パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 4 ③

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「べつに」

 そう応じて、廊下の壁に背を預ける。消灯の時間を過ぎた寮内は、しんと静まり返っていた。

「馬鹿すぎて、目に余っただけだ」
「まぁ、そう言ってやるな。四谷にしては珍しいと思ったが。おまえは知らないかもしれないが、元来、機転も利くし、危機管理はしっかりしているタイプなんだ」

 あれのどこが、と呆れていることが伝わったらしく、早々に茅野は話題を切り替えた。所属寮の下級生というだけで、見る目が甘くなるらしいのだから、どうかしている。

「それに、どちらかと言うと、俺は、絡んでいた三年のほうにそう言ってやりたいが。誰だったんだ? 四谷は名前は知らないと言っていてな。見当はついたが、おまえから確認しておきたい」
「聞いてどうする気だよ」
「寮生委員会の立場から、俺も釘を刺しておきたいだけだ。本尾が釘を刺さなくなったからな」

 そういう意味では助かっていたんだが、と続いた過去形のそれに、向原は名前を伝えた。中等部にいたころから、不良ぶっていた集団のうちのふたりである。
 またかとばかりに、茅野が頭を振った。

「そいつらにはしっかりと釘を刺すから、まぁ、いいとして。あいつの常とう手段だな。校内を荒らしたいときは、締め付けを緩めて不良を好きにさせる」
「まぁ、そうだな」
「自分はなにもしてないというていを成立させているところも含めて、趣味が悪い」

 悪いのは趣味なのか、とどうでもいいことを考えたまま、そうだな、と同じ相槌を繰り返す。概ね、そのとおりだったからだ。
 嵐を起こそうとしたのは水城だっただろうが、それを増長させて、加速させているのは、本尾に違いない。

「どうせ、というと語弊はあるが、適当に焚きつけて面白がってるだけなんだろうが。時期が時期だからな。いろいろと、あまり大ごとにしたくない」
「選挙、ね」
「再来週には公示だろう。来月になったら、本格的に活動が始まる。高藤を通す手伝いはしてやると請け負った手前、ということもあるが。学内を無駄に荒らす気は俺にはない」
「おまえは、そうだろうな」
「そういうおまえは違うのか?」

 それこそいろいろと手を貸してやっているだろう、と言われて、「べつに」と向原は失笑した。
 学内のことも、選挙のことも、本当に心の底からどうでもいい。

「聞いてだろ、おまえも。そう取り決めただけだ」
「おまえの意志ではないと。随分とらしくないことを言う」
「……」
「それこそ、『べつにいい』んだけどな。こう言うと語弊はあるかもしれないが、おまえは確実な安全を取るだろう。そういう意味で信用してるんだ」
「随分とおまえに都合の良さそうな信用だな」
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