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エピローグ

リリータウンの新しい住人

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 リリータウン。
 この愛人だけが住まう街。
 とても狭い街ですが、この度、愛人待遇の方々にも住居が支給されました。

 ほぼ倍の規模ですが、お家が増えただけ、後はお風呂が少しばかり大きくなりました。
 ここは自動的に掃除がなされます、アリスさんのたっての願いです。

 該当者だけが住める街ですから、自らのことは出来るだけ自ら行うことになります。
 一応アリスさんにお洗濯をお願いできますが、高額の料金が請求されます。

 そして今日、新しい住人に住居が引き渡されたのです。
 昔のように厳重なチェックはありません。

 エラムウイッチリゾート、またはエラムの御座所からだけ、異空間倉庫がつながっており、愛人、または愛人待遇のチョーカーにしか、入り口が開きません。

 別に歓迎会などありません。
 皆さん忙しいので、この一月の間に鍵を受け取り、あとは各自で掃除などするだけ。
 私物の搬入も各自勝手にとの事です。

 それでも一番にエラムの麗人から昇格した11名
 アンジェリーナ、アリアドーネ、エーデルガルト、エリザベート、シルビア、ドロシー、ニコル、バーバラ、フローラ、ロジーナ、ロランスがやってきました。

「始めてリリータウンを見たわ、私たちの家はどれかしら」

 そんなことを話していると、アリスさんがやってきます。
「アリス様、お世話になります」
 皆で挨拶などしますが、
「様はいらないわ、ここの住人はさんづけで呼ぶことになっているわ」
 
「皆さんの家へ案内するわ、大体アンリエッタさんの近くにしておいたわ、ここはニコルさんのお家」
 
 3F建てのペンシル住宅。
 1Fは玄関と3畳大のキッチン、このキッチンには電磁調理器と小さい冷蔵庫、と一人用の食卓、回り階段があり、階段下に洗濯機があります。
 2Fはユニットバス&キッチン、ホテル仕様になっています。
 3Fは4.5畳大の居室、ベッドが一つとサイドテーブルが一つあります。

「いまさらですが、電磁調理器と洗濯機とユニットバスの使い方を説明しておくわ」
 アリスさん、通り一遍の説明をします。

「詳しくはアンリエッタさんに聞いてね、衣服も支給品があるわ」
「あんまりいいものではないけど、皆さん、不思議とこれを着ているの」

 その後も各人の家を案内しながら、あれこれと街を説明しています。

「アリスさん、ここにあるものは、マルスや蓬莱で見るものと微妙に違いますが?」

「きずいたの?この街はね、ヴィーナス様の若かりし頃にお住まいの世界を模したもの、物品はその世界のものなのよ」
「ネットワーク世界には、そのような世界はないの」
「だからここだけが、ヴィーナス様とイシス様の故郷なのよ」

「この街に物品を供給する第一倉庫にだけ、オリジナルが保存されているの、これは薫さんが厳重に管理しているわ」

「あっ、アンリエッタさんが来た、後のことは聞いてね、私、ちょっとキリーに用事があるの」

「アリスさんの説明、わからなかったでしょう?」
「私も初めてのときは、何がなんだか分からなかったわ」
「説明が下手ですからね」

 で、アンリエッタさんとおさらいをすることに。

「ここでは、あまり体裁をつけることはないのよ、ダフネさんなんて、あらわな格好でビールを飲んでいるから」
「そうそうチケットの残高に気をつけてね、でないと給食で暮らすことになるわ」
 
 アンリエッタさんがいうには、慣れると案外に楽しい生活なのだそうです。

 事実、この後、そのことがよく分かったのです。

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