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第八話 暗雲
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「ジェイムス…!?嘘だろ!」
「ジェイムス!?」
フォックスの目に間違いは無かった。
ジェイムスは前方にて爆発したのだ。
前方のマーランド軍を道連れに。
これには流石の海賊達も冷静さを失っている様だ。
この海賊たちは、例え雇われの海賊であったとしても、絆は本物だった。
それは、フォックスにでも分かった。
横にいたトーマスの目からは涙が溢れていた。
トーマスは海賊の中で一番、ジェイムスと仲良くしていた。
フォックスもその気持ちは痛い程分かった。
自身も軍隊で唯一の親友が戦死してしまった経験がある。
「おいお前ら!ジェイムスの努力を無駄にする気か!走るぞ!前へ!」
ニックが、戸惑う一行に喝を入れた。
その一声を聞くと、海賊達は、一斉にまた走り出した。
「海賊が逃げるぞ!追え!」
この海賊は強い。
フォックスが潜入していた時に何度も感じたものだった。
ただ単なる軍事力だけではなかった。
フォックスが所属していた軍隊には無いものがあった。
それは、船長の偉大さだ。
チームというのはリーダーで質が決まる。
このニックという男は、その役がぴったりだった。
国の軍隊の様に権力を振りかざす様な事はしない。
船員一人一人を心から大切にして、まとめ上げている。
今のニックの一声は、この海賊の本質を表したものだった。
偉大な船長ニックの一声で再び走り出した海賊達は、難なくマーランド軍を振り切る事に成功した。
そして、少しだけ日が傾き始めた頃に、一行は西海岸へと辿り着いた。
「おい、何だこれ!?一体ここで何があったんだ!」
そこに広がっていたのは、驚きの光景だった。
まさに、戦後、と表して良い様な状態で、軍人と思しき人間が多数倒れていた。
確かアーマン軍とスペンサー島軍がぶつかったと聞いたが、その現場には、勝者というものが存在しなかった。
そう感じた。
倒れていた人間の中にはフォックスが知っている者もいた。
コンバート作戦にて大活躍したフリッジ大尉、インダーランド戦争の英雄ギルド、クワイエット広場のクーデターを見事に阻止し、軍の頭脳とも言われるカーター、様々な人間がそこに倒れていた。
これだけの戦力をスペンサー島軍は失ってしまったのか。
こんな潰し合いで。
いや、違う。
フォックスは自らの考えを否定する。
なぜなら、そこに、ヨーケ島の英雄、ロルドが倒れていたからだ。
「上陸してすぐさま、西海岸の戦いに巻き込まれたんだ、俺達の援軍は…!」
その現場にもう戦える様な人間は見当たらなかった。
皆が肩を落とす。
唯一の希望の星であったヨーケ島ダッケ島軍が敗れてしまった。
また、フォックスにとってはそれだけでなく、マーランド島軍を撃退する要員が大幅に減った事が痛かった。
アーマン大佐の反乱よりも、先にマーランド島軍を撃退する方が優先であるというのに。
「仕方ない。だが、武器だけはある。自分で使えそうな武器をここから選べ!」
ニックの判断は正しい。
落胆している暇など無い。
少しでも状況が好転する様に動かなければ、何も変わらない。
フォックスは、フリッジ大尉が所持していた自動小銃を手にした。
その時、ふと無線機が目に入る。
これは使えるのでは。
無線機を使って、味方を装い、王宮の森での戦況を聞く事も可能であり、両軍が西海岸へと援軍を送る事も阻止できる。
その旨をニックに話すと、ニックは無言で頷き、クリスに命じた。
クリスはこの手の工作が得意らしい。
固唾を飲んでクリスを見守る。
「こちらアーマン軍、こちらアーマン軍。アーマン大佐はいますか。」
「ああ俺だ。無事だったのか。」
無線機から聞き慣れたアーマン大佐の声が聞こえる。
「ええ何とか。スペンサー島軍の制圧に成功しました。」
「よくやった!」
「そちらの戦況はどうなったのですか?」
「ここで全面戦争は得策では無いと考え、撤退した。現在は南部のメイランド高原にて、軍を立て直している。」
フォックスはそれを聞いて胸を撫で下ろす。
これ以上潰し合えば、マーランド島軍と戦う所の話では無い。
「ところで、我々はどうすれば良いでしょうか。」
「お前らには重大な仕事を任せる。よく聞け。我々は先程、海賊軍を取り囲む事には成功したが、取り逃してしまった。だが、それを上手く映像に収めたんだ。」
「つまりそれは…?」
「そうさ。まるで海賊達を倒したかの様に撮れている。そして先刻、その映像をキートソン帝国に送ったところ、まんまと信用して、我々の味方をすると宣言したのだ。」
「じゃあここに…?」
「ああ。西海岸に奴らは来る。そこできっちりと失礼の無い様に迎え入れ、我々のいるメイランド高原に連れてきてくれ。いいな?」
「了解です!」
クリスが無線を切る。
一同は顔を見合わせる。
そして、全員が自然と海の方へと顔を向ける。
いた。
キートソン帝国だ!
「急いで西海岸から撤退するぞ!」
「ジェイムス!?」
フォックスの目に間違いは無かった。
ジェイムスは前方にて爆発したのだ。
前方のマーランド軍を道連れに。
これには流石の海賊達も冷静さを失っている様だ。
この海賊たちは、例え雇われの海賊であったとしても、絆は本物だった。
それは、フォックスにでも分かった。
横にいたトーマスの目からは涙が溢れていた。
トーマスは海賊の中で一番、ジェイムスと仲良くしていた。
フォックスもその気持ちは痛い程分かった。
自身も軍隊で唯一の親友が戦死してしまった経験がある。
「おいお前ら!ジェイムスの努力を無駄にする気か!走るぞ!前へ!」
ニックが、戸惑う一行に喝を入れた。
その一声を聞くと、海賊達は、一斉にまた走り出した。
「海賊が逃げるぞ!追え!」
この海賊は強い。
フォックスが潜入していた時に何度も感じたものだった。
ただ単なる軍事力だけではなかった。
フォックスが所属していた軍隊には無いものがあった。
それは、船長の偉大さだ。
チームというのはリーダーで質が決まる。
このニックという男は、その役がぴったりだった。
国の軍隊の様に権力を振りかざす様な事はしない。
船員一人一人を心から大切にして、まとめ上げている。
今のニックの一声は、この海賊の本質を表したものだった。
偉大な船長ニックの一声で再び走り出した海賊達は、難なくマーランド軍を振り切る事に成功した。
そして、少しだけ日が傾き始めた頃に、一行は西海岸へと辿り着いた。
「おい、何だこれ!?一体ここで何があったんだ!」
そこに広がっていたのは、驚きの光景だった。
まさに、戦後、と表して良い様な状態で、軍人と思しき人間が多数倒れていた。
確かアーマン軍とスペンサー島軍がぶつかったと聞いたが、その現場には、勝者というものが存在しなかった。
そう感じた。
倒れていた人間の中にはフォックスが知っている者もいた。
コンバート作戦にて大活躍したフリッジ大尉、インダーランド戦争の英雄ギルド、クワイエット広場のクーデターを見事に阻止し、軍の頭脳とも言われるカーター、様々な人間がそこに倒れていた。
これだけの戦力をスペンサー島軍は失ってしまったのか。
こんな潰し合いで。
いや、違う。
フォックスは自らの考えを否定する。
なぜなら、そこに、ヨーケ島の英雄、ロルドが倒れていたからだ。
「上陸してすぐさま、西海岸の戦いに巻き込まれたんだ、俺達の援軍は…!」
その現場にもう戦える様な人間は見当たらなかった。
皆が肩を落とす。
唯一の希望の星であったヨーケ島ダッケ島軍が敗れてしまった。
また、フォックスにとってはそれだけでなく、マーランド島軍を撃退する要員が大幅に減った事が痛かった。
アーマン大佐の反乱よりも、先にマーランド島軍を撃退する方が優先であるというのに。
「仕方ない。だが、武器だけはある。自分で使えそうな武器をここから選べ!」
ニックの判断は正しい。
落胆している暇など無い。
少しでも状況が好転する様に動かなければ、何も変わらない。
フォックスは、フリッジ大尉が所持していた自動小銃を手にした。
その時、ふと無線機が目に入る。
これは使えるのでは。
無線機を使って、味方を装い、王宮の森での戦況を聞く事も可能であり、両軍が西海岸へと援軍を送る事も阻止できる。
その旨をニックに話すと、ニックは無言で頷き、クリスに命じた。
クリスはこの手の工作が得意らしい。
固唾を飲んでクリスを見守る。
「こちらアーマン軍、こちらアーマン軍。アーマン大佐はいますか。」
「ああ俺だ。無事だったのか。」
無線機から聞き慣れたアーマン大佐の声が聞こえる。
「ええ何とか。スペンサー島軍の制圧に成功しました。」
「よくやった!」
「そちらの戦況はどうなったのですか?」
「ここで全面戦争は得策では無いと考え、撤退した。現在は南部のメイランド高原にて、軍を立て直している。」
フォックスはそれを聞いて胸を撫で下ろす。
これ以上潰し合えば、マーランド島軍と戦う所の話では無い。
「ところで、我々はどうすれば良いでしょうか。」
「お前らには重大な仕事を任せる。よく聞け。我々は先程、海賊軍を取り囲む事には成功したが、取り逃してしまった。だが、それを上手く映像に収めたんだ。」
「つまりそれは…?」
「そうさ。まるで海賊達を倒したかの様に撮れている。そして先刻、その映像をキートソン帝国に送ったところ、まんまと信用して、我々の味方をすると宣言したのだ。」
「じゃあここに…?」
「ああ。西海岸に奴らは来る。そこできっちりと失礼の無い様に迎え入れ、我々のいるメイランド高原に連れてきてくれ。いいな?」
「了解です!」
クリスが無線を切る。
一同は顔を見合わせる。
そして、全員が自然と海の方へと顔を向ける。
いた。
キートソン帝国だ!
「急いで西海岸から撤退するぞ!」
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