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第一章
4 公爵令嬢アリソン
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王太子の婚約者アリソン・ポリー・ラッシュブルック公爵令嬢は暇を持て余していた。薔薇を思わせる深紅の長い髪を真っ直ぐ艶やかに下ろし、紫水晶の様な切れ長の瞳は手に持った書類の文字を追っているが、急ぎの内容ではないし、今日やるべき仕事は終えてしまっている。
頭脳明晰、冷静沈着、完璧令嬢のアリソンは弱冠16歳ながらも驚異的な早さで妃教育を修め、まだ婚姻前ではあるが早々と王妃から一部の仕事を引き継いでいた。
「なんだか暇ね」
書類を机に置くとボンヤリと執務机の横の窓から外を眺める。
―――コンコン
「どうぞ」と答えると、アリソンと同じ髪の色をした青年が入ってくる。「あら、暇つぶしが来たわね」とアリソンは嫣然と微笑んだ。
「よっ!近くまで来たから顔を見せに寄ったぞ」
「次期公爵様は随分お暇なのね。羨ましいわぁ」
「フン、そう言うお前もどうせ暇だったんだろう。『暇つぶしが来た』みたいな顔してるぞ」
「あらバレた?さすが従兄ね。ウィン」
青年はウォーレン・グレッグ・パーカー。アリソンの母方の従兄で歳も近い為、幼い頃から交流があり、兄妹の様な間柄だった。
「それは?」
ウォーレンはアリソンが目を通していた書類を指差す。
「報告書よ。何のかは聞かない方がいいわね」
「王室絡みか。まさかお前が未来の国母様とはなー」
「ふふふ、せいぜいこき使ってあげるわね?次期パーカー公爵様」
美しく嘲笑うアリソンに「あー怖い怖い」とウォーレンは肩をすくめた。
「そう言えば来週お茶会に出るんだって?珍しいな」
「親戚付き合いの一環よ。毎年恒例、サマンサ叔母様主催のデビュタント前の顔合わせ会。今年は叔母様のお友達の義妹さんが領地から引っ越してきたのですって。デビュタント前に同じ年頃の令嬢と顔を繋いでおきたいみたいね」
「ふーん、それはご苦労な事で。可愛い子だったら紹介…「するわけないでしょう」」
ピシャリと断られ、ウォーレンはまた「あー怖い怖い」と肩をすくめた。
「まあ、他にも何人か来るみたいだし、わたくしは適当に過ごして帰るわよ」
「お前が友達になってやれば、王都で怖いものなしだろうに」
「冗談でしょ?普通のお嬢サマなんて退屈だもの。興味ないわね」
アリソンはそう言うとすっかり温くなってしまった紅茶を飲み干した。
―――――1週間後
「なにあの子……すごく面白いじゃない」
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「それは?」
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「ふふふ、せいぜいこき使ってあげるわね?次期パーカー公爵様」
美しく嘲笑うアリソンに「あー怖い怖い」とウォーレンは肩をすくめた。
「そう言えば来週お茶会に出るんだって?珍しいな」
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