なかろうが、それによる不利益があろうがなかろうが、どうでもいいと言えばどうでもいい。
 余計な心配をしなくても、資質があればどうとでもすると思うからだ。そう割り切れず気にしている時点で、十分にこの男も過保護だとも思うが。

「だったらって、成瀬が世話してやってんのも、わからなくはないし。まぁ、それはそれとして、手ぇ出しすぎだとは思うけどな。でも、おまえはそういうのとは一線引いたと思ってたから」

 だから、ちょっと意外だった、と続いた、こちらの思惑を推し量るように繰り返されたそれに、向原は先の相槌を同じように淡々と応じた。

「約束を、誠実に履行してやってんだよ」

 ここでまだ折れるわけにはいかないと、馬鹿のひとつ覚えのようなことを言うから。
 やたらと神妙な顔で、皓太を選挙で通してやりたいと頼むから。
 つくることのできる貸しをただ増やしているだけだ。
 なんとも言えない視線を寄こしていた篠原が、完全に匙を投げた調子で呟いた。

「おまえ、その言い方が怒ってなかったら、なんなんだって話すぎない?」

 その問いには答えないまま、ひとつ笑って、向原は手元を片づけた。
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