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第六十四章 神(かみ)さり
壮大な神の計画
しおりを挟む惑星エラム、その絶対的な時空間座標とも呼べる、廃墟の教会の崩れかけた祭壇。
エラムの有史以前の神話時代のさらに前、レムリアの祖先が誕生する前のアスラの統治時代の初め……
そこに私、吉川洋人の幽子が現れている……私は洋人ではないのか?……
いや、洋人は私の中に『在る』、そして私は『ミコ』として『ある』……
ならば遥か時の彼方に存在していた、『洋人』はやはり私なのか……
『時』を超越して、私は存在していたのか……
クロノス……『時』をつかさどる神、ラグナロクの最後で、私は大自在天と始めて会った。
その時、大自在天は自らを、『時』をつかさどる神といった。
そして彼は私の分身だった……
私は『時』をつかさどる神、ならば洋人が、遥かな時の彼方に存在しても不思議ではない……
……
私は愚かだった……
全ては目の前に広げられていた……
私は造化三神により創造され、神の『しもべ』として、この三千世界をよりよきものにすべきと、力を尽くしていた……それは事実なのだ。
しかし全ては『大神』様のお考えだった。
アスラもデーヴァも、この世界には存在しなかった。
かつてあった世界の幻、そう、その幻の歴史を種に、この世界は作られた。
そしてより良き世界になれるように、私は造られた……インペラトルであったブラフマーも、造られた存在?
いや、彼はかつてあった世界の、デーヴァの指導者の幽子?
違う、彼はかつてあった世界の、デーヴァの指導者の擬似人格、デーヴァ神族の理想の指導者像ではなかったのか……
そして私はかつてあった世界の、アスラの指導者の擬似人格、アスラ神族の理想の指導者像、ルシファー……
二つの神族は出会ったことはなかった……どちらも滅亡したのではないか?
アスラ神族もどこかへ去ったと考えたのは、間違っていた。
デーヴァ神族と同様に滅亡していたのでは……
かつてあった三千世界は存在できなくなった……活力がなくなった故に……
『大神』は再びやり直そうとした……
鏡界をつくり、テラの歴史にあるノアの箱舟のように、幽子のオリジナルを運んで、世界を作り直した。
そしてより良き明日、自ら理想とする世界を造るために、全てを創造したのだろう……
すべては、アスラの女性体が男性体を撃破したところまでは、多分そっくりそのまま進んだはず。
そこからの世界が衰退していく、それを阻止するためにルシファーは誕生させられた……
そのために、まずは洋人を誕生させ、洋人の欲望を具現させる世界、惑星エラムを作り、来るべき美子のフィールドとしたのだ……
世界を引き継ぐ者のために……
なんとも壮大な神の計画か……
問題はその後、『大神』は何をお考えなのか……
全てをお見通しの神の更なる神、私の思いなど折込済みのはず。
私に出雲大社の御客座を見せた以上、私が何を思うかもご存知のはず。
つまりは真実を知らせ、私の思い通りにしても良い、そうお考えと私は思う。
しかし神のご計画を、いささか修正する以上は、それなりの代価を支払わねばならない。
この件に関しては、私の努力が求められているのだ。
……『神殺し』を強いられる恐れがあるが……『神殺し』の前に『親殺し』ともなる、それだけは避けたい……
造化三神は私にとってかけがえのない方、多くの試練を受けたが、私をいつくしんでくれた父と母。
なんとしても、『大神』様の規定の方針は改めていただく……
とにかく神の御許にたどり着かなくては……
多分、たどり着くまで、多くの触りが起こるはず。
それも覚悟の上、幸いにも命はとられないとは確信している。
最悪は、記憶が入れ替わるだけだろう。
私は利用価値があるはず、『大神』といえど、私を失うことは計画を再びやり直すことになる。
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