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⑺父の後悔
しおりを挟むどうして、こんな娘に なってしまったのだろう···
私は、カイン ノートン候爵。
私には3人の子供がいる。
長男 ダイヤ、長女 エメラルダ、次女 サファイヤ。
先日、次女のサファイヤが社交界を追放され、私と妻は、その責任の一端を負うため、爵位を長男ダイヤに譲り、領地にサファイヤを連れて帰って来た。
サファイヤは、領地にある修道院へ軟禁し、私と妻はその近くに小さな別邸を建てて、サファイヤを見張る事にした。
帰りの馬車でも、「帰らない!」と、暴れるサファイヤの両手足を拘束し、護衛を2人付けて逃げられない様にして、連れ帰った。
修道院に入る時も、最後の最後まで 抵抗して、私も妻も、暴れる娘の姿に まるで獣のようだと、悲しい気持ちになり、胸が痛かった。
どうして、こんな娘になってしまったのだろう···
利発で優秀な兄 ダイヤ。
美しく、淑やかで、王国一の美女と言われた姉 エメラルダ。
美しく、優秀な2人の兄姉に比べて、あまりにも平凡だった次女のサファイヤ。
そんな サファイヤが不憫で、私達 夫婦は殊の外、サファイヤを甘やかして育ててしまった。
平凡と言えど、サファイヤも それなりに可愛らしく、笑顔の愛らしい 甘えん坊の末っ子だった。
サファイヤが欲しいと言えば、どんな物でも買い与えた。
どんな 我儘も笑って許容した。
何を言っても、全て 両親が、兄姉が与えてくれる。
いつの間にか、サファイヤは甘えん坊で、我儘で、何でも欲しがる欲深い女に育ってしまった。
特に、姉であるエメラルダの物を欲しがる様になり、思い通りにならないと、泣いて、手がつけられなくなり、泣かれるのが面倒になったのだろう、エメラルダもあっさりと自分の物をサファイヤに譲るようになってしまった。
リボン、髪飾り、ブローチ、ドレス、バック、靴、装飾品まではまだ良かった。
そのうち、ペット、侍女、メイド、護衛。
エメラルダに与えられるもの全てを 欲しがるサファイヤに 私は そら恐ろしいものを 見ているような 気がした。
このままではいけないと、サファイヤを叱っても、泣いて言う事を聞かない。
泣いて、泣いて、泣いて、食事も取らず、部屋に閉じ籠もって、出てこない。
泣きすぎて、体調を崩しても、サファイヤは自分を曲げなかった。
結局、諦めたエメラルダがサファイヤの望むものを譲る事になった。
『強欲の化け物』
そんな言葉が、頭に浮かんだ。
サファイヤは とうとうエメラルダの婚約者まで手に入れて、満足そうに笑っていた。
(恐ろしい···)
私は、サファイヤが怖かった。
妻も同じ様に感じていたのだろう。
サファイヤを見つめる瞳に恐怖の色が浮かんでいた。
婚約者を失ったエメラルダの下には、次々と 求婚の申し込みが 殺到した。
中でも、友人だと言っていた 隣国の王子は熱烈だった。
国内にいては、又、サファイヤが エメラルダを 困らせるかも知れない。
もうこれ以上 エメラルダを傷つけたくないと考えた私は、隣国の王子に エメラルダを託す事にした。
今迄、我慢ばかりしてきたエメラルダを幸せにしてやりたかった。
サファイヤの 呪いのような執着から エメラルダを 解放してやりたかった。
王子の横で、幸せそうに笑う エメラルダを見て、今度こそ 幸せになって欲しい と心から願った。
修道院に入ったサファイヤは、相変わらず 人の物を欲しがり、シスター達を困らせている。
何度か、脱走を図り、捕まって 独房に入れられたりしていると 報告も受けている。
行いが、正されなければ、陛下から 毒杯を賜る事になると言う事を あの子は全く理解していない。
シスターの説教も、神官様の説教も、彼女には 全く耳に入らないようだ。
1月に1回、私と妻はサファイヤに面会している。
しかし···
「ここから出して!!」
サファイヤはそれしか言わない。
私はサファイヤに
「どうして、ここに入れられたのか、わからないのかい?」
そう 問いかけてもサファイヤは
「お姉様のせいよ!お姉様が陛下に言ったんでしょう!私が可愛いからって、お姉様はいつも私に辛く当たるのよ!」
「エメラルダは関係無いよ。サファイヤが ここに入れられたのは、婚約者のいる男性に言い寄って、沢山の婚約を 潰してしまったからだよ。多くの家から 我が家に慰謝料の請求が来ているんだ。」
「そんなの 知らないわ!私は何もしていないわ!皆んな 勝手に私の事を好きになってしまっただけなのよ!心変わりした男が悪いのよ!私は何も悪くないわよ!」
「そうか···お前はやはり 少しも反省していないんだね。」
「お願いよ、お父様、私は何も悪くないのよ。全部、全部お姉様のせいなのよ。悪いのはお姉様なのよ。ねぇ、お母様、お母様からもお父様にお願いしてよ。ねぇ、お父様 お願いよ、私をここから出して、お父様、ねぇ、お母様···」
サファイヤの言葉を聞いて、私も妻も、とても悲しかった。
私達はどこて育て方を間違えてしまったのだろう。
確かに、サファイヤを甘やかしたことは認める。
だが、子供達には 皆んな同じ様に 愛情を込めて 育てたつもりだったのに、一体 何がいけなかったのか···
このままでは、サファイヤは処刑されてしまうだろう。
サファイヤの様子はもう既に、修道院から陛下に報告されているだろう。
サファイヤが自分の行いを反省する事はこれからも無いだろう。
次に会う時、サファイヤは柩の中かもしれない。
そう 思うだけで、恐ろしくて 身体が震える。
頼むから、心を入れ替えて 反省して欲しい。
妻と2人、毎日 サファイヤの事を神に祈る。
「どうか、サファイヤが心を入れ替えて、真っ当な人間になりますように。」
·····私達の願いが神に届く事は無かった···
修道院に入って10年、サファイヤは食事に入れられた毒によって、静かに処分された。
毒杯を素直に受ける筈も無いと判断されたためだった。
結局、サファイヤが反省する事は無かった···
完
―――――――――――――――――――――――――
最後まで読んで頂いてありがとうございます。
これで、完結となります。
短いお話ですが、たくさんの方に読んで頂いて 嬉しかったです。
たくさんの「いいね」「お気に入り」にしてもらえて、ありがとうございます。
また、次も 読んでもらえるよう頑張りたいです。
本当にありがとうございました。🙇
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(16件)
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拝見しました。
意外にも婚約破棄ものにしてはアクオスの復活劇が斬新でした。彼は自分勝手な2度の婚約白紙という愚行を経て本当の伴侶に巡り合えたのが一味違いました。結末は良かったものの彼にしても10年という時間を棒に振っているのだから罪は償えたと思いたい。
このお話の諸悪の根源はやはりノートン侯爵夫妻か。強欲に狂うサファイヤに対して是が非でも禁止事項を阻止すべきだった。
その報いがサファイヤへの毒杯であり評判の下がった侯爵家を息子に譲渡した事。劇中登場こそはしませんでしたがダイヤの行く末も平坦な道のりではないでしょう。
無事に脱出出来たエメラルダは勝ち組ww
恐れながら誤字を報告致します。
⑹手紙
>何度誤っても、許されるものでは無いと思いますが
→何度謝っても
感想をありがとうございます。
後悔して、やり直しする人生もあってもいいんじゃないかな…と思って書いてみました。
可愛い女の子にグイグイこられると、男って弱いよね〜などと言う同僚との会話で思いついたお話です。
チョット、アクオス君に肩入れしてます。
そして、誤字報告もありがとうございます。
何度チェックしても出てくる><
怖いです。
本当にありがとうございました。^^
変なスペースの使い方が読みにくいです。
句読点の付け方や行間の取り方を書籍化作品などを参考にされてはいかがでしょうか。
何かこだわりがあるのかもしれませんが、客観的に見ることも大切な事だと思います。
物語の内容で評価されるべきなのに、別のところで読まれなくなるのはとても勿体無いですね。
ご指摘ありがとうございます。
電子に慣れてなくて、いくつか書いているのですが、試行錯誤のくりかえしでなかなか上手く書けません。
より良い作品にする為にもまだまだ精進していきたいです。
これからもよろしくお願いします。
ざまぁされた側の、成長の物語よかったです。
兄弟がいたら絶対廃嫡されてそうですが、侯爵である父が理解ある方で助かりましたねw
エメラルダに暴言暴力まではしていなかったので主人公に悪感情抱かずにすみました。
サファイヤ10年修道院は判断遅すぎませんかお父さんw
修道院の方々お疲れ様でした……。
感想をありがとうございます。
サファイヤは最後まで全く何も理解出来ませんでした。
きっと、死ぬ瞬間も「何で?何で?」と思ってました。
本当に周りは大変だったと思います。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。