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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 7 ⑤
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だったら、どうにかなんてなるはずもない。話を終わらせるように、にこりとほほえむ。その顔を呆れたように見下ろしていた向原が、「なぁ」と問いかけてきた。
「最後に聞くけど、おまえ、なんのために、ここに立ってんの」
「なんのためって……」
予想していなかった問いかけに、ことばに詰まった。
「皓太が言ってた。おまえは優しいから、自分たちのために、ここを守ってくれてるんだって」
笑えるよな、と続いた台詞に、揶揄し返すように笑う。この男からすれば、笑える話ではあるだろう。
「……たしかに、昔はそんなにたいそれたことは考えてなかったけど、今は多少は考えてるつもりだけど」
「違うだろ」
こちらの主張をいっさい信じていない調子で、そう切り捨てる。
「自分の利用価値を上げるために利用してるだけだろ、ぜんぶ」
「……」
「今が、正にそうだろ。皓太のためって名目で、自分の価値をつくろうとしてるだけだろうが」
らしいことを言うことも、煙に巻くことも、得意なつもりだったのに、なにも言えなかった。
そうだと認めることも、なにも。
「そんなに他人に評価されないと、自分を認められないのか」
自分のために、自分を大事にできないのかと言われているみたいだった。なぜそう思ったのかはわからない。過去に言われたことがあったからだろうか。茅野にも似たことを言われたばかりだったからだろうか。
「違うなら言えよ。聞いてやるから」
目を逸らした成瀬に、完全に呆れ切った調子で向原が笑った。壁についていた手が離れて、もう一度その拳が壁を殴る。それが最後だった。
「言えないなら、もうなにも言うな」
――おまえが、俺になにかするわけないだろ。
そう言えば、それ以上はないと知って、そう笑ったことがある。三年前の話だ。その前からも予兆はあった。けれど、自分たちのなにかが変わったのは、そこからだ。
なにかを諦められたのだ、知っている。
自分になにかを期待することを、だったのだろうか。話せばわかり合えるかもしれないということ、だろうか。わからなかったけれど。
「俺が口出せるようなことでもない、か」
もう何度も。言い聞かせるように繰り返していたことをぽつりとひとりごちる。口を出す筋合いのないことだし、そもそもとして、いっそ見放してくれたらいいとも幾度も思っていたはずだった。
そのほうが、楽になると思っていたから。
またひとりに戻った生徒会で書類を片付けながら、成瀬はそっと溜息をこぼした。
放っておいてくれたらいい。余計な手も口も出さずに、気にしないでいてくれたらいい。
そう思っていたことは何度でもある。本当だ。けれど、なにも言うな、と拒絶されたのは、たぶんはじめてだった。
望んでいたはずのことなのに、思いのほか自分がダメージを受けていることに気がついて、自嘲するように成瀬は笑った。
「最後に聞くけど、おまえ、なんのために、ここに立ってんの」
「なんのためって……」
予想していなかった問いかけに、ことばに詰まった。
「皓太が言ってた。おまえは優しいから、自分たちのために、ここを守ってくれてるんだって」
笑えるよな、と続いた台詞に、揶揄し返すように笑う。この男からすれば、笑える話ではあるだろう。
「……たしかに、昔はそんなにたいそれたことは考えてなかったけど、今は多少は考えてるつもりだけど」
「違うだろ」
こちらの主張をいっさい信じていない調子で、そう切り捨てる。
「自分の利用価値を上げるために利用してるだけだろ、ぜんぶ」
「……」
「今が、正にそうだろ。皓太のためって名目で、自分の価値をつくろうとしてるだけだろうが」
らしいことを言うことも、煙に巻くことも、得意なつもりだったのに、なにも言えなかった。
そうだと認めることも、なにも。
「そんなに他人に評価されないと、自分を認められないのか」
自分のために、自分を大事にできないのかと言われているみたいだった。なぜそう思ったのかはわからない。過去に言われたことがあったからだろうか。茅野にも似たことを言われたばかりだったからだろうか。
「違うなら言えよ。聞いてやるから」
目を逸らした成瀬に、完全に呆れ切った調子で向原が笑った。壁についていた手が離れて、もう一度その拳が壁を殴る。それが最後だった。
「言えないなら、もうなにも言うな」
――おまえが、俺になにかするわけないだろ。
そう言えば、それ以上はないと知って、そう笑ったことがある。三年前の話だ。その前からも予兆はあった。けれど、自分たちのなにかが変わったのは、そこからだ。
なにかを諦められたのだ、知っている。
自分になにかを期待することを、だったのだろうか。話せばわかり合えるかもしれないということ、だろうか。わからなかったけれど。
「俺が口出せるようなことでもない、か」
もう何度も。言い聞かせるように繰り返していたことをぽつりとひとりごちる。口を出す筋合いのないことだし、そもそもとして、いっそ見放してくれたらいいとも幾度も思っていたはずだった。
そのほうが、楽になると思っていたから。
またひとりに戻った生徒会で書類を片付けながら、成瀬はそっと溜息をこぼした。
放っておいてくれたらいい。余計な手も口も出さずに、気にしないでいてくれたらいい。
そう思っていたことは何度でもある。本当だ。けれど、なにも言うな、と拒絶されたのは、たぶんはじめてだった。
望んでいたはずのことなのに、思いのほか自分がダメージを受けていることに気がついて、自嘲するように成瀬は笑った。
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