明日は明日の恋をする

春野いろ

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貴方の幸せを願うから

ストーリー58

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社長室(鈴里side)ーー

「失礼します」

 明日香から頼まれて社長秘書を引き受けたものの、本当に良かったのだろうか。社長にも事情を話さず社長室ここに来たけど、絶対変に思われているはず。

 でも明日香にも何か事情があるみたいだし、上手く乗り切らないといけない。

 私は有栖川財閥のお嬢様が好きだという高級な紅茶を準備して社長室へ入った。

「紅茶をお持ちしました」

 私はお嬢様と社長の前に紅茶を置く。その際チラッと社長の顔を確認したけど、やっぱり何で明日香じゃなくて私が来たのか……と少し驚いてる表情をしてるような気がした。

「まぁお気遣いありがとうございます。今日は高瀬さんではないのですね?」

「高瀬は今出張中なんですよ」

「そうでしたの。高瀬さんにもお会いしたかったのに残念ですわ。それに明日香さんのお話も聞こうと思ってましたのに」

 明日香?

 お嬢様と明日香って知り合いだったんだ。ならどうして明日香はお嬢様を避けるのだろう。

 そういえば美術館で明日香と高瀬課長を見かけた時、社長やお嬢様と話してたし、明日香達は恋人のふりをしてたって言ってたけど……何で?

 考えれば考えるほど訳わからない。もう一度社長の方を見てみると、私の視線に気づいた社長は私を見てニッコリとした。深く詮索するなって事かしら。

「次の予定の前にまた伺います。それでは失礼します」

 私は一礼して社長室を出た。

 明日香と高瀬課長、そして社長……一体どんな事情があるのだろう。

 気にはなるけど、私が不倫している事を言えないように、明日香にも言いたくない事はあるだろうから、私から明日香に今回の事情を深く追求する事はしなかった。



******



「あの、マイさん……ありがとうございました」

 社長室から真彩さんが戻り私の隣に座る。さて真彩さんに何て説明しよう。嘘はつきたくない。でも本当の事も言えない。

「どんな事情かは分からないけど、言いたくない事は無理して言わなくていいよ。また困った事があったら言ってね」

 私が何て言っていいのか分からず百面相をしていると、真彩さんが笑いながら私に声をかけてくれた。

「マイさん」

 真彩さんの優しさが嬉しくて、私は少し泣きそうになる。

 それからしばらくして、社長室から呼び出しの連絡がきた。美玲さんは帰ったらしい。私は社長室にいる進藤さんの元へ行く。

「失礼します」

 社長室の中に入ると、進藤さんが来客用のソファーに座っている。私に気づいた進藤さんは自分の向かいに座るよう促した。今は仕事モードではないようだ。

「さっきは仕事放棄してすみません」

「いや、俺の方こそ秘書課に連絡せず悪かった。鈴里さんに頼んだのか?」

「はい。理由も聞かず代わりを引き受けてくれました。言いたくない事は言わなくでもいいって」

「出来た人だな、鈴里さんは。さっき、話の流れでお嬢様が明日香の名前を口にしたんだ。彼女も不思議そうな顔しながら俺の方を見てきた」

「本当は気になるのに聞かないでくれたのか、マイさん」

「今日は久しぶりに明日香の作ったご飯が食べたい。夜、ナオトのマンションまで車で迎えに行ってもいいか?」

「うん。じゃあ買い物済ませて待ってるね」

 今日の夜は進藤さんと会えるんだ。私は仕事中なのを忘れて顔に笑みが溢れる。

「では早く帰れるように仕事を頑張りますか……水沢さん」

「はい、社長」

 お互い仕事のスイッチを入れ、仕事を再開した。
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