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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 3 ⑤
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「そんなに言うほど? さっきも、皓太はちょっと安心してたみたいだったけどな。思ったよりふつうだって」
「マジか」
おざなりに流したつもりもなく、正直に感じたままを答えただけだったのに、珍獣を見るような顔をする。
「おまえ、やっぱりすごいな。図太い」
「図太いって。皓太がそう言ってたっていう話だったんだけど」
「いや、皓太はべつにそれでいいんだけど。……なんでおまえが気づかないかな」
呆れ切った言い方のせいか妙にカチンときてしまった。
――だいぶ落ち着いたつもりだったんだけどな。
感情のコントロールくらいは、なんなくできるようになっていたつもりだったのに、気をつけないといけない。
そもそもとして、そこまで苛立つ必要のあることではなかったはずなのに。
そう意識し直して、なんでもないように言い放つ。数年前ならいざ知らず、今の自分にそれを言われても手に余るというのが、正直なところでもあった。
「おまえが気づいたんなら、おまえが責任もってどうにかしたらいいだけだろ」
「したし、もう言ったわ。言って無理だったから、ここで愚痴ってんの。まぁ、あいつが俺の言うこと聞くとは思ってなかったけど」
だから、おまえにどうにかしてもらおうと思って、と続けた篠原の口ぶりは、原因の一端はおまえにあるのだろうと言わんばかりだ。
「ねぇの、心当たり」
「心当たりって、なんで俺に原因がある前提なんだよ」
心当たりなんて、ありすぎてわからないくらいだ、と言う気には、さすがになれなかった。
そもそも、篠原から見て「そう」だったとしても、自分にはあの態度なのだ。妙な心配をするなと茅野は言っていたが、怒る気にもなれないくらい呆れていると解釈するほうが、やはり正しいように思える。
「なんでもなにも、おまえ以外に思い当たらないから言ってんの。なんとかしてくれ、マジで。頼むから」
「なんとかしてくれって言われても。べつに、いいんじゃない? 少なくとも、俺も皓太も当たられてないし。迷惑でもなんでもないっていうか。篠原が困るなら、篠原がなんとかすればいいだけだと思うし。俺なんかより、ずっと付き合い長いだろ」
「そりゃ、付き合いは長いけど」
なんとも言えない顔で息を吐いた篠原が、前髪をうしろにかきやる。
律義に見つけるまで探すつもりなのか、それともていよく追い出されたとわかっていて時間を潰しているのか。どちらかは知れないが、皓太が戻ってくる気配はないままだった。
「でも、それとこれとは話が別だろ」
なにがどう別なのかという話を聞きたくはなくて、そうかな、と適当に受け流す。
自分でもよくわかっていないことを、外からどうのこうのと言われたくなかったのだ。
「まぁ、俺にできるなら努力はするけど。確約はしてやれないかも。あいつがなに考えてるのか、よくわからないし」
「よくわからないって……、成瀬、おまえな。投げんなよ」
「だから。それこそ篠原にはわかるっていうなら、篠原が話聞くなりなんなりしたらいいと思うんだけど」
応じながら、あまりの堂々巡りぶりに苦笑いになってしまった。本当に、なんでこんな話をしなければならないのか。
「……まぁ、いいか」
面倒だと思うことさえ嫌で、つくり慣れた笑みを成瀬は浮かべ直した。
「さっきの皓太のことやってやってる、のほうの話に戻っていい?」
「あ?」
「ガラ悪いな」
もう一度そう苦笑してから、はっきりと明言する。これ以上、余計な勘ぐりを入れさせないための、ただの牽制だ。
「最低限ちゃんと引き継ごうと思ってるし、教えてやれることはぜんぶ教えてやろうと思ってる。皓太を通したいから協力してくれって頼んだとおりで、通してやろうと決めて、俺が俺の意志でやってる。それで、皓太はそれに応えてくれてる」
「……」
「それだけ」
にこ、とほほえめば、まぁな、と嫌そうに頷く。納得していないとしても、言っても無駄だとわかってくれたら、とりあえずはそれでいい。
だから、不納得な雰囲気に言及はしなかった。
「そういうことでもいいけど。でも、その前に、おまえも、向原も、もうちょっとくらい、俺の胃を気遣ってもいいと思うわ」
「マジか」
おざなりに流したつもりもなく、正直に感じたままを答えただけだったのに、珍獣を見るような顔をする。
「おまえ、やっぱりすごいな。図太い」
「図太いって。皓太がそう言ってたっていう話だったんだけど」
「いや、皓太はべつにそれでいいんだけど。……なんでおまえが気づかないかな」
呆れ切った言い方のせいか妙にカチンときてしまった。
――だいぶ落ち着いたつもりだったんだけどな。
感情のコントロールくらいは、なんなくできるようになっていたつもりだったのに、気をつけないといけない。
そもそもとして、そこまで苛立つ必要のあることではなかったはずなのに。
そう意識し直して、なんでもないように言い放つ。数年前ならいざ知らず、今の自分にそれを言われても手に余るというのが、正直なところでもあった。
「おまえが気づいたんなら、おまえが責任もってどうにかしたらいいだけだろ」
「したし、もう言ったわ。言って無理だったから、ここで愚痴ってんの。まぁ、あいつが俺の言うこと聞くとは思ってなかったけど」
だから、おまえにどうにかしてもらおうと思って、と続けた篠原の口ぶりは、原因の一端はおまえにあるのだろうと言わんばかりだ。
「ねぇの、心当たり」
「心当たりって、なんで俺に原因がある前提なんだよ」
心当たりなんて、ありすぎてわからないくらいだ、と言う気には、さすがになれなかった。
そもそも、篠原から見て「そう」だったとしても、自分にはあの態度なのだ。妙な心配をするなと茅野は言っていたが、怒る気にもなれないくらい呆れていると解釈するほうが、やはり正しいように思える。
「なんでもなにも、おまえ以外に思い当たらないから言ってんの。なんとかしてくれ、マジで。頼むから」
「なんとかしてくれって言われても。べつに、いいんじゃない? 少なくとも、俺も皓太も当たられてないし。迷惑でもなんでもないっていうか。篠原が困るなら、篠原がなんとかすればいいだけだと思うし。俺なんかより、ずっと付き合い長いだろ」
「そりゃ、付き合いは長いけど」
なんとも言えない顔で息を吐いた篠原が、前髪をうしろにかきやる。
律義に見つけるまで探すつもりなのか、それともていよく追い出されたとわかっていて時間を潰しているのか。どちらかは知れないが、皓太が戻ってくる気配はないままだった。
「でも、それとこれとは話が別だろ」
なにがどう別なのかという話を聞きたくはなくて、そうかな、と適当に受け流す。
自分でもよくわかっていないことを、外からどうのこうのと言われたくなかったのだ。
「まぁ、俺にできるなら努力はするけど。確約はしてやれないかも。あいつがなに考えてるのか、よくわからないし」
「よくわからないって……、成瀬、おまえな。投げんなよ」
「だから。それこそ篠原にはわかるっていうなら、篠原が話聞くなりなんなりしたらいいと思うんだけど」
応じながら、あまりの堂々巡りぶりに苦笑いになってしまった。本当に、なんでこんな話をしなければならないのか。
「……まぁ、いいか」
面倒だと思うことさえ嫌で、つくり慣れた笑みを成瀬は浮かべ直した。
「さっきの皓太のことやってやってる、のほうの話に戻っていい?」
「あ?」
「ガラ悪いな」
もう一度そう苦笑してから、はっきりと明言する。これ以上、余計な勘ぐりを入れさせないための、ただの牽制だ。
「最低限ちゃんと引き継ごうと思ってるし、教えてやれることはぜんぶ教えてやろうと思ってる。皓太を通したいから協力してくれって頼んだとおりで、通してやろうと決めて、俺が俺の意志でやってる。それで、皓太はそれに応えてくれてる」
「……」
「それだけ」
にこ、とほほえめば、まぁな、と嫌そうに頷く。納得していないとしても、言っても無駄だとわかってくれたら、とりあえずはそれでいい。
だから、不納得な雰囲気に言及はしなかった。
「そういうことでもいいけど。でも、その前に、おまえも、向原も、もうちょっとくらい、俺の胃を気遣ってもいいと思うわ」
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