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第三部
パーフェクト・ワールド・エンドⅣ 5 ④
しおりを挟む「……なんか、すごい勉強してるね」
寮の部屋を出たときとまったく同じ姿勢で榛名が黙々と机に向かっていたので、思わず阿るような声を出してしまった。サボっているだとか、怠けているだとか、そんなふうに思ったことはないけれど、どちらかと言わなくとも、いつも嫌々最低限をやっているというふうなのに。今日はなんだか、やたらと張り切っている気がする。
案の定というべきか、いっさい顔を上げないまま、うん、と榛名が応じた。岡には言わなかったものの、やっぱり、この、謎の猪突猛進な感じのほうが、皓太にとっては、正直なところ、四谷とのもめごとよりもはるかに怖い。
――それも良さだって思ってたし、いや、今もべつに思ってないわけじゃないけど、変なとこでまっすぐなんだよなぁ。
それが悪い方向に暴走しがちなところはどうかと思うが。
「自分にできることはしとこうと思って」
「あぁ、……まぁ、して損はないと思うけど」
としか、もはや言える言葉はない。
「そういうところきちんとしておかないと、ひとつ悩んだらぜんぶぐずぐずになりそうだし」
どうした、おまえ、という突っ込みは、直前でどうにか呑み込んだ。馬鹿にしているわけではないが、言っていることが、ちょっとまともすぎないか。まともというか、やたら建設的に前向きというか。
黙り込んだ皓太を気にしたふうでもなく、さらりと榛名が続ける。
「ちゃんとしたいんだよ、いろいろ。いまさらかもしれないけど、成瀬さんたちが卒業する前に」
その言葉に、なんだ、と皓太は得心した。もやりとしたのか、お門違いに苛立ったのか、それとも本当にすとんと腑に落ちたのかは自分でもよくわからない。
けれど、ほんの少し、変に醒めた感覚を覚えたことは事実だった。
卒業する前に気持ちに蹴りをつけたいと、そういうこと。
へえ、と気のない相槌を打って、隣の椅子を引く。パラパラと参考書を捲っていた皓太だったが、なんでもないふうを装ってもうひとつを問いかけた。
「ちゃんとって、四谷のこと? さっき、たまたま廊下で会ったんだけど、岡、心配してたみたいだったよ」
「それもそうなんだけど、もう一個ちゃんとしたいことがあるっていうか……、って、岡? なんて言ってた?」
もう一個、ちゃんとしたいこと。予想を決定づけられた気分で、苦笑を返す。
ようやくはっきりと目が合ったな、とも思いながら。
「榛名は悪くないって言ってたけど。そんなにきつくなんか言われたの?」
「べつに……」
そういうわけじゃないけど、と一変してごもごと呟くので、もうひとつ溜息を呑み込んだ。
自分に非がないというのなら、はっきりと言えばいいと思ったし、非があろうがなかろうが落ち込んだのであれば、そう言えばいいだろうと思っただけだ。
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