明日は明日の恋をする

春野いろ

文字の大きさ
22 / 85
私の過去

ストーリー22

しおりを挟む
「引き返すなら今だぞ。これから先は止まらないからな」

 そう言って私を見つめる。その真っ直ぐな視線から私は目が離せず、瞬きも忘れジッと進藤さんを見ていた。

 怖い……不安と緊張が再び私の元へ戻ってくる。でもその感情とは別に、このまま進藤さんに任せたらどうなるのか……私の中に好奇心のようなものも現れた。

 十秒くらい経つと時間切れと言わんばかりに口を塞がれた。最初は優しく、次第に深く長いキスへと変わる。

 口から唇が離れたかと思ったらそのまま耳元へ……そこから首筋に沿って唇が移動する。私の胸の鼓動は早くなり身体の火照りが激しくなる。

「やっぱりダメっ」

 自分が自分で無くなるような感覚が怖くて思わず進藤さんを跳ね除けてしまった。

「俺が怖いか?……明日香」

 進藤さんは私の頭をポンっとして稀に見ぬ優しい表情で私を見る。その表情に私の不安や緊張は小さくなり、私は思った。

「……その表情で突然の名前呼びなんてズルい」

 私の心の声が聞こえたかのように、進藤さんはニィッと意地悪な顔をして私に言う。

「俺は彼氏じゃないし、遠慮なく不安や不満は声に出していいぞ。それよりどうする? この先は止めとくか?」

「……ズルい」

 そう呟いて私は進藤さんの胸にポンっと顔を埋めた。気がつけば不安や緊張より好奇心の方が勝っていた。

「ねぇ、じゃあ電気消して?」

「却下」

 お願いしたら意地悪な顔をしてまた口を塞がれた。私のポーッとした顔を見て進藤さんは笑みを浮かべる。

 しばらくすると何だか身体中が熱くなる。それに気づいた進藤さんはわざとらしく耳元で囁いてきた。

「どうした?」

「な、何でも……ない」

 強がってみせたが、全てお見通しのようだ。進藤さんは笑みを浮かべながら続きをする。

 私は我慢できずに目をウルウルさせながら進藤さんにギュッとしがみつく。

 もう身体中の火照りが凄い。私の身体、どうしちゃったの?でも力を入れて何とか我慢する。

「力を抜いて明日香」

 力を入れて我慢する私の姿に進藤さんはまた優しい表情を見せる。

 今、その表情は反則だ。

 そして、私は爆睡してしまったみたいでその後の記憶はなかった。

「……ん……朝?」

 カーテン越しでも外が明るくなっているのが分かった。私は起き上がり手を上に上げ伸び~っとする。

「あれ!? 上服……着てない」

 寝ぼけていた頭の中が目を覚ます。

 そうか、昨日の夜は進藤さんに……

「朝から良い眺めだな」

 ふと隣を見ると進藤さんが居た。進藤さんを見ると、昨日の記憶が次々と蘇ってくる。思わず私は赤面し、視線を逸らす。そして布団で身体を隠した。

「あ、あの……私、昨日は……」

「満足したのかすぐに爆睡してたな」

「す、すみません」

 何たる失態。

 自分だけ満足して寝てしまうなんて……。

「それで?昨日は余計な事を考える余裕はあったか?」

「……途中から何も考えられなくなってました」

「まぁそんなもんだろう。あと一歩で未知の世界に踏み込めそうだな」

「うーん、どうでしょう。まだ判断出来ないですね」

 あれ? 言った後に気づいたけど、私今とんでもない発言したような……そうっと進藤さんの方を見てみる。

「一回じゃ分からないか。じゃあ完全に踏み込めるまで面倒見てやるよ」

 進藤さんはベッドから降り、私の方を見て笑みを浮かべる。

「あ、いえ……そんな……」

「安心しろ、最後まではしない。『処女ハジメテ』は好きな奴に取っておけ」

 そう言って進藤さんは部屋を出て行った。

 処女ハジメテは好きな人と……そんな日が来るのだろうか。

 取り敢えず服を着て、私も部屋から出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...