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第六十九章 仮の宿
巡礼を五回分
しおりを挟む朝、雨が上がっています。
ライラさんが、
「お二人とも、朝が来ましたが、この後どうされるのでしょうか?」
「まずは朝ごはん、そしてシャワーを浴びて、ライラさんは、コータヴィーの住むところへ案内してください」
「ペルペトゥアさんは、私の護衛をお願い」
美子さんの返事です。
「ライラさん、身体は大丈夫なの?」
「大丈夫です、コータヴィー様は、聖なる都キシュキンダーにお住まいです」
「キシュキンダーに行くには、この先、私が倒れていた道に戻り、アヨーディヤーで、何とか巡礼証を手に入れなければなりません」
「詳しいな、参拝証なら知っているが、巡礼証とかいうものは、始めて聞いたぞ」
ペルペトゥアさんが云いました。
「ペルペトゥア様がご存知ないのは当然です」
「通常、巡礼はキシュキンダーまで行き、神殿外の礼拝の広場でお祈りをするのです、このとき参拝証が手渡されます」
「しかし信仰深き者と認められたものには、巡礼証が渡されるのです」
「この巡礼証を持つ信仰深き者は、神殿内部でコータヴィー様を垣間見ることが出来るのです」
「巡礼証を発行することの出来る場所は限られており、この近くとなれば、アヨーディヤーしかありません」
「どうすれば発行されるの?」
「普通は、巡礼を五回以上行った信仰深き者が、その証である五枚の参拝証を提出することで、発行されますが、多量に捧げ物をすれば、たまに発行されます」
「私の前の主は、手付かずのユニを十名売り払い、その代金を捧げて、巡礼証をいただくといっておられました」
「巡礼を五回もか……無理な話だな……」
ペルペトゥアさんが、感心したようにつぶやきました。
「ペルペトゥア様はご存知無いようですが、巡礼証をいただき、コータヴィー様にお会いできれば、階級が一つ上がるのです」
「奴隷十人分っていくらぐらいなの?」
ペルペトゥアさんが、
「普通の奴隷が小銀貨10枚、一年分が相場、小銀貨100枚となりますが、多分良い奴隷となるから、十人分で小銀貨120枚、銀貨20枚というところでしょう」
「アヨーディヤーにいくしかありませんね、そのアヨーディヤーで巡礼証を発行するのはクワドロなのね」
「そうです、アヨーディヤーのクワドロは吝嗇で有名で、捧げ物しだいで発行すると、先の主はおっしゃっていました」
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