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白
しおりを挟むあれから数ヶ月経った。新しい医事の正社員の方は40前半でかなりベテランの人だった。小川さんは結婚をしてクリニックを辞めた。
駅の近くの建物がリニューアルして、この駅を利用する人が増えた。クリニックの前にも小さなカフェができて、私はよくその店を利用する。
何か大きな変化があったわけではないが、あの頃とは少し違う。
私はもう男性と寝ることはなくなった。土曜に休みがもらえるようになってから、また男性と寝たものの、満足いかない。どうしてもあの男がちらつく。
私も来年で25歳なのだから、そろそろ潮時だったのかもしれない。結婚したいなら真面目に考えないと。
あの出来事は私が男性と寝る習慣を辞めるいいきっかけとなった…とでも思っておこう。
合コンにも参加してみたが、男という生き物はヤリモクとゴミクズしかいない。ただヤりたいだけの男、自分の職業を自慢しそれ以外を見下す男、変な服装のうえに食べ方も汚い清潔感0男。
他にも色んな男がいたが、8割がた女性に対する配慮や気遣いができていない。そもそもなんで女性がサラダを取り分けると決まっているの?
あの人とは駅で何回か会った。きっとあの人もこの駅付近で働いているんだろうな。
私の落とし物を拾ってくれたのがあの人だったり、地下の階段から感謝するお婆さんと重そうな荷物を持ったあの人が現れたり…真面目で良い人なんだね。知ってるつもりではいたけど。
そういえば、犬を飼った。あの日の次の日つまり日曜日に飼った。犬種はフレンチブルドッグで、名前はブン太。思ってた以上に犬に心を癒されている私は、今やブン太に夢中である。
外食を減らし、自炊をよくするようになり、お昼も弁当を作るようになった。親バカ過ぎて、ブン太のご飯は少し高いカリカリを買っている。
私の生活は今までよりも少し豊かに、そして充実している。刺激的なことは減ったかもしれないが、幸福度はかなり高いはず。寂しくない、幸せだ。
「空町さん、今日もお疲れ様でした。」
「え?あ、お疲れ様です。」
院長からわざわざこっちに来て挨拶をするとは、いったい何を企んでいるんだ。
「今回のボーナス色つけといたよ。空町さんにはいつもお世話になってるからね。これからも頼りにしてます。よろしくお願いしますね。」
「あ、はい!ありがとうございます!こちらこそいつもお世話になっております!これからもよろしくお願いします!」
「うんー、今日一番の声だね。腹から出てる。」
クリニックから出て、駅に着くまでずっとボーナスを何に使うか考えてた。ブン太に高級なおやつでも買っちゃう?それか、愛犬と旅行とかできないのかな?
駅でビラ配りをしてるお兄さんに捕まった。「お姉さん、いいことでもあったのー?そんな日は外で美味しもん食べましょうよ!」元気なお兄さんの圧に負け、チラシを受け取る。リニューアルしたビルのチラシだった。
地下にバーが新しくopenしてる。たまにはいいかな…21時までに帰れば大丈夫だよね。うん、一杯だけ行こう。
私の帰り道は、大きな駅を通ってバス停に向かうのが正解だ。でも、今日はバス停ではなくビルに向かった。
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