悪役令嬢は我が道を進みます

春野いろ

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お嬢様は暇つぶしを求めます

ストーリー3

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「あぁ暇だわ。暇すぎる。そうだ、ちょっと地の世界へ行って暴れてこようかしら」

 皇族だけが座れる立派な赤い椅子にドカッと座っているチエリー。すらっとした長い脚を組み、手置きに片肘をついて、退屈そうに大きめの独り言を側にいる執事に向けて言っている。

「お嬢様、お暇でしたらこのお見合い写真の山に目を通して下さい」

「嫌よ、興味ないわ。そんな物はさっさと捨てて……いや、良い時間潰しになりそうね」

 何を思いついたのかチエリーはニヤッと笑みを浮かべる。執事は嫌な予感しかしてないが、それを表情に出さずにチエリーの話を聞く。

「何をお考えですか?」

「暇つぶしにお見合いしてもいいわよ。そのかわり……」

「そのかわり?」

「執事、あなたが相手を選びなさい。このわたくしに相応しい人材をね。まさかわたくしに雑魚男とお見合いなんてさせないわよね?」

 チエリーは甲高い声で笑い出す。執事はやれやれと言わんばかりにチエリーに気づかれないほどの小さなため息をついた。令嬢のワガママに付き合わされるのは慣れているようだが、やはり面倒くさそうだ。

「分かりました。私が必ずお嬢様に相応しいお相手を探します」

「ふふ、楽しみにしているわ」

 忠誠心の強い執事は、見合い写真の山を手に持ったままチエリーに頭を下げて部屋を退室した。

数時間後ーー

「お嬢様に相応しいお相手を見つけました」

 そう言って執事は一冊のファイルをチエリーに渡す。

「どんな男を選んだのか楽しみね」

 チエリーは脚を組んだままファイルを開く。開いて真っ先に目に入った写真を見てチエリーの表情が曇り、バンっと勢いよくファイルを閉じたかと思ったら、そのファイルを執事に向かって投げた。

「何これ、地の世界の男じゃない。あんた、わたくしを馬鹿にしてるの?」

 チエリーはかなり不機嫌な様子だ。執事はファイルを拾い、もう一度チエリーに渡す。

「お嬢様、確かに私が選んだのは地の世界の男性です。ですが一度詳細をご覧下さい」

 チエリーはハァと長いため息を吐きながらしぶしぶファイルを開く。写真の隣に記された男性の詳細を見て、チエリーの表情が一転変わる。

「この男……」

 それではファイルの中を除いてみよう。まず写真をみると、お見合い写真というよりは隠し撮りしたような写真だ。写っているのは金髪で爽やかな笑顔の男性で優男をイメージさせる。

 次にその男性の詳細を見ると、地の国でトップを争う権力を持つ国王の御子息と記されている。

「へぇ、国王の御子息って事は王子様……なるほど、この男と結婚すればわたくしに更なる地位と権力が手に入るというわけね。良いじゃない。ただの暇つぶしと思ってだけど、本気でお見合いして必ずこの男をGETするわ」

 チエリーの機嫌は戻り、強気な声で笑い始めた。
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