明日は明日の恋をする

春野いろ

文字の大きさ
20 / 85
私の過去

ストーリー20

しおりを挟む
 一ヶ月が経ち、気がつくと暑い日が続く夏の季節になっていた。私もだいぶ仕事に慣れ、生活のリズムも出来てきた。

 しばらくは高瀬さんとも会う事もなく、進藤さんがお酒を飲んで帰ってきても私に何かする訳でもない平凡な日々を過ごしている。

「今日は進藤さん、帰りが遅くなるって言ってたな」

 夜は簡単にご飯を済ませて、部屋でのんびりと過ごす。そして日付が変わった頃、玄関のドアが開く音がした。

「お帰りなさい」

 私はリビングへ行き、コップに水を入れ恐らく酔って帰ってきた進藤さんに渡す。

「いや、今日はもう少し飲むから付き合ってくれないか?」

 進藤さんはソファーに座り、ネクタイを緩める。私はビールと簡単なツマミを用意して進藤さんの前に置いた。

「明日もお仕事なのに大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。怠い時は社長室で寝る」

 そう言ってビールをグィッと飲む。私は笑いながらビールを一口飲んだ。

「そういや、あの元彼とはどうなった?」

「元彼? 義雄の事ですか? あれから一切連絡してませんけど」

 進藤さんが珍しく積極的に話しかけてくる。結構酔ってるみたいだ。

「前にうやむやになった不感症の話……続きが気になるな」

「ふ、不感症って違いますから」

 前に車の中で義雄にやらせなかったって話をした気がするけど覚えてたのか。進藤さんは笑みを浮かべてじぃっと私を見てくる。

「聞いても……つまんない話ですよ?」

 話したくないと言えば、きっと進藤さんはそれ以上追求はしないだろう。けど昔話を交えつつ、私は自分の事を話してみる事にした。

 さて、何から話をしようか。私はビールをグィッと飲み、勢いをつけて話を始める。

「少し昔話をしていいですか?……私、高校を卒業してすぐに家を出たんです」

「へぇ」

「勉強しろ、友達は選べ、彼氏を作るなんて言語道断だ……事あるごとに父に言われてました。おまけに門限もあってなかなか友達とも遊べなかった」

 話しながら昔を思い出し、私は神妙な顔つきになる。

「なるほど。厳格な父というわけか」

「えぇ。最初は父の言いつけをきちんと守って良い子にしてたんですけど、高校に入ったくらいから何か可笑しいと思い始めてしまって」

 私はグラスにビールを注ぎ、更にグィッと飲んで勢いをつけた。

「それでも我慢してた。でも、高三の時に初めて彼氏が出来たんです。私すっごく舞い上がって毎日が楽しくて」

 進藤さんは私の長話に耳を傾けながら無言でビールを口にする。

「彼氏とは高校は別だったので会う時間が限られてました。門限さえなければ……そう思って父に門限を無くして欲しいとお願いしたんですけど、結果大ゲンカに発展しちゃって。私は泣きながら家を飛び出しました」

「門限はきついがお前の事が心配だったんじゃないか?」

「そうかもしれませんけど、高校生の私には理解できませんでした。家を飛び出した後、凄く彼氏に会いたくなって彼氏が行ってた塾の近くで待ち伏せしたんです。でも塾から出てきた彼氏の横には他の女性がいて、二人は手を繋いで歩き始めました。どう見てもカレカノって感じにしか見えなくて、私は彼氏の前に立ちどういう事か問いつめました」

 昔を思い出してしまい、俯き気味に話す。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...