ど天然田舎令嬢は都会で運命の恋がしたい!

上木 柚

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第一章

23 時計塔

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「わぁ!これが時計塔なのね!近くで見ると圧巻ね!」
「200年前に当時の国王が王妃との成婚記念に建造させたそうだよ。かなり情熱的な方だったみたいだね」
「成婚記念に時計塔…つまりこれは愛の結晶なのね」
「え?あーそうとも言える?のかな?」

 目を閉じてなぜか万感の思いに浸るロザリンドを、トマスは眉を下げたいつもの困った様な笑顔で見つめた。

「時計塔の1番の見所はなんと言っても鐘の鳴る時ですわね。そろそろ時間ですから、中のホールへ移動しましょう」
「特別な仕掛けがあるんだよ」
「そうなの!?どんな?」
「見てのお楽しみ」

 一行は時計塔の内部にあるホールへと向かった。
 吹き抜けのホールのはるか上部には大きな鐘が見えた。ロザリンドは見上げすぎて後ろに倒れそうになった所をトマスとジュリアが慌てて受け止めた。

「そろそろ時間だね」

 時計の針ががちょうど3時を指し示し、鐘が鳴り始めると、可愛らしい音楽が流れ、ホールの吹き抜けの中腹から何体かの人形がせり出してきた。3体の天使に女の子と男の子の人形が1体ずつ。
 女の子はドレスを身に纏い、男の子はたくさんの装飾が付いた騎士服にマントを羽織っている。
 人形は音楽に合わせてクルクルと宙を舞い、見ているものを楽しませる。
 そして、最後に中央で向かい合わせになり口付けを交わし、また元の位置に戻っていった。

「なんて可愛いの!素敵だわ!」
「これはこの時計塔を建造させた国王と王妃の人形だそうですわ。毎時間毎に国王は王妃に愛を囁いて、口付けを贈っているんだそうです」
「情熱的!ロマンティックねぇ」
「本当に。憧れますわね」

 ロザリンドとジュリアの会話を微笑ましく聞いていたトマスは、ふと人形を見つめると、胸に何か文字があしらわれていることに気付いた。

「二人共、国王と王妃の人形を見てくれ。胸の所」
「え?あら!何か文字があるわ!」
「左の国王は『N』、王妃には…『A』ですわね」
「ああ、ここに説明書きがあるね。ナイジェル王とアナスタシア王妃、それぞれのイニシャルが人形にあしらわれているそうだ」
「最後の文はこの文字を見つけさせたかったのかしら」

 ロザリンドはメモと万年筆を出すと、時計塔で見つけた文字を書き足した。

「聖堂で『D』『I』、黒竜門で『V』『I』、そして時計塔で『N』『A』」

『D』『I』『V』『I』『N』『A』

「ディヴィーナの丘?」
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