389 / 484
第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅢ 12 ③
しおりを挟む
「じゃなくて。その、さっき、高藤が言ってたとおりで、大人しいから」
「あぁ、そっち」
「そう、そっち。それで、なんか変な噂も聞いたから」
「あぁ、まぁ、あるはあるみたいだね」
知ってはいるけど、興味はないとばかりの反応だったが、めげずに行人は続けた。そういえば、前にも似たような話を持ち出したときも、「変なところでお人好しだよね」というありがたくもない評価をもらっただけだったかもしれない。
「それで、ちょっと気になったから、成瀬さんに話してみたんだけど。その噂が本当なら、生徒会として、風紀と寮生委員会と調整はするけど、高藤は水城とクラスも一緒なんだし、まずそっちに聞いてみたらって」
「なるほど」
いったい自分はどんな顔をしていたのか。話を聞いた高藤は、少しおかしそうに苦笑をこぼした。
「それで、そんな顔してるんだ。さっきも榛名もすごいまともって言ってたけど、まともな会長の意見だと思うよ? まともすぎてどうしたとはちょっと思ったけど」
あの人、基本的に身内びいきだから、と言ってから、まぁ、でも、と言葉を続ける。
「俺でも同じこと言うかな。そもそもの大前提として、水城がなにも考えなしにそんな状態になるわけがないとは思ってるけど、まぁ、もし万が一目の前でなにかあったら助けるし、情報として共有するし精査もするけど、個人的な感情としての心配はないな」
「……でも」
「だから、べつに、榛名のこと突き放したとかではないと思うよ。大きく心配するようなことではないから、俺と話して感情のほうを落ち着かせたらいいって思ったんじゃない?」
いや、違う。話の本意はそこじゃない。そう思ったものの、突き放されたのだろうかと不安に感じていた部分がないとは言えなかったので、行人は押し黙った。
「それに、成瀬さんが知らなかったわけがないと思うし」
「知らないって、水城の噂のことだよな」
「そう、そう。手を打つ気があるなら打ってるだろうし、打たないなら、そのほうがいいって判断したっていうだけだと思うよ。――どう? ちょっとは安心した?」
「安心っていうか」
自分がしているのは、余計な心配でしかないのかという気分は増したけれど。
――まぁ、でも、同じクラスで毎日見てる高藤がこう言うんだから、本当に気にするレベルの話ではないのかもな。
目に余るできごとになっていたら、さすがに無視はしないだろうし。そういう人間だと信用している。
「もうひとつ、聞いてみたらって言われてたことがあるんだけど」
「なに?」
「おまえが、選挙のことで悩んでるみたいだから、よかったら話聞いてやってって」
なんか、悩んでる? なんて、聞いたところで、べつに、なにも、と誤魔化されてしまったら、それ以上をうまく突っ込んで聞き出すことができる自信は、はっきり言ってまったくない。
そういったわけだったので、行人は恥も外聞も捨てて、虎の威を借りだ。年上の幼馴染みが判断した「悩んでるみたい」を勘違いと切り捨てはしないだろうと踏んだからだ。
なんでも聞いてくれていいけどというふうだった余裕の表情が、どんどんと嫌そうになっていく。そうして、その顔のまま、ぼそりと高藤が呟いた。
「……本当、お節介なんだけど」
「お節介って、心配してくれてるんだろ」
「だから、それが余計だって言ってんの。そもそも、おまえに聞けって言ってる時点でお節介だろ。言いたかったら言いたいときに俺が言うよ」
そんな強要されなくても、と続いた声音が本当にうんざりと響いたように思えて、ぐっと胸が重くなる。
聞き方を間違えたかもしれないとも後悔したけれど、でも、それより――。
――つまり、俺は話す相手に選ばないってことだよな。
そういうことだと思った。成瀬は、相談に慣れていないから下手だと思うけれど、気長に聞いてやってと言ってくれた。でも、実際は、その次元に立つことさえできていなかったのだろう。
自分が相談相手として頼りないことは、よくよくわかっているけれど。
そもそも、自分から気にかけようとすら思いたることすらできていなかったのだ。「選挙に呉宮先輩も出るみたいだけど、大丈夫?」と気を揉んでいたのは四谷で、自分は、さらりと確認しただけで、それ以上は気に留めなかった。今回も、成瀬に言われたから、気にしたというだけだ。
だから、拗ねる資格なんて、ないはずなのに。
勝手だな、と自分に呆れた。自分からはなにも提供していないのに、相手からばかりを求めるのだから。
「あぁ、そっち」
「そう、そっち。それで、なんか変な噂も聞いたから」
「あぁ、まぁ、あるはあるみたいだね」
知ってはいるけど、興味はないとばかりの反応だったが、めげずに行人は続けた。そういえば、前にも似たような話を持ち出したときも、「変なところでお人好しだよね」というありがたくもない評価をもらっただけだったかもしれない。
「それで、ちょっと気になったから、成瀬さんに話してみたんだけど。その噂が本当なら、生徒会として、風紀と寮生委員会と調整はするけど、高藤は水城とクラスも一緒なんだし、まずそっちに聞いてみたらって」
「なるほど」
いったい自分はどんな顔をしていたのか。話を聞いた高藤は、少しおかしそうに苦笑をこぼした。
「それで、そんな顔してるんだ。さっきも榛名もすごいまともって言ってたけど、まともな会長の意見だと思うよ? まともすぎてどうしたとはちょっと思ったけど」
あの人、基本的に身内びいきだから、と言ってから、まぁ、でも、と言葉を続ける。
「俺でも同じこと言うかな。そもそもの大前提として、水城がなにも考えなしにそんな状態になるわけがないとは思ってるけど、まぁ、もし万が一目の前でなにかあったら助けるし、情報として共有するし精査もするけど、個人的な感情としての心配はないな」
「……でも」
「だから、べつに、榛名のこと突き放したとかではないと思うよ。大きく心配するようなことではないから、俺と話して感情のほうを落ち着かせたらいいって思ったんじゃない?」
いや、違う。話の本意はそこじゃない。そう思ったものの、突き放されたのだろうかと不安に感じていた部分がないとは言えなかったので、行人は押し黙った。
「それに、成瀬さんが知らなかったわけがないと思うし」
「知らないって、水城の噂のことだよな」
「そう、そう。手を打つ気があるなら打ってるだろうし、打たないなら、そのほうがいいって判断したっていうだけだと思うよ。――どう? ちょっとは安心した?」
「安心っていうか」
自分がしているのは、余計な心配でしかないのかという気分は増したけれど。
――まぁ、でも、同じクラスで毎日見てる高藤がこう言うんだから、本当に気にするレベルの話ではないのかもな。
目に余るできごとになっていたら、さすがに無視はしないだろうし。そういう人間だと信用している。
「もうひとつ、聞いてみたらって言われてたことがあるんだけど」
「なに?」
「おまえが、選挙のことで悩んでるみたいだから、よかったら話聞いてやってって」
なんか、悩んでる? なんて、聞いたところで、べつに、なにも、と誤魔化されてしまったら、それ以上をうまく突っ込んで聞き出すことができる自信は、はっきり言ってまったくない。
そういったわけだったので、行人は恥も外聞も捨てて、虎の威を借りだ。年上の幼馴染みが判断した「悩んでるみたい」を勘違いと切り捨てはしないだろうと踏んだからだ。
なんでも聞いてくれていいけどというふうだった余裕の表情が、どんどんと嫌そうになっていく。そうして、その顔のまま、ぼそりと高藤が呟いた。
「……本当、お節介なんだけど」
「お節介って、心配してくれてるんだろ」
「だから、それが余計だって言ってんの。そもそも、おまえに聞けって言ってる時点でお節介だろ。言いたかったら言いたいときに俺が言うよ」
そんな強要されなくても、と続いた声音が本当にうんざりと響いたように思えて、ぐっと胸が重くなる。
聞き方を間違えたかもしれないとも後悔したけれど、でも、それより――。
――つまり、俺は話す相手に選ばないってことだよな。
そういうことだと思った。成瀬は、相談に慣れていないから下手だと思うけれど、気長に聞いてやってと言ってくれた。でも、実際は、その次元に立つことさえできていなかったのだろう。
自分が相談相手として頼りないことは、よくよくわかっているけれど。
そもそも、自分から気にかけようとすら思いたることすらできていなかったのだ。「選挙に呉宮先輩も出るみたいだけど、大丈夫?」と気を揉んでいたのは四谷で、自分は、さらりと確認しただけで、それ以上は気に留めなかった。今回も、成瀬に言われたから、気にしたというだけだ。
だから、拗ねる資格なんて、ないはずなのに。
勝手だな、と自分に呆れた。自分からはなにも提供していないのに、相手からばかりを求めるのだから。
11
あなたにおすすめの小説
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる