前世の記憶は役立たず!ーエルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎるー

藤 野乃

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アルシア移住

緊急クエストです。

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 なんとなく、帰宅するのはやめてギルドに行くことにした。
 人通りが多い区域に入るとシスターが三人、数人の子供を連れて歩いてるのを見掛けた。
 フィアン神教の方々だね。
 教義としては何柱かいる神様を統べている偉い神様とされているフィアン神を奉っている。
 郊外に教会とそこに併設された、大きい孤児院がある。

 冒険者がそこそこ多いこの領は、中立地帯であるハグイェア大森林へ行くヒトが多い。
 ダンジョンや鉱床、遺跡もあるから。

 アルシア側からの唯一のルートなので、宿屋や飲食店の多さは需要があるからだ。
 メアリによると、それなりに命を落とす冒険者も多く……そういう理由で、孤児院も大きいらしい。

 一時預かりの子もいれば、捨て子もいる。
 そのまま十三歳まで孤児院にいる子もいる。
 寄付金集めに出てたんだろうか。
 ここは結構景気のいい領だから、領主からも補助的な寄付があると思う。
 子供達も質素な身なりではあるけれど、薄汚れてはいない。
 辛気臭い顔はしてるけど……。

 ちなみに教会では治癒はしていない。
 簡単な呪いの解呪や、聖属性の植物を育てて資金にしている。
 治癒士は光属性単体に特化してるヒトの中でも数が少なくて狭き門なのだけど、平民でもチャンスのある部門でもある。

 ヒトの魔臓は一個か二個。
 多分遺伝なので平民はだいたい一個。
 当然二個のヒトの方が魔力容量が多くて威力のある、又は持続性のある魔法を使えるんだけど。
 魔臓数に関わらず水、風と二属性持ってるヒトが一番多い。
 稀に三属性持ってるヒトもいる。

 で。

 極稀に属性が1つしかないヒトが居る。

 単属性のヒトは魔臓一個の場合が多くて、単属性にしか扱えない魔法もそれなりに数がある。
 治癒士もその一つで光特化。

 魔臓一個の平民にもチャンスはあるというわけだ。
 もちろん、才能次第なので狭き門なのは変わらないんだけどね。

 エルフは魔臓が核融合炉みたいなもので、とにかく魔力容量が大きい。
 しかも長命なので、属性が特化型レベルに熟練する時間がある。
 得意不得意はあるものの多属性が特化型であるので、とにかく強い。
 エルフ以外がエルフを排除する場合、倒す殺すではなくて──討伐対象になっちゃうのよね。

 災害モンスターと同じ扱いよ。
 私は全属性特化してる──なにしろ15127歳だから。
 15873歳だった気もするけど、誤差よ。

 長生き過ぎて魔法の練習する時間いっぱいあったから、全部使える。
 年の功ってやつよ。

(辺境にはまだお世話になるし、いいエルフキャンペーンで孤児院に寄付しに行こうかな……)

 ──さて、久しぶりのギルドは相変わらず賑わっていた。
 併設された食堂も混んでいる。
 依頼を達成した日は、お酒が半額になるんだって。
 なので、お仕事の報告したヒトはそのまま食堂で酒盛りするのが、セオリーだ。
 エルフ姿で数回来ているので、以前ほどアウェイ感はない。

 チェシャは最近出世して受け付けスタッフのリーダーになったので窓口にはおらず、受け付けカウンターのすぐ後ろで最終確認の事務作業をしているらしい。

 私をチラっと顔を向けたスタッフがチェシャに声をかけたのが見えた。
 一緒に別室に行って、依頼を見たり報告する流れになっている。

「やっと依頼を受けられるようになったんですね! さ、カードかざしてくださいな」

 いつもにも増してふわっふわだ。

「ふわふわだねえ」

「あ、わかりますー? 昨日毛玉取りに行って、トリートメントしてきたんです!」

 ──最近オープンした個人店に行ってきたんです!
 チェーン店とは全然違うんですよぉ。
 ちょっと高いんですけど、トリートメントが最高で!
 ヒゲの枝毛ケアも出来るし気に入っちゃって。
 フルコースやったら銀貨三枚かかっちゃうけど、ホントにいいんですよー。
 チェーン店の【毛玉屋】は白銅貨一枚だけど、トリートメントとかオプション無いですからね。これからはサロン1択です!

 チェシャは熱く語りだした。

 毛玉屋チェーンは1000円カットみたいなやつね。
 大森林から帰ってきたら、獣人さんはまずそこに行くんですって。
 ダニとかノミとか、人間よりくっついてくる可能性高いから森に行ったらとりあえず毛玉屋!らしい。

 大森林への門近くに、大きい毛玉屋があるのはそういう訳なのね。
 みんながみんな衛生魔法持ってる訳じゃないし、納得。

 端末で依頼を見ていく。
 ナンバーと概要が記載された簡易なリストが、見られるようになっている。
 詳細は職員のチェシャが持っている方の端末でしか見られない。
 常時数百件の依頼があるので、のんびり眺めていく。

 薬草採取、パス。
 迷子のコケットの捜索。
 コケットペットで飼ってるのかしら?パス。
 お婆ちゃんの世話3日泊まり込み、パス。
 ビミョーなのが多い。
 どこのギルドも大半がこういう依頼なんだけどね。

「実はお受けしていただきたい案件がありまして」

 チェシャが真面目な顔をして言ってきた。


 強制クエストではないんですけど、迷子の捜索依頼が出てまして……
 人間です、九歳の男の子。
 行方不明になったのは昨日の午後で、依頼はさっき受理されたところなんです。
 昨日街の学校で郊外学習があって、ハグイェアの方に行ったんですよ。
 いえ、森の手前のちいさい林ですね。
 そうです、手前に原っぱと林があって。
 運悪く……滅多に無い事なんですが、森からハグイェアウルフが出てきちゃって。
 それはすぐ森の側に配置されてた兵士に討伐されたんですけど。
 そのクラスにいた男の子、転移持ちだったらしくて。
 びっくりして転移しちゃったみたいで。
 周辺と森の中を昨日から第五騎士団の皆さんや有志の方々が捜索してるんですけど、見つからなくて。
 先ほど親御さんがギルドにも依頼出してきたんです。
 報酬は金貨一枚。
 ハグイェアの広さとか危険度、捜索範囲考えたら割に合うか微妙なところなんですけど。

「死んでたらエルフの私が殺したとか言われない?」

「あー…………」

 依頼は受けることにしたけれど、遺体だった場合一旦戻ってきてチェシャに報告。
 チェシャと森に行って遺体を発見したことにして回収、と言うことになった。
 ほんとね、エルフって言い掛かりつけられやすいのよ。

「ここで着替えていい?」

「どうぞ。私、手続き済ませてきます」

 ズボン、ロングブーツ、ローブだけだからすぐ済む。
 着替え終わってポニーテールにすれば準備完了。
 チェシャが通行証を発行して、戻ってきた。

「ジューンさん、聞き忘れてましたけど国民証に特記事項とか制約ありますか?」

「王子の紋章ついてる」

「えー!?すごい!それ書いておきますね。門番に提示求められたら国民カード提示してくださいね」

 ざっくりとした地図を渡され、私は郊外の大森林入口まで向かった。

 ギルドから早馬で二十分くらいかな。
 馬を借りて行こう。
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