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エピローグ

リリータウンのある日

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 その日はヴィーナスさんが泊まりに来ていました。
 一人でのんびりとしています。
 前日、一斉夜伽、サバトをこなして、オフなのです。

「さてご飯でも作りましょう♪」
 パジャマ姿のまま、電磁調理器用土鍋風鍋など持ち出して、乾燥グリーンピースで炊き込みご飯なんて作っています。

 近頃は、食材などの持ち込みも可能な様で、蓬莱産のこしひかりなんてのを、持ち込んでいるヴィーナスさんなのです。 

 湯気が立ち始め、おいしそうな匂いがしてきました。
「後はお味噌汁と卵焼きね♪」
 卵は粉末卵、葱とお揚げは乾燥のものですけど、お味噌だけは、ちゃんと赤味噌などを持ち込んでいます。

 そんなところにアンリエッタさんがやってきました。
「おいしそうなにおいがしますね、皆でおよばれにきました」
 カラトリーとお皿なんて持っています。

「もう、鼻が利くんだから、でも、こんなものでいいかしら、質素なものよ」

 さすがに十二名が押しかけたので、乾燥グリーンピースの炊き込みご飯は、小さいお茶碗一杯程度です。

「少ないけど召し上がれ、あとでこのお味噌汁を使って、卵雑炊でも作るわ」

 愛人待遇麗人の皆さん、のんびりムードのヴィーナスさんに影響されたようです。

 電磁調理器用土鍋風鍋は空になり、そこにお味噌汁の残りをいれ、さらに出し汁とお米を放り込んで、卓上電磁調理器に再度のせたヴィーナスさんです。

 お鍋はことことと音を立て、再びおいしそうな湯気を立て始めます。
 ささやかな雑炊ができあがり、皆で食べます。
 量は少ないですが、満たされた気持ちになった皆さん。

「ねぇお風呂に行かない?」
 
 皆で仲良くお風呂に入り、その後、ビール……
 袋菓子など各自で出し合い、ささやかな宴会が続いたのです。

 なにかゆっくりと、癒された時が過ぎていきました。
 
 翌日、
「久しぶりにのんびりしましたわ、なにか心が洗われたような気がしませんか」
 ロジーナさんの感想です。

「早いものね、あれから百年とすこし、弟ーーハイドリッヒーーが死に、カスバーー旧タリン王国の王都ーーが陥落し、アウセクリス様が乗り込んで来られて、私は生を終えようと覚悟を固めたのに」

「あの時、私を女官長に推薦してくれた、グリゴリー宰相はとっくにお墓の中です」
「アメリアさん、シャーリーンさん、デボラさんと私だけが、当時のタリンの事を知っている……」

「本当はお婆さんなのに、今も恋に胸を焦がしている」
「その昔の私の夫、ルーシー国王の弟陛下は、もう顔も思い出せません」

「そうですよね、二年だけの夫婦、エラムが滅亡の縁にあったと知ったのは、かなり後のこと」
「当時はそんな事、何も知らなかった」

「ヴィーナス様は本当に神話の黒の巫女様、そのヴィーナス様をエラムにお遣わし下さった神々にも、先頃お会いすることが出来た」
「私はヴィーナス様にすがりついて、とうとうここまでやってこれたのだわ」
 エリザベートさんがしみじみと語りました。

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