パーフェクトワールド

木原あざみ

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第三部

パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 7 ①

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[7]


「よかったんですか、高藤」

 ぱたんと閉まったドアを見やって、どこか困ったように一学年下の後輩が笑ったので、会長の椅子に座ったまま、成瀬も似た笑みを浮かべた。
 面と向かってふたりで話すのはひさしぶりだったが、良くも悪くも昔から印象は変わっていない。
 それなりに視野が広く、それでいて温和で、自分のつくった学園の基盤を壊さない人物。もうひとつついでに、その次に上がってくるだろう幼馴染みの面倒を見てくれるだけの器のある人物。
 だから、三年前、中等部の会長の席を譲る相手を、成瀬は彼に決めた。

「いいよって俺が言うことでもないけど、いると話しづらいでしょ。皓太もいづらかったと思うし」

 自分の予想どおりに、それなりに懐いていたと聞き知っている。適当に理由をつけて追いやったのも、半分は皓太のためだ。なんでもない調子でそう応えてから、でも、と話を切り出す。

「ちょっとだけ意外だったな。少し前にね、茅野とも話してたんだよ。選挙。呉宮はどうするんだろうなって」
「なんか、それだけ聞いてると怖いですね」
「どうするのかなって気にしてたんだよ、一応」

 怖い話じゃないよ、と断って、ほほえむ。そう、べつに、出てくる前から叩き潰すというような話をしていたわけでも、なんでもない。

「まぁ、俺は、よっぽど頼まれない限り、呉宮はこんな面倒ごとに首は突っ込まないかなって思ってたんだけど」
「茅野先輩と成瀬先輩の組み合わせってだけで、十分怖いですよ」
「そうかな。本尾と長峰の組み合わせもなかなかだと思うけど」

 断り切れなかった、と尋ねる。嫌味のつもりはなかったのだが、困ったふうに苦笑されてしまった。その調子のまま、そういうわけではないんですけど、と否定する。その答えに、成瀬はほほえんだ。

「だったらいいんだけど」
「出るなら推してやるとは言われましたけどね。まぁ、それでも、決めたのは俺の意志なんで」

 一応は、と言わんばかりのそれに、苦笑いになる。

「よかったの、それ」
「それは、まぁ、先輩たちの代理戦争に巻き込まれてるみたいで、気分良くはないんですけどね。あの人たち、成瀬先輩に一泡吹かせたいだけでしょ」
「そこまでわかってて、乗るんだ?」
「べつに、いいんですけどね。俺は、高藤でも。あいつやっぱすごいですよ。年下ですけど、素直にそう思いますし」

 皓太を推すとはじめに伝えたことに対するフォローのつもりなのか、そんなふうなことを言ってから、でも、と呉宮は言った。

「俺が断ったら、あの人ら、もっとヤバいとこに声かけて焚きつけるでしょ。それはさすがにされたくないんですよ。先輩から見たら、俺の学年は突出したやつのいないつまらない集まりかもしれないですけど。俺にはそれなりの愛着はありますから。あんたらの代理戦争でむちゃくちゃにされたくないんですよ」
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