パーフェクトワールド

木原あざみ

文字の大きさ
430 / 484
第三部

パーフェクト・ワールド・ゼロⅤ ③

しおりを挟む
 その自信があったからこそ、自分はすべてをわかっているという顔で与えられた「親切な忠告」には、本当に神経を逆なでられた。
 でも、それも、あともう少しの辛抱だ。そう言い聞かせて、改めてにこりとした笑みを刻む。

「じゃあ、なんでなにも言わないんだろうって不思議だったんだけど――、そっか。そうだよね」

 納得したという顔で頷いて、ここぞと水城は言い募った。育ちの良いいい子のアルファには、信じられないという軽蔑のまなざしを向けられてしまったけれど、他人の痛い部分を突くことが、どうしたって自分は好きだ。やめるつもりはない。

「気にかけてるかわいい後輩じゃないから、どうでもいいのかな」
「……て」
「榛名くんだったから、しっかりと動いてあげただけだったのかな」

 かわいがっている後輩で、アルファにとって有用なオメガだったから。小さな声は聞こえなかったふりで、憐れみを含んだ笑顔をつくる。

「かわいそう。四谷くん」

 アルファに憧れて、そのアルファに選ばれる可能性の高いオメガを羨んで、一番になれない。それなりにはかわいいという自覚があるから、よけいにプライドが痛むというわけだ。
 だから、あのときも、黙って見てたんだよね。それで、誰にも言わなかったんだよね。そう思ったものの、言葉にしなかったことが、最後の情けというやつだ。

 ――あぁ、でも、僕が編入してきて、四谷くんの取り巻きは、だいぶ減っちゃったんだっけ。そう思うと、やっぱり悪いことしちゃったのかなぁ。

 けれど、それも、「オメガのいない世界」だったから生じていた「ちやほや」だったわけで。本物が現れたのだから、まがい物は淘汰されてもしかたがないだろう。やっぱり、僕はなにも悪くない。

「でも、大丈夫。僕は四谷くんの友達だから。なにも言わないよ」

 悔しいのだろうか。それとも、図星が過ぎて恥ずかしいのだろうか。震える指先を握り込んで無言で睨んでくる相手に向かって、優しい声で告げる。

「それに、さっきも言ったけど。僕はね、四谷くんと本当に仲良くしたいと思ってるんだ。だからこうやって喋る機会をつくってるわけだけど、それを脅しだって言われたら、悲しくはなっちゃうなぁ」

 そうしたら、ひとりで抱え込めなくなっちゃうかもしれないな、とひとりごちる調子で呟いてから、水城はくすりとほほえんだ。

「僕は四谷くんみたいに強くないから、誰かに泣きついちゃうかも。ずっと仲良くしてた四谷くんに、最近無視されてるんだけど、僕、なにか悪いことしちゃったのかなぁって」
「……水城が、なにも悪いことしてないって思ってるなら、そうなんじゃない?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

処理中です...