6 / 11
白
しおりを挟むあれから数ヶ月経った。新しい医事の正社員の方は40前半でかなりベテランの人だった。小川さんは結婚をしてクリニックを辞めた。
駅の近くの建物がリニューアルして、この駅を利用する人が増えた。クリニックの前にも小さなカフェができて、私はよくその店を利用する。
何か大きな変化があったわけではないが、あの頃とは少し違う。
私はもう男性と寝ることはなくなった。土曜に休みがもらえるようになってから、また男性と寝たものの、満足いかない。どうしてもあの男がちらつく。
私も来年で25歳なのだから、そろそろ潮時だったのかもしれない。結婚したいなら真面目に考えないと。
あの出来事は私が男性と寝る習慣を辞めるいいきっかけとなった…とでも思っておこう。
合コンにも参加してみたが、男という生き物はヤリモクとゴミクズしかいない。ただヤりたいだけの男、自分の職業を自慢しそれ以外を見下す男、変な服装のうえに食べ方も汚い清潔感0男。
他にも色んな男がいたが、8割がた女性に対する配慮や気遣いができていない。そもそもなんで女性がサラダを取り分けると決まっているの?
あの人とは駅で何回か会った。きっとあの人もこの駅付近で働いているんだろうな。
私の落とし物を拾ってくれたのがあの人だったり、地下の階段から感謝するお婆さんと重そうな荷物を持ったあの人が現れたり…真面目で良い人なんだね。知ってるつもりではいたけど。
そういえば、犬を飼った。あの日の次の日つまり日曜日に飼った。犬種はフレンチブルドッグで、名前はブン太。思ってた以上に犬に心を癒されている私は、今やブン太に夢中である。
外食を減らし、自炊をよくするようになり、お昼も弁当を作るようになった。親バカ過ぎて、ブン太のご飯は少し高いカリカリを買っている。
私の生活は今までよりも少し豊かに、そして充実している。刺激的なことは減ったかもしれないが、幸福度はかなり高いはず。寂しくない、幸せだ。
「空町さん、今日もお疲れ様でした。」
「え?あ、お疲れ様です。」
院長からわざわざこっちに来て挨拶をするとは、いったい何を企んでいるんだ。
「今回のボーナス色つけといたよ。空町さんにはいつもお世話になってるからね。これからも頼りにしてます。よろしくお願いしますね。」
「あ、はい!ありがとうございます!こちらこそいつもお世話になっております!これからもよろしくお願いします!」
「うんー、今日一番の声だね。腹から出てる。」
クリニックから出て、駅に着くまでずっとボーナスを何に使うか考えてた。ブン太に高級なおやつでも買っちゃう?それか、愛犬と旅行とかできないのかな?
駅でビラ配りをしてるお兄さんに捕まった。「お姉さん、いいことでもあったのー?そんな日は外で美味しもん食べましょうよ!」元気なお兄さんの圧に負け、チラシを受け取る。リニューアルしたビルのチラシだった。
地下にバーが新しくopenしてる。たまにはいいかな…21時までに帰れば大丈夫だよね。うん、一杯だけ行こう。
私の帰り道は、大きな駅を通ってバス停に向かうのが正解だ。でも、今日はバス停ではなくビルに向かった。
0
あなたにおすすめの小説
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる