明日は明日の恋をする

春野いろ

文字の大きさ
73 / 85
再会

ストーリー73

しおりを挟む
「こちらへどうぞ」

 応接室へと入り、静かな空間に緊張しながらソファーへ座る。進藤さんと同じ会社に今居るんだ。そう思うと私は密かにソワソワしてしていた。

 そして高瀬さんと貴島さんは資料を見ながら話を進め、意気投合したのか時折談笑しながら話をしている。

「……ということでよろしくお願いします」

 高瀬さんは資料を閉じ笑顔で話す。私と貴島さんはソファーから立ち上がり、高瀬さんに一礼して応接室から出た。

 会社の外に出ると、私は一旦足を止めてふとビルを見上げた。

「どうかした?」

 貴島さんの一言に『何でもないです』とまた歩き出す。ダメだな、まだ進藤さんの事を考えてしまう。ちゃんと前を向かなきゃ。


 それから一ヶ月が過ぎた頃、私はある人と偶然再会した。

 この日は仕事の用事で外出していて、ちょうど進藤コーポレーションの近くを歩いていた。

 何気に真彩さんに『今、進藤コーポレーションの近くにいるよ』とメールしたら、休憩中だったらしく折り返し電話があり、会話を楽しみながら自分の会社に戻っていた。

「よう久しぶり」

 聞き覚えのある声に話しかけられ、真彩さんとの会話を一旦やめ、私はその人の顔を見る。

「久しぶりね……義雄」

 声をかけてきたのは元彼の義雄だった。正直もう会うこともないと思ってたし、偶然の再会に私は少し睨むように義雄を見た。

「へぇ、少し見ない間に雰囲気変わったな」

 義雄はニヤニヤしながら私を見る。

「……私、仕事中だからもう行くわ。じゃあね」

 あまり関わりたくなかった私はさっさとその場を離れようとした。

 ところが義雄はそうはさせてくれない。

「ちょっと待てよ」

「離して」

 この場を離れようとする私の腕をしっかり掴んできた。

「せっかく会ったんだ。少し話をしようぜ」

 そう言うと、私の腕を引っ張りながら強引に歩き始めた。

「嫌、離してよ。話すことなんか何もないから」

「前はあんなに仲良くしたじゃないか 。何ならよりを戻してもいいんだぜ?」

「冗談言わないで。誰がアンタなんかと」

 相変わらず自己中心的な奴。前の私は何でこんな奴を好きになったんだろう。

「二度と明日香の前に現れるなと忠告したはずだが?」

えっ……この声は……

「し、進藤さん!?」

 まさかと思って振り向くと、そこには進藤さんがいた。

 何で進藤さんがここに?

 進藤さんは私の腕から義雄の手を引き離し、自分の方へ引き寄せる。そして凄い形相で義雄を睨んでいる。

「て、てめぇはあの時の!?」

 義雄も進藤さんの事を思い出したのかジリジリと後ずさる。

「さて、俺に殴られるかさっさとこの場から立ち去るか、どっちを選ぶ?」

 進藤さんは殴る準備をしながら義雄に近づく。どうしよう、止めた方がいいのかな。

「……チッ」

 義雄は舌打ちしながらそそくさと立ち去った。

「大丈夫か?」

「う、うん。でも何で進藤さんがここに?」

 私が尋ねると、進藤さんはゆっくり私の前に来て私の手を取る。そして手に持っている私のスマートフォンを取った。

「明日香は無事回収したから大丈夫だ。それと……」

 そうか。私、真彩さんとの電話を切らずにずっと通話中のままだったんだ。異変を感じた真彩さんが進藤さんに言ったのかな。

 進藤さんは真彩さんと電話で何かを話し、それが終わると私にスマートフォンを返してきた。

「ちょっと付き合え」

 進藤さんは私の返事を聞かずに歩き始める。仕事中なんだけどなぁと思いながらも私は進藤さんの後に続いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。 和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。 政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

処理中です...