怪賊

住原かなえ

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第二話 ヨーケ島

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ガチャっ

フォックスは星空が広がる甲板に出た。
だが星を見ている暇は無い。
何かしっぽをつかまないと。
フォックスの日課は夜中の二時から三時に船内探索をすることだ。
ちゃんとメモもつけている。

俺はまだ新入りだから勝手に入ってはいけない場所もある。
だが、それを無視しないでどうする。

多少寒さを感じながら、ライトをつけ甲板を探索する。
怪しげな物が置かれていないか。
武器の量などを日々チェックしている。
この海賊の強さは異常だ。
俺はその秘密は武器にあると踏んでる。

甲板には異常なし、と。
メモに書き留める。

次は倉庫だ。
俺は立ち入りを禁止されているがもってのほかだ。こういう所に答えはあるに違いない。
あらかじめ用意しておいた倉庫用のカギを使い解錠する。
かすかに塩の匂いの混じる倉庫をライトを照らして確認する。
武器が置かれている棚を確認しいつものように武器の数と種類をメモに書き留める。
今日も特に収穫は無しか。
フォックスがそう思った時、ギシギシという音が聞こえた。
まずい。誰か来たようだ。
慌てて手元のライトを消し、倉庫の物陰に息を殺して身を潜める。
倉庫は中からの施錠はできないようになってあるのでもし倉庫が空いてることが気付かれれば一巻の終わりだ。
心拍数が上がる。
万事休すか。





だが、その足音は倉庫の前で止まる事はなく、
通り過ぎていった。

フォックスはふぅっとため息を吐く。
どうやら気付かれてはいないらしい。
恐らく倉庫を通り過ぎた奥にあるトイレにでも行ったのだろう。

しかし、油断はできない。
トイレならば必ず戻ってくるはず。
下手に動くのは得策ではない。


フォックスは思わぬ邪魔者のせいで中断してしまった倉庫の調査を手っ取り早く終わらせ、証拠の残る物がない事を確認して、倉庫を後にした。




「今日のヨーケ島戦ではいつものように全面戦争をするつもりはない。あくまで強奪だ。俺がまず上陸し辺りの様子をチェックする。指示を待ち、ジェイムス、トーマス、クリス、エマは上陸しろ。メリザとフォックスは船で待機し、いつでも出航準備万端にして待っておいてくれ。いいな?」
全員がうなずく。

フォックスは思わず舌打ちをしそうになる。
また船の番をやらされるのか。
だがそれは当然海賊としての意欲などでは無い。潜入捜査をしている以上、どのようなスタイルで戦っているのかは必要不可欠な情報になってくる。
いつも船から双眼鏡を使い見ているが、中々見えはしない。姿が見えたと思ったらそれはもう脱出後というケースがほとんどだ。


「よーしお前ら準備は整ったな?じゃあ俺に続け!」

戦闘の準備もどのようにしているのか目に入れたいところではあるが、あまり迂闊に詮索は出来ない。

船が上陸し、フォックスとメリザを除く船員の全員がヨーケ島に繰り出して行った。

この海賊は仕事が早いので、上陸直後に出航準備と船回りの警備をしなければならない。

「ねえフォックス。今日はどっちやりたい?」
メリザに警備か準備かを問われる。

いつもは船内捜索の一環として準備を選んでいたが、今日は警備を選んでみることにした。

「じゃあ任せたわよ。何かあったらすぐ連絡してね。」

メリザにそう言われ、フォックスは外に出る。

フォックスは決意する。

今日こそは。

尻尾を掴んでやる。

万が一見つかれば怪しいものを見かけたなどと言っておけばいい。

だが、できれば隠密に済ませたい。

メリザの目を盗み、気配を消して、上陸するのが第一でなければいけない。

基本的な所として、メリザが外に出てくる事は考えにくい。出航準備というのは思いの外やる事が多いのだ。わざわざ外に来て、フォックスの動向を伺いにくるとは考えにくい。

しかし、警戒ば怠るべからずだ。

それを誓い、船長達が使っていた縄ばしごを警戒をしながら降り、上陸し砂浜に足をつける。

どこで暴れているのだろうか。

だが、それにしてはやけに町が静かだ。

確か、船長の言っていた作戦では…?
そういえば俺は船長から上陸後の具体的な説明は受けていない。
船で待機するから必要無いと判断されたのか?

闇雲に探していても埒があかないので恐らく一向の進行方向であろうと予想される道を辿る。

するとその道筋に住宅街から離れたところに一つの工場が建っている事に気が付いた。

何か妙だな。

直感的にそう感じ、覗き込もうと体を折り、体勢を整える。

その時だった。

ドッカァン!

唐突に、工場から爆発音としか思えないような強烈な音がした。
 
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