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第六十八章 『天候予定表』は雨

生き運

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「とにかく寝かしましょう、治療をしなければならないわ」
 そういうと、ティアマトと呼ばれた女が、マットレスなどを敷いています。

「そっとライラさんを、ここに寝かしてあげて、そうそう、ゆっくりとね」
 柔らかい寝床に寝かされたライラですが、それでも足や手の痛みで、歯を食いしばったライラです。

「とにかく痛みを止めてあげるわ、貴女は私の『夜の奴隷』、全てを見せてもらうわよ」
 ティアマトはそういうと、ライラの足と手と肩を撫でますと、あれほどの激痛が消えたのです。
 その後、貞操帯を外す美子さんでした。

「よほど怖かったのね、漏らしているわね、とにかく足ね、複雑骨折しているわ……よくこれで朝から我慢出来たわね……幸い細菌感染はしていないようね」

 ペルペトゥアが、
「ティアマト様、骨が皮膚を突き破っていますが……治せるのですか、完治しないなら、ライラの為にも処分した方が……」

「私なら治せますよ、ライラさんは生き運があるようですね」

 ペルペトゥアが、
「ライラ、聞いたであろう、主様は治せるとおっしゃっておられる、治ったら、命をかけてお仕えするのだぞ」
「誓います、お役に立てなければ、自分自身で処分いたします」

 美子さんが、「そんな話しは後です、始めますよ」
 そういうと、ライラの足首をつかみました。

 足の感覚がなくなり、ティアマトが、足を本来の位置に戻していきます、骨が動いているのが分かります。

「骨の位置は戻しました、欠けた骨のかけらの除去を始めたところです」
「足が冷たく感じてくるでしょうが、皮膚や血管、筋肉の再生が始まり出すと、熱を持ちます」
「ひどい激痛はないと思いますが、不快な痛みが断続的に続きますからね」

「さて、手を治しますか……これは簡単ですね、手首の橈骨(とうこつ)遠位端骨折ですね」
「手首の太い方の骨にひびが入っていますが、ズレているわけではありませんね」
「肩はひびが入っているだけね、まあついでに直しておきますか」

 美子さんが患部を撫でますと、こちらも熱を持ちはじめました。

「足は明日の朝には治るでしょう、昼には何とか杖をつけば歩けるでしょうね」
「肩と手首は、ちょっと痛いのを我慢すれば動くはずです」

「では明日の夜には、『夜の儀式』が出来るのですね」
「まぁ、そうなりますね……とにかく少し休みなさい」
「お腹が減っているのではありませんか?」
「胃腸に不都合はないようなので、食事でもいたしましょう」

 そのとき夜になったようで、急速にテント内の温度が下がってきました。

「テントヘルプです、内部温度が下がってきていますが、暖房を効かせますか?」
「24度でお願いします、私、少し寒がりですから」

 再び温度が上がってきます。

「外は暴風雨です、『天候予定表』によれば、明日は一日動けないですね、まぁゆっくりしましょう」 
 
「ところでペルペトゥアさん、なにか食べたいものってある?」
「私はティアマト様の残り物で十分ですが……」
「何をいっているのよ、お食事って、皆で食べると美味しい物なのよ」

「でも確かにテントの中ですからね、非常食で我慢してね、外なら煮炊きも出来ますけど、暴風雨の夜ですからね」
 まぁ、今日は疲れましたからね……自分で何でも作り出さねばならないのですから……

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