呪いの王女とやらかし王太子の結婚【完結】

nao

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「同衾」(Sユリアーナ)

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 夜 鏡の中に映る自分の顔を見つめる。周りには、私の髪を梳く者、顔の手入れをしてくれる者、お茶を用意してくれる者、皆ニコニコして私の世話をやいてくれる。少しも私の事を怖がる様子も無い。皆 討伐であった事は知っているだろう。それでもこうして 甲斐甲斐しく世話をしてくれるなんて…とても嬉しい。こんな私にこれ程優しくしてもらえるなんて…その時 殿下の部屋に続く扉からノックの音がして扉の向こうからアルベルト様が現れた。
「アルベルト様?どうされたのですか?」
私は立ち上がって急いでアルベルト様のお側へ行く。アルベルト様が片手を上げると、部屋にいた侍女達が音も無く部屋から退出して行った。訳がわからなくて、アルベルト様の顔を見る。するとアルベルト様はニコニコして私の手を引き、二人掛けのソファーに私を座らせると、御自分も私の隣にピッタリと寄り添って腰掛けた。
「体調はどうかな?具合の悪い所は無い?」ああ、心配して様子を見に来て下さったんだわ。私 魔力枯渇のせいで、昨夜はとてもおかしくなっていたから…昨夜から今朝にかけての事を思い出して恥ずかしくて顔が赤くなってゆくのが見なくてもわかる。誤魔化すように返事をする。
「はい、昨夜は あの…恥ずかしい所をお見せしてしまい大変申し訳ありませんでした。」
「謝る必要は無いよ、君は私の妻なんだから。君をなぐさめるのは私の当然の権利だよ。むしろ、私以外の者に君を触れさせるなんてあり得ないからね。」
「えっ?!」なんだか「私の妻」っていう言葉が殿下の口から飛び出すたび、心臓が痛いくらい跳ねて、もう 死んでしまいそうだわ。
「じゃあ そろそろ 休もうか?」そう言ってアルベルト様は立ち上がり、私をそっと抱き上げ 奥にある二人の夫婦の為の寝室に向かう。
「ア  ア  ア アルベルト様?!」
「そんなに心配そうな顔をしないで、無理遣り君をどうこうする事は無いから、昨夜 君と眠ってわかったのだけれど、どうやら、君の魔力が回復して魔力が漏れ出すと、私は知らないうちに君の魔力を吸収してたみたいなんだ。おかげで今朝は魔力が満タンでスッキリしてとても仕事がはかどったよ。」
「そうなのですか?」
「ユリアーナはどう?魔力が安定していたのではないかい?」
「そう言われてみれば…いつもの目眩が無かったかも…」
「どうやら私達の魔力はとても相性がいいらしい。だから今日から一緒に眠ろうと思って…私達は夫婦だし、かまわないだろう?」そう言う 殿下の笑顔が、眩しいです。
「子供を作るのは まだ 2年程早いと思うのだけれど、将来の為にも今から慣れておくのも良いと思うんだ。お互いに…」突然の同衾の提案に私の思考能力は完全に停止して とても ついて行けそうに無い。顔だけが ドンドン赤く染まり、心臓がドキドキして本当に爆発しそうだ。アルベルト様は私をそっと寝台に横たえると、掛布を丁寧に掛けてくれ、そっと横から滑り込み、柔らかく私を抱き締めてくれた。私はただ人形のようにじっとしているしかなかった。恥ずかしすぎて指一本動かす事が出来ません!!アルベルト様の香りに目眩がしそうです!
「ほら、そんなに緊張していると眠れないよ。何もしないから、力を抜いて。」
「は…はい…」アルベルト様に言われるままに 力を抜いて、瞳を閉じた。そして、目の前にある アルベルト様の胸に顔を埋める。昨夜して下さったように、アルベルト様は、私の背中をリズム良く、トントントンと叩いて下さる。ゆっくりと背中を叩くリズムが心地よくて、やがて 私は眠ってしまった。朝、目が覚めると、広い寝台に一人、(アルベルト様は もう 起きられたのね。)
「お目覚めですか?」私が起きた気配を感じて、侍女が声をかけてくれる。
「おはよう、エリン。」侍女のエリンが洗顔ボウルとタオルを準備してくれる。
「ご気分はいかがですか?朝食はどちらにご用意いたしましょう?」
「気分はすごく良いわ。」こんなにスッキリした目覚めなんて生まれて初めてかもしれないわ。そう思いながら、隣にいたはずのアルベルト様の事を訪ねてみる。
「あの…アルベルト様は?」
「朝の鍛錬に行かれました。朝食は 食堂で取られるそうです。御一緒なさいますか?」
「いいの?」
「もちろんでございます。」
「じゃあ 御一緒したいと伝えてくれる?」
「かしこまりました。」
 食堂に行くと すでにアルベルト様が私を待っていて下さった。長い足を優雅に組んで、ソファーに座り、新聞に目を通していらっしゃる。私が来た事に気付いて、エスコートする為に立ち上がった。
「おはよう、ユリアーナ。良く眠れたかい?」アルベルト様の差し出して下さる手を取り、席へ向かう。
「はい、お気遣いありがとうございます。あの…アルベルト様は大丈夫でしたか?私の魔力に当てられてはいませんか?」
「心配いらないよ。私も今朝はとても体調が良いんだ。君のおかげかな?」アルベルト様はそう言いながら、極上の笑顔を私に向けて下さる。眩しいです。
「そ…それなら良かったです。」
「さぁ、食べよう。」席に着いて食事を始めると、おもむろに アルベルト様が、建国祭について、説明を始めて下さった。
「ユリアーナは、来月の建国祭の話は聞いてる?」
「はい、正午より式典、夜は夜会に参加するように聞いております。市井では、沢山の屋台が出て、歌や、踊りなどでとても賑わうそうですね。」
「あぁ、一年で一番大きなお祭りだからね。国全体で祝うんだ。それで当日の式典と夜会のドレスなんだけれど、私に用意させて欲しい、君にドレスを送りたいんだ。」
「はい、ありがとうございます。」夫の選んだドレスを着るなんて、なんだか照れます。
「それと、夜会のフィナーレに王族全員で夜空に絵を描くんだけれど 君も参加してほしいんだ。」
「私も ですか?」
「うん、いいかな?」
「あの…夜空に絵を描くとは どんなものなのでしょうか?」
「男性陣は、主に火魔法を使って、ドラゴンや火鳥などを毎年空に描いているんだ。女性陣は光魔法を使って夜空に花を咲かせているんだ。」
「あの…私は何をすればよろしいのでしょうか?」
「ユリアーナは光魔法は?」
「私は正反対の闇属性なので、あまり得意ではありません。火魔法なら少しは使えますが…」
「じゃあ、ユリアーナは魔力が膨大だから、女性陣のサポートを頼もうか。毎年魔力枯渇で皆 フラフラになるからね。魔導具係がたくさん魔石を用意してくれるから、それの準備を頼むよ。あと 少しだけ私の魔法の手伝いをしてもらおうかな?」
「わかりました。頑張ります!」
「よろしく頼むよ。じゃあ私はそろそろ執務に向かおうかな。勉強の時間までユリアーナはお茶でも飲んで ゆっくりしているといいよ。」
「ありがとうございます。」
そう言ってアルベルト様は私の頬に軽く口付け、執務室に向かった。自分の顔が赤くなってゆくのがわかる。昨日からアルベルト様のスキンシップがスゴい!!
私の心臓 大丈夫?!
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