ど天然田舎令嬢は都会で運命の恋がしたい!

上木 柚

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第一章

18 聖堂にて2

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「ここが裏庭ね!ディエーラの像は…」
「あちらですわ。花壇の日時計の中心に」

 ジュリアが像を指し示すと、ロザリンドは小走りで駆け寄った。それを見たルーシーは「お嬢様!はしたないですよ」と後を追った。

「ははは、ほんとにロザリンド嬢は中身は変わらないなぁ。再会した時はあまりにも綺麗になってたから驚いたけど、話してみたら昔のままの彼女だ」
「そう、なんですのね…。なかなか賑やかな方ですわよね」
「明るくて可愛いのは、全然変わらないなぁ…」
「………」

 優しく、けれど少し熱っぽく見つめるトマスの視線の先には、ディエーラの像の周りをぐるぐる周っているロザリンド。
「トムお兄様!ジュリア様!早く早く!」とロザリンドが手を振ると、トマスは破顔して駆け寄った。
 その光景に、ジュリアは下唇を噛んで小さく震えた。



「何か見つけた?」
「うーん、見れば見るほどただの像なのよね。特に微笑んでる訳でもないし…」
「このディエーラの像はちょっとした仕掛けがありますのよ」

 ロザリンドとトマスが像の周りをウロウロしていると、気を取り直したジュリアがディエーラの像について話しだした。

「日時計をご覧になって。1つだけ花に囲まれた時刻がございますでしょう?ああ、ちょうどもう直ぐです」
「あ、本当ね。『11』が花に囲まれているわ!これがなんなの?」
「すぐにわかりますわ。さあお二人共、ディエーラの像の正面にお越しになって」

 ジュリアに促され、ロザリンドとトマスは急いでディエーラの像の正面に立った。すると――


「ああ!ディエーラの像が微笑んだわ!」
「なるほど、この時刻になると教会のステンドグラスから反射した光で微笑んで見えるのか」
「お嬢様、ご覧になって下さい。反射した光の一部が日時計の文字に」

 教会のステンドグラスに反射した光が女神ディエーラの像を照らすと、特に表情のなかったディエーラ像が正面の位置から微笑むように見えた。
 どうやらこれがディエーラ像の仕掛けらしいが、後ろで控えていたルーシーがふと下を見ると光の一部が、日時計の盤面に彫られた『Diera』の文字の一部にもあたっていることに気付き、咄嗟にロザリンドに伝える。

「『Diera』の『Di』にあたってるわね。これは覚えておいた方が良さそうね!」

 ロザリンドは手荷物の中から謎の小袋を取り出すと、その中から小さなメモと万年筆を出した。

「ロザリンド嬢、その袋は何?」
「これ?よく聞いてくれたわね!トムお兄様!これは『』よ!」
「「はぁ?」」

 ロザリンドから飛び出した『探偵七つ道具』なる謎の発言に、トマスおジュリアはポカンとし、ルーシーは顔に手をあてて天を仰いだ。
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