ファントムガール ~白銀の守護女神~

草宗

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「第九話 夕子抹殺 ~復讐の機龍~ 」

18章

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 満月の青い光が、建設途中の未来都市を浮かび上がらせている。
 無人の埋立地にてファントムガール・アリスの処刑ショーが繰り広げられてから数時間が経っていた。オレンジ色の世界はすっかり闇に包まれ、天空高く昇った月が静まり返った地上を照らし出している。鋼鉄の兵士も銀毛の女豹も、巨大な戦闘者の姿は幻のように掻き消え、ただ鎧の女神が流した鮮血のあとが、「希望の島」のところどころに黒い影となって残っている。月光に浮かぶ幾多の建造物たちは、昼とは違う幻想的ですらある顔を覗かせていた。
 巨大な死闘が行われた廃工場の一角。
 鉄板やらネジやらボルトやら・・・そこは作業中にでた鉄屑などを集めるゴミの収集場であるらしかった。うずたかく積まれた廃棄物の山が山脈のごとく重なっている。今では稼働をやめてしまった数台のクレーン車。規則正しく並んだ、赤錆に覆われた鉄骨。かつてこの場で行われていた廃棄の作業が思い浮かぶ。
 鉄屑の山に囲まれた中央には、広さ10m四方ほどの平地があった。いわばゴミ山の盆地。
 その盆地の真ん中に、クレーン車から鎖で宙吊りにされた物体が浮いている。

 "・・・・・・ぅ・・・・・・ぁぁ・・・・・"

 人間の形をしたその物体は、薄いピンクの半袖ブラウスと膝までの白いパンツに身を包んでいた。シンプルにして清潔感ある衣装は、トラックにでも轢かれたようにボロボロに破れ、擦り切れた白い肌からは赤い血が滲み出している。死んだように数時間ほども動かないでいたそれは、意識の覚醒とともにピクリピクリと反応をし始めている。

 "・・・ぅあア・・・・・・あつ・・・い・・・・・・カラダ・・・ううぅ・・・"

 だらりと垂れ下がった赤髪のツインテールに隠れた目蓋が、小刻みに震え始める。紅の唇からは呻きにも似た吐息がかすかにこぼれてくる。両手首を鎖で巻かれてクレーンから吊り下げられている少女。鎖で横に引っ張られている両足は、はしたなく大開脚している。闇の奥から蘇ってくる意識が、己の置かれた状況を浸み込むように理解していく。

 "身体中・・・・・・槍で・・・掻き回されてるよう・・・な・・・・・・私・・・・・・生きて・・・・・・"

 「ようやくお目覚めか~~い♪ 死にかけのポンコツちゃ~~ん!」

 鼻にかかった悪魔の声が耳元で響くと同時に、鷲掴まれたツインテールが首ごと抜き取る勢いでグイと引かれる。重く閉ざされていた目蓋が、ショックで強引に開かれる。
 
 「くあッ・・・・・・アア・・・くふ・・・うぅぅッ・・・」

 「あははははは! 地獄から帰ってきた気分はど~う? でも、戻ってきても地獄だけどね~」

 ファントムガール・アリスこと霧澤夕子は、惨敗した肉体を捕らえられ、新たな被虐の餌として人の字型に吊り下げられていた。

 闘い方を熟知した機械兵士と張り巡らされた処刑の罠の前に、聡明にして勝気な少女もまるで歯が立たないまま膝を屈していた。全ての攻撃は無効化され、逆に敵の攻撃には大ダメージを受ける始末。挙句巨大ローラーで潰されるという、あまりに酷く惨めな処刑に赤髪の守護天使は科せられた。絶叫を搾り取られ、内臓破裂寸前まで追い込まれた肉体。敗北の瞬間、確かに夕子は無惨な死を覚悟したのに、それがいまもこうして生きているのは・・・。

 豹柄のTシャツを着た女が、目の前で醜く破顔している。憎悪よりも愉悦。完全なる勝者の立場に立ったことを、魔豹は自ら理解していた。金のルージュを舌なめずりし、破れた衣服の間から純白の下着を曝け出した無様な宿敵を舐め取るように見回す。夕子も、そして「闇豹」神崎ちゆりもわかっていた。もはや正義の少女に闘う力などないことを。手首と両足首を縛った鎖などなくても満足に身動きできないことを。瀕死となって囚われた夕子と、勝利の余韻に浸るちゆり。埋めようのない差がふたりの間にはできている。

 「・・・ち・・・・・・ゆり・・・・・・」

 「フ~ン、まだまだそういう目ができるんだぁ~。死なないようにわざわざローラーを調節した甲斐があったわぁ~♪」

 憔悴しきり焦点はぼやけてしまっているのに・・・それでも垂れがちな瞳は鋭い光で魔豹を射抜く。内心燃え盛る憤怒の炎を抑えるように、ツインテールを掴んだ悪女の手はグラグラと頭を揺らしながら弄ぶ。ヤクザですら頭をさげる自分に、あくまで歯向かう憎憎しい小娘・・・この勝気なサイボーグ女だけは跪かせねば気が晴れない。

 「ローラーで潰されるのは苦しかったでしょォ~? 変身解けてもグチャグチャじゃな~い! 今度はこの姿のままぁ~、あの巨大ローラーで潰しちゃおうかぁ~?」

 「あの・・・程度で・・・私は・・・・・・死なない・・・あんたなんかに・・・殺られは・・・しない・・・・・・」

 握り固めた拳で、ゴールドをちりばめて装飾したコギャルが、夕子の白い頬を思い切り殴りつける。二度。三度。ガツ、ガツ、と鈍い音が響き、透明な肌が赤く腫れあがっていく。ボディに切り換わった打撃が、左右の拳を計5発腹筋にめりこませたところで、ついに赤い唇からゴボリと血塊が吐き出される。

 「ゴフッ・・・! ウウぅッ・・・」

 「あはははははは! 強がってもダメダメェェ~~。この程度でもう参ってるじゃな~い」

 「・・・こ、こんなの・・・全く効かないわ・・・所詮他人か道具に頼らなきゃ・・・あんたに私は殺せない・・・」

 「挑発的ね~。でもォ、ちりを怒らせて殺させようってんなら、甘いわよォ~」

 ニヤリとルージュを歪ませる「闇豹」。狂人のくせに、この毒々しい格好を好む悪女は、時に鋭い頭の冴えを見せる。濃いマスカラの下に浮かぶ確信的な眼光に、思わず夕子はグッと奥歯を噛み締めた。

 「そう簡単にくたばらせないよォ~・・・ちりに跪くまでェ、苦しめて苦しめてメチャクチャにしてやらあッ! あーっはっはっはっはっ!」

 「殺されても・・・あんたに跪きなど・・・しない・・・!」

 「あははははははは♪ バカな女ぁ~! そんなこと言えるのは今のうちィ~♪」

 「死の・・・苦しみを知る・・・私が・・・・・・拷問などに・・・・・・」

 「桐生~! ホントのKILL夕子を見せてやってェ~!」

 それまで冷たい視線で遠巻きに眺めていた白衣の男が、ガラガラと台車のついた、人の背ほどもあるモノを運んでくる。
 宙吊りの夕子の目前に運ばれたそれは、観音開きであけるタイプの三面鏡であった。鏡を閉じている今は、一見木目調の家具でしかない。開けたとき、三方の鏡全てが囚われの天才少女の全身像を映すよう、機械人間桐生が無言のまま位置を合わせていく。

 「ほらぁ~、醜いてめえの姿を~・・・よく目に焼き付けやがれェェ!」

 鏡の両側に立った豹柄のコギャルと白衣の機械人間が、一斉に3つの反射鏡を宙吊りの夕子に向ける。

 「ううッッ!!! こッ・・・これはッッ・・・!!!」

 サイボーグ少女の身体のあちこちから、赤や黒のコードが無数に出入りしている。
 背中の皮膚を破られ、埋め込まれた生体機械のカバーが開けられている。多くのコードはその内部に伸びて、夕子の身体の半分を司る機械部分に接続されていた。巨大ローラーによる圧搾のダメージで擦り切れた、あらゆる皮膚の破れ目から接続電線が夕子の内部に差し込まれている。こめかみや頭部、脇腹や太腿など、ビッシリと貼り付けられた電極。丸く張った形のよいバストには10個近い電極がつけられ、頂点のピンク色の突起には尖った針が埋め込まれている。

 大きく広げられた股間のクレヴァスにも同様に無数の電極が貼られており、上方に位置するわずかな萌芽にもコードから伸びた針が突き刺さっている。裂けんばかりに広げられた聖少女の股間から何本もの黒いコードが垂れ落ちている姿は、磔の堕天使が持つに相応しい淫靡さで溢れていた。

 生体実験の被験者であろうとも、開発中のスーパーコンピューターであろうとも、これほどの電線が繋がれていることはなかろう。黒と赤の蜘蛛の巣に捕らえられた少女戦士。ひとつのパソコンに繋がる無数のコードが、敗北のサイボーグ少女に接続されている。
 三つの鏡面に映るわが身をひとめ見て、夕子は己が置かれた現況を理解した。
 そう、私は今・・・悪魔の手によって、肉体を支配されようとしているのだ。

 「醜い人造女は悲惨よねェ~~。ちょこっとコンピューターで侵入したら、機械のカラダを奪われちゃうんだもん~~」

 痩身の眼鏡男がケーブルの束と繋がったデスクトップの前に移動する。青白く光るスクリーンに浮かぶのは、英文字と数字の羅列。ちゆりには適当にしか思えぬ不可解な字列も、産業スパイであり機械工学の科学者としての一面も持つ桐生には、サイボーグ少女の全てを凝縮したデジタルデータとして読み解けている。それはつまり、夕子の機械で造られた身体を支配されるのと同意。いや、生体部分が機械部分と密接にリンクしている真のサイボーグ・霧澤夕子にとっては、身体全体を乗っ取られるようなものと言ってもいい。

 「このあったまのい~い桐生ちゃんにかかればぁ~、機械女の身体は自由自在ってわけ♪ てめえはもう、クズ鉄製のオモチャってことよォ~」

 「バ・・・バカな・・・」

 「身体で思い知るのが一番ねェ~~・・・」

 無言のまま白衣の男が、キーボードを操ってなんらかのワードをコンピューターに入力する。
 Enterキーを押した瞬間、かつて経験したことのない超高圧の電流が、細胞組織が弾け飛んでしまいそうな電磁の嵐が、夕子の全身に一斉に襲いかかった。

 「うぎゃあああああああああアアアああッッッ――――ッッッ!!!!」

 「あーっはっはっはっ! たっのしいィィ~~!! 脳に直接叩き込まれる"苦痛"はたまんないでしょォ~~~ッ!」

 人型に宙吊りに浮いた少女戦士が、疲弊した肉体を狂ったように踊らせながら悶絶する。ピンクのブラウスに染み込んでいく汗。小さな口の端から流れ落ちる涎。ピクピクと震えていた美形が、グルリと白目を剥くと同時にガクンと垂れる。
 失神したサイボーグ少女に、いつまでも安穏の時間は与えられなかった。すかさず別のワードが入力され、異なる種類の苦痛が囚われの聖少女に刷り込まれる。

 「あぐううウウッッ?!! ぐひゅあああああべやああああッッッ―――ッッッ!!!! ウギギイイイィィィッッッ~~~ッッッ!!!!」

 慟哭している、あの夕子が。不遇の運命と向き合い、冷徹と蔑まれようとも不屈の精神で生き抜いてきたサイボーグ少女が。
 今度の激痛は肉を破壊される苦しみであった。ひとつひとつの筋肉を、内臓を、巨大な悪魔の指でプチプチと潰されていくような激痛。卒倒しそうな壮絶な痛みを、つま先から頭頂まであらゆる箇所で受け入れる煉獄に、天才と呼ばれる少女も我を忘れて絶叫する。

 「痛いでしょォ~、苦しいでしょォ~・・・剥き出しの神経を捻られてるみたいでしょォ~」

 「感覚トハ、ツマリ電気信号。痛ミノ電気信号ヲ直接脳ニ入力サレルノハ、マサシク地獄ノ苦シミデアロウ。機械ノ身体ヲ持ッタノガ、貴様ノ哀レナ運命ダ」

 桐生の指がEnterキーを押すごとに、廃工場を揺るがす悶絶の絶叫が、夕子の柔らかな唇を割って迸る。
 実際に夕子の肉体が破壊されているわけではない。ただ苦痛の信号が機械部分を通じて全身に送られるのだ。本来ならばとっくに肉体が消滅していてもおかしくない破壊の極痛を浴びながら、なお夕子の肉体は存在し続けている・・・それはあまりに凄惨で壮絶な拷問。死ぬことすら許されない夕子は、神様が受けなくても済むように設定した極限レベルの痛苦を、幾度も幾度も直接脳で味わい続けねばならないのだ。

 "苦しッ・・・死ッ・・・・・・もう・・・壊れッ・・・・・・ダメ・・・私ッ・・・スクラップ・・・・・・"

 「ひゃふうッ!・・・ふばあッッ!・・・ひぐうッ・・・ぐぶうゥッッ・・・!」

 夕子の甘ったるく響く愛らしい声が、獣のごとき吐息を喘ぎ出し続ける。意地とか負けん気とか、正義の心・・・そんなものではどうしようもないレベルの壮烈な苦悶。KILL夕子の究極形とも言える拷問地獄、機械部分の支配の前に、闘い敗れて瀕死に陥った少女戦士になにができようというのか。
 身体はそれ以上傷つけられないまま、死ぬことすら許されない激痛を何度も何度も叩き込まれて、天才少女の勝気な精神の鎧はボロボロと瓦解していった。

 "カラ・・・ダ・・・バラ・・・バラ・・・・・・私・・・メチャクチャに・・・破壊・・・オモチャ・・・・・・惨めな・・・鉄人形・・・・・・"

 「ほら、どうしたぁ~? いつもみたいにィ~、ちりにムカつくこと言ってみろよォ~」

 束ねた赤髪を鷲掴み、悶絶の吐息を喚き続ける夕子の顔を「闇豹」はグイと引き起こす。
 反動で口から溢れる鮮血まじりの涎。灰色の視線を虚空に漂わせるサイボーグ少女の表情からは、強い信念も反発心もなく、ただ苦痛に彩られた悲哀が覗くのみ。普段はきつくさえ映る垂れがちな瞳は、泣き出しそうに歪んで見える。

 「ちりに歯向かうとどうなるか、わかったぁ~? 気持ち悪い人造女がぁ~・・・おら、泣けよォ~。泣いて謝るんだよォ~!」

 「ひぐううッッ!!・・・はひゃああッッ・・・ふぇあアアッッ!!・・・」

 「もう死にてえだろォッ~? 死んで楽になりてえだろォがァッ! ちりに泣いて謝ればァ、すぐに殺してやってもいいんだぜェェ~~ッッ!」

 3つの指輪をつけた右手が、囚われの天使の右胸を形が崩れるまで強く握り潰す。マシュマロの柔らかさを誇る柔肉を弄びながら、千切れんばかりの勢いでグリグリと捻り回す。苦痛ではあるが、先ほどまでの煉獄に比べれば耐え切れ得る痛み。それでも宿敵に女性のシンボルたる胸をいいように嬲られる性的苦痛は、衰弱し切った夕子を瀬戸際に追い詰めていく。

 "・・・も・・・う・・・私・・・・・・もう・・・・・・死に・・・・・・"

 神崎ちゆりが己を殺さなかった理由はよくわかっている。その望みが夕子の屈服にあることを。いたぶり続け、嬲り続け、闇世界の王たる自分を跪かせた少女に絶望と屈辱を与えて懺悔させたいことを。
 泣けば・・・謝れば・・・全ては悦虐を貪る悪鬼の思うがまま。たとえ死してもそれだけは許してはならない、そう心はわかっているはずなのに・・・。完膚なきまでの敗北と壮絶にすぎる拷問とが、強き少女戦士の心のなにかを折ろうとしている。

 「どうだァッ?! クズ鉄女ァッ~~、てめえはもう終わってんだよォッ! とっとと泣き喚いて許しを請えよオオオッッ!! このポンコツがああッッ!!」

 「ひゃあうッッ!! ふべああッッ!! うああああッッ――ッッッ!!」

 再開される脳へのダイレクト苦痛。真正面から受け止めねばならぬ破壊の激痛。弄ばれる機械の身体。
 おおよその人間が耐え切れるわけのない苦痛の渦に飲み込まれ、悪女に跪こうとする少女戦士を誰が責められようか。もはや、これまで――。壊れていく精神のなかで、全てを受け入れ従属の台詞を赤い唇が吐こうとする刹那、ピピピピという甲高いアラームと淡々と夕子処刑のプログラムを進める機械人間の呟きが、白く意識を飲まれつつある赤髪の少女の耳朶を打った。

 「ヤハリ来タカ、有栖川邦彦メ」

 膝を屈しようとしていたサイボーグ少女の心に衝撃が走る。

 「首輪カラノ信号デ、娘ガ窮地ニ陥ッタコトハワカッテイルハズダ。モットモ首輪ハ私ノ電撃ニヨッテ破壊サレタノデ、コノ島ノドコニ娘ガイルカハ把握シテイマイガ」

 「あはははははは♪ よかったじゃな~い、パパが迎えに来たってェェ~! もっともォ、ちりたちにしたら望み通りなんだけどォ~」

 コードを伝わって送られてくる苦痛の電気信号が途絶える。ガクリと脱力した小柄な少女の肢体は、鎖を鳴らして宙空に垂れ下がった。ツインテールに隠れた奥で、瞳から流れ出た雫が頬を伝って、ボトボトと冷たいコンクリートに落ちていく。地に描かれる雫の結晶を、ゾッとするような笑みを浮かべて豹柄の悪女が眺める。

 「・・・ついに泣いちゃったかァ~・・・人造女の泣き顔はァ~、どんなんかなあ~♪」

 再びツインテールを鷲掴んだ「闇豹」は、垂れ下がった夕子の顔を月光のもとに上向かせる。

 「うッッ!」

 凍てつくような鋭い眼光に、思わず闇世界の狂女は呻いていた。
 激痛に溺れていた瀕死の少女ではない、不屈の戦士の瞳。キュッと噛み締めた唇に宿る、あくなき反抗の闘志。
 霧澤夕子が流したのは透明な悲哀の涙ではなかった。
 頬をつたうのは、血。いや、赤い涙。サイボーグの性質を逆手に取られ、この世のものとは思えぬ煉獄に堕ちた少女の、苛烈なまでの反抗の意志。

 「てッ・・・てめえッ・・・」

 「・・・あの・・・ひとに・・・父には・・・手を・・・出す・・・・・・な・・・私・・・を・・・八つ裂きに・・・して・・・も・・・・・・」

 もし昨日までの夕子であったなら、反骨心を上回る拷問に屈して、ちゆりの希望通り服従を受け入れていたかもしれない。孤高に生きてきたがためここまでの過酷な仕打ちに耐えられた一方で、孤独であるがための限界は確実に近付いていたからだ。だが、今は違う。夕子には守るべき人間がいる。己の身を省みることなく、守らねばならない存在が。
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