明日は明日の恋をする

春野いろ

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高瀬さんの葛藤ー高瀬sideー

ストーリー71

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「す、すみません」

 笑って誤魔化す俺の横で、鈴里さんは珍しく動揺しながら謝った。

「仲が良くて羨ましいな。さて、ここからは社長として話をさせてもらう。騒ぎを起こした三人にはペナルティを受けてもらうわけだが…」

 ケイスケはそう言いながらまずは俺の方を見る。

「まず高瀬は社長おれの秘書を外れてもらう。もっと言えば、秘書課課長の役職から降りてもらい別の部署に異動だ。いいな?」

 取り敢えず会社をクビにはならずに済んだけど、騒ぎを起こした二人が同じ部署にいる訳にはいけないからなぁ。

 そう思っていると、隣にいる鈴里さんが立ち上がりケイスケに頭を下げる。

「いえ社長、私が秘書課を……会社を辞めますので高瀬課長のペナルティはなしにして下さい。お願いします」

「愛されてるなぁ俺。でもマイは秘書課に必要な人だから残るべきだよ。だろ? ケイスケ」

 完全に仕事モードをオフにして、ケイスケと鈴里さんと話す。

「社長として話するって言ったのに、お前は完全プライベートモードか。まぁいい。確かに鈴里さんは秘書課に必要な人材だ。高瀬……ナオトも秘書課に必要かもしれないが、もっとお前の能力を必要とする部署がある」

「へぇ、ペナルティ異動じゃないんだ。その俺の能力が必要な異動先はどこ?」

 ケイスケはニィッとして俺を見る。

「営業一課だ」

「……営業一課?」

 俺と鈴里さんは顔を見合わせる。営業一課は俺の元いた部署でもあり、沢田課長がいる部署だ。何でわざわざ俺を営業に戻すのか?

「俺と沢田課長のバトルを見たいのか? 悪趣味だな」

「沢田課長は……会社を去ることになった。本人の意思だ」

「えっ?」

 鈴里さんの表情が固まる。

「責任を感じて退職を申し出たようだが、沢田課長は優秀な人材だ。俺の知り合いの会社に出向してもらうことにした」

「そうですか。あの、私の処分は?」

「鈴里さんはそのまま秘書課に残ってもらう。ただ、今後は社長専属秘書をお願いしたい」

「私が社長専属秘書……でもそれってペナルティじゃなくて、むしろステップアップなのでは?」

「あぁ、言ってなかった。二人のペナルティは本日自宅謹慎、以上」

「随分甘いペナルティだな。そんなんでいいのか?」

 俺が言うと、ケイスケは何かを決意したような力強い目をして笑みを浮かべた。

「近々、計画を実行する。頼むな、ナオト」

「計画?」

 事情を飲み込めない鈴里さんはキョトンとした表情をする。俺はケイスケの考えている計画を鈴里さんにも話した。

「……そうですか。そういうことなら微力ながら協力致します。全て良い方向に向かうといいですね」

 ケイスケの意思が固まり、俺たちは笑みを浮かべる。

「取り敢えず、自宅謹慎の俺たちは大人しく帰りますか」

「はい」

 俺と鈴里さんはソファーから立ち上がった。

「ちゃんと反省しろよ」

 ケイスケの言葉にはいはいっと返事を流し、二人で社長室を出た。

 会社を出て二人で外を歩く。

「騒ぎに巻き込んじゃってごめん」

「いえ、元は私のせいですし……こちらこそごめんなさい」

 俺はもう少し話をする為に近くの公園に誘い、二人でベンチに座った。

「頬……大丈夫?」

「はい」

「良かった」

 そう言って空を見上げ、少し流れる雲を眺めた。

「なぁマイ、一度抱いたくらいで彼氏ヅラはしないけど……二度目からは彼氏ヅラしてもいい?」

 隣に座る鈴里さんの顔を覗き込むように見て俺は微笑んだ。

「……考えとく」

 呆気にとられた表情をしつつ、鈴里さんも微笑み返す。

 そしてこの日は、大人しく自宅謹慎をした。
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