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深紅
しおりを挟む今日は金曜日。仕事から解放され、明日が休みだと思うだけで世界が輝いて見える。金曜日は週に1回の特別な日。
こんな日は決まって飲みに行く。前回はバーに行ったから、今日は居酒屋でもいいわね。ビールをゴクゴクと飲みたい気分でもあるしね。
駅に着いたら、家に向かうバスには乗らず、居酒屋が並ぶ道へGO!!!!
「らっしゃい!」と元気な声が私を迎える。席はもちろんカウンターよね。ビールに合うつまみはなにかしらと、上にあるメニューを見ながら考える。よし決めた!
しばらくすると、注文した品が私の前に揃う。グラスに注がれたビールの泡は今にも溢れてしまいそうだ。そんなビールのおともは、ピリ辛きゅうりのたたきと砂肝である。2杯目を飲むときは枝豆を頼もう!
心の中でいただきますと言い、ビールを一口でグラスの半分くらいまで飲んだ。冷えたビールが喉に染み透る。このために今週も頑張ったんだと、心から思える。
そして、私はつまみを食べながら周りを見る。20~30前半の男を探すのだ。
真の目的はこれ。今日の夜をともにする男をGETすること。睨まない程度に目を細め、一人一人男をじっくり観察。
カウンター席の隅にいる彼は…23.4歳くらいかしら。新社会人に見える。自分の容量がわかっていないのか、弱いのか、顔を真っ赤にしてる。可愛らしいけど、ちょっと顔がタイプじゃないわ。
扉に近いテーブル席にいる彼はタイプだけど、残念ながら飲む相手がもう既にいる。同僚かしらね。
私の左席ひとつ空けて座る彼は…30歳はいってそうね。がたいいがいいタイプっぽいわね。興奮するけど、今日の気分ではないわ。
本当は今日はもう店を入ったときから決めていた。あの一番奥のテーブル席で一人で座っている彼。20前半あたり。色白で女性のような綺麗な顔立ちをしてるところがそそる。標準よりも細身な気がするけど、白いワイシャツ越しに見えるあの筋肉。今すぐにでも、話しかけにいきたい!
けど、気になることが一つある。彼は、さっきからスマホをちらちら見てる。これは返信待ちだね。この後、連れが来るとお持ち帰りは難しいし、女だったら最悪。しばらくは様子見ね。
2杯目を飲み終わり、空き皿も枝豆を頼んだから3皿並んでいる。あれからずっと彼を見ていたけど、電話をしに外に出たと思ったら、戻ってきた彼は明らかに沈んだ顔をしている。これは、間違いなくドタキャンだね。
私は化粧が崩れていないか確認し、落ちてしまった口紅を塗り直す。準備が整えば、いざ出陣。
「こんばんは、よければお向かい座ってもいいかしら。」
私の唐突な質問に、彼は、ビックリし目を見開いたと思えば、怪しいモノを見るように目を細くした。
「今日本当は友人と待ち合わせをしていたんだけど、ドタキャンされちゃって…一人は寂しいから、よければ一緒に飲みませんか?」
さすがにきついかなと思い、彼の顔をちらっと見た。すると、先ほどの怪しいモノを見る目つきはすっと柔らかくなり、「どうぞ」と言いニコッと笑った。その笑顔が、どきっ!と私の心を打ち抜いた。
少しでも心を開いてもらえれば、こっちのもの。あとはいつも通り、男性が言われて嬉しい言葉を選び、さりげなくボディタッチもいれ、私は貴方を受け入れますという気持ちを伝えるような仕草をとる。そして、ホテルへ誘導。
ギシギシとベッドが音を鳴らし揺れる。見た目のわりには、意外と積極的で且つ激しかった。綺麗な顔立ちを見れる正常位も良いけど、彼のバックは最高ね。
私の胸の真ん中には小さなホクロがあり、彼は行為中そのホクロにキスをした。そして、ショートボブな私の髪をよく触る。柔らかな瞳で見つめる彼に、私はずっとドキドキしていた。心も身体も満たされる。こんな快感久しぶりだわ。
行為が終わると、お互い気を失うように寝る…と思いきや、彼は私にそっとくっつき、頭を撫でた。
今までの男は行為の後は帰ってしまうか、何もせずすぐ寝る人達が多かったから、私は嬉しくなってしまい、つい彼の手を握ってしまった。すると、彼も私の手を握り返した。
今日出会ったばかりなのに、この安心感はなんだろう。
こんなにも素敵な男性なのに、寝て起きたら他人になってしまうのね…いや、もとからただの他人か…
私は目を閉じた。
朝目を覚ますと、隣に彼はいなかった。テーブルには諭吉が3枚置いてある。そんな高級なホテルじゃないのに…彼はラブホ初めてなのかしらとクスッと笑い、ホテルを出た。
今日は土曜。私は休みだから、このまま家に帰って二度寝するかーと思いながら、伸びをする。
また、どこかで会えないかしら。私の王子様。
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