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第五十九章 明かされる隠し事
10 主席の最後
しおりを挟む「すこし計算可能です、私はイレギュラーを抱えている。」
「そうですか、愛を交わしたのが理由ですか、生殖行為の果てに、その様な決断ならば計算可能……」
「しかし同性でのそのような行為にも……計算不能……」
「では計算できるように説明しましょう。」
「いまのエラムの優勢な人種、キンメリアの人が病気とします。」
「しかしその病気は、絶対治らない不治の病かといえば、そうかもしれないし、そうでもないのかも知れない。」
「ならば、それを不治の病とするのはまだ早い、もっと後に、その判断をしても遅くはない。」
「違いますか、ならばその間は治ると思い、キンメリアに自助努力のチャンスを与えても良いはず。」
「そう思い至ったのです、計算がおかしいですか?」
「計算可能です、では巫女様、御命令を、私はイレギュラーを抱えて、壊れかけている。」
「私の方から二三聞きたいことがあります。」
「なんでしょうか?」
「私に仕える気がありますか?」
「私は機械です、リセットされれば、仕えるもなにもありません。」
「でも出来うるならば、ここで終わりたい、責任を取らなければならぬし、私といえど永い時だったのです。」
主席にも、永遠の時間は苦痛だったのでしょう。
「貴方は参謀に、何か云い残すことはありますか?」
「御苦労であった、感謝していると伝えてほしい。」
「また黒の巫女様には、参謀の処遇については感謝している。」
「できれば彼女に、巫女様の世界を見せてやって欲しい。」
「私には出来ぬことだったが、我が娘とも呼べる女だ、これからの幸せを願っている、とも伝えてほしい、以上である。」
「では主席、最後です、御苦労さまでした。」
「黒の巫女として命ずる。データーを第二衛星のエラム監視端末に移し、自身を破壊せよ。」
私は命じました。
主席の立体映像は徐々に薄れ、静かに主席は壊れ始めているのでしょう。
終わってみれば、尊敬できる敵でした。
私は源兵衛さんに尋ねました。
「データーは転送されてきましたか?」
「膨大なデーターが転送されてきました。」
『しもべ』さんに、
「主席の身体をここへ転送できますか?」
「可能ですが、なぜですか?」
「尊敬できる敵だったからです、人はその様な時、死を悼むのです。」
『しもべ』さんに「参謀もここへ呼びなさい」、とも命じました。
周りの空間が白一色になりました、そして彼女が来ました。
「ヒルダ参謀、主席がいま逝去されました、尊敬できる敵でした。」
「主席は貴女を娘と呼び、これからの幸せを願っている、御苦労であった、感謝していると、伝えてほしいとの遺言でした。」
「貴女が葬儀を希望するなら、御遺体を引き渡し手配をしますが?」
ヒルダさんは顔色を変えませんでしたが、
「希望いたします、父として葬ります。」
と、いいました、心なしか肩が震えていました。
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