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第十二話
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自宅マンションの集合ポストに入っていた封筒を手に取って、あぁ、もうそんな時期になっていたかと思い出した。結婚式の招待状。庄司と栞。結局、大学を卒業する少し前から付き合いだした二人だったが、とうとう結婚を決めたと聞いたのは去年の冬に会った時だった。招待状を送るからよろしくねと言う連絡もそう言えば春先に貰っていた。
「結婚、か」
たぶん、大学時代の男の友人の中では庄司が一番乗りだ。ゼミが同じだった女の子の二次会には就職してすぐに一度行った記憶がある。
働き始めて、二年目。付き合っている彼女がいれば、そうなるのは自然なことなのかもしれない。
――まぁ、今の時代、絶対にしないといけないと言うこともないんだろうけど。
早いうちに返しておかないとな、と出席に丸を付けて、玄関の脇に置く。パソコンから離れたところに置いたのは、半分は無意識だった。
おまえがいくら勝手に望んだところで、折原は結婚なんてしないだろう。そう言ったのは、富原だったし、言われてみればそうだなとは思った。
俺がいたから結婚しないのだろうと考えるのは、さすがにおこがましい。次いで言うなら、それが世間一般で言うところの普通だと押し付ける考えがおかしいのだとも、一応分かっている。
分かっているのに、それが良いと思ってしまうエゴとしか言いようのないそれが、富原の言うところの「子離れできない過保護な母親」の立ち位置なのだろうと言うことも。
――こういった節目にぶつかるたびに、こんなことを考えてたら、どうしようもないな。
それも一応、分かっているつもりだ。変わっていかなければならない。願望と言うよりかは、そうであれ、と呪文のように唱えている。
置きっぱなしになっていた携帯電話が目に付いて、そう言えば確認していなかったなと画面を開く。メッセージが一つ届いていた。差出人の名前に微かに目元が緩む。最近では、懐かしくない名前だ。けれど、いや、だからこそ、なのかもしれないが、どこか面映い。
添付されていたのは、自分は知らない遠い異国の朝焼けの写真だった。折原は昔から、案外とメールは静かだ。必要なことを淡々と書いて送ってくるだけ。
きれいだったから、先輩にも見て欲しくて。今度、一度、遊びに来てくださいね。
その文面をそっと指先でなぞる。きれいなもの。感動したもの。美味しいと思ったもの。そう言ったことを感じた瞬間に、共有したいと思い描いた人が大切な相手なのだと言っていたのは、誰だっただろう。
不意に、遠いところにいると思った。
世界は、機械一つで繋がっている。その気さえあれば、いつだって逢いに行けるし、声も聞ける。顔を見ることもできる。
けれど、こんなにも今、遠い。
逢わないどころか、声も聞かない期間はもっとずっとあった。あの年月の方が、ずっと長かったはずだ。それなのに、今になってこんなことを思う。
これが、寂しいと言う感情なのだろうか。
――贅沢だ、と思った。
一つを手に入れれば、いつかそれを持っていることが当たり前になって、さらに次へと手が伸びる。そうなった場合、最後に行きつくところはどこなのだろうと思うことがある。
結婚ができるわけでもなく、子どもを産めるわけでもない。この先も一緒にいたいと言う、その「先」の終わりはどこにあるのか。明確なゴールがないと言うことは、自由で、そして、恐ろしい。
――ろくなことを考えないな、俺は。
けれど、それも昔からなのかもしれない。昔から、一人で物事を考えて、楽しい方向に転がしたことがない。
そうでなくするために、誰かの手助けが必要だと言うならば。
逢いたい、と思った。
「結婚、か」
たぶん、大学時代の男の友人の中では庄司が一番乗りだ。ゼミが同じだった女の子の二次会には就職してすぐに一度行った記憶がある。
働き始めて、二年目。付き合っている彼女がいれば、そうなるのは自然なことなのかもしれない。
――まぁ、今の時代、絶対にしないといけないと言うこともないんだろうけど。
早いうちに返しておかないとな、と出席に丸を付けて、玄関の脇に置く。パソコンから離れたところに置いたのは、半分は無意識だった。
おまえがいくら勝手に望んだところで、折原は結婚なんてしないだろう。そう言ったのは、富原だったし、言われてみればそうだなとは思った。
俺がいたから結婚しないのだろうと考えるのは、さすがにおこがましい。次いで言うなら、それが世間一般で言うところの普通だと押し付ける考えがおかしいのだとも、一応分かっている。
分かっているのに、それが良いと思ってしまうエゴとしか言いようのないそれが、富原の言うところの「子離れできない過保護な母親」の立ち位置なのだろうと言うことも。
――こういった節目にぶつかるたびに、こんなことを考えてたら、どうしようもないな。
それも一応、分かっているつもりだ。変わっていかなければならない。願望と言うよりかは、そうであれ、と呪文のように唱えている。
置きっぱなしになっていた携帯電話が目に付いて、そう言えば確認していなかったなと画面を開く。メッセージが一つ届いていた。差出人の名前に微かに目元が緩む。最近では、懐かしくない名前だ。けれど、いや、だからこそ、なのかもしれないが、どこか面映い。
添付されていたのは、自分は知らない遠い異国の朝焼けの写真だった。折原は昔から、案外とメールは静かだ。必要なことを淡々と書いて送ってくるだけ。
きれいだったから、先輩にも見て欲しくて。今度、一度、遊びに来てくださいね。
その文面をそっと指先でなぞる。きれいなもの。感動したもの。美味しいと思ったもの。そう言ったことを感じた瞬間に、共有したいと思い描いた人が大切な相手なのだと言っていたのは、誰だっただろう。
不意に、遠いところにいると思った。
世界は、機械一つで繋がっている。その気さえあれば、いつだって逢いに行けるし、声も聞ける。顔を見ることもできる。
けれど、こんなにも今、遠い。
逢わないどころか、声も聞かない期間はもっとずっとあった。あの年月の方が、ずっと長かったはずだ。それなのに、今になってこんなことを思う。
これが、寂しいと言う感情なのだろうか。
――贅沢だ、と思った。
一つを手に入れれば、いつかそれを持っていることが当たり前になって、さらに次へと手が伸びる。そうなった場合、最後に行きつくところはどこなのだろうと思うことがある。
結婚ができるわけでもなく、子どもを産めるわけでもない。この先も一緒にいたいと言う、その「先」の終わりはどこにあるのか。明確なゴールがないと言うことは、自由で、そして、恐ろしい。
――ろくなことを考えないな、俺は。
けれど、それも昔からなのかもしれない。昔から、一人で物事を考えて、楽しい方向に転がしたことがない。
そうでなくするために、誰かの手助けが必要だと言うならば。
逢いたい、と思った。
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