41 / 92
アルシア移住
魔馬キャンディ
しおりを挟む
私はメアリに一ヶ月ほど王都に行く事を告げ、準備に取り掛かった。
準備と言っても、コケット村の小さな雑貨店でタマゴサンドの大量注文しただけだけど。
マルシェの翌日、すぐにメイの姿でコケット村に行った私はパン屋さんを探した。
村の人に尋ねると、そんなものはない、あるのは雑貨屋だけだと言う。
あのお姉さん、確かにパン屋とは言ってなかったかも?と思い返しつつ、教えて貰った雑貨屋さんへ。
いかにもお母さんって感じのマダムが店番をしていたので、おそるおそるサンドイッチはあるかと聞いてみた。
「ああー、マルシェのタマゴサンドのお客さんかい。早速来たんだね」
どうやら情報共有されているみたい。
「実は、私の主がいたくタマゴを気に入っておりまして…」
メイの設定は──偏食気味の主に言い付けられてタマゴサンドを大量購入しに来ているメイド、というものだ。
「注文は受けてるけども、いたみやすいよ? 大丈夫なのかい?」
マダムが心配そうに説明を始めた。
「当日中に食べないならオススメ出来ないよ」
私は時間停止を付与した箱をいそいそと取り出した。
この為だけに急遽作ったマジックボックスだ。
「こちらに時間停止型の保存箱があるんです。容量はさほど無いのですが、あのサンドイッチなら三百個は入ると思います。とにかく数が欲しいので」
「あれまあ。そんな高価な? お貴族様のおつかいだったのかい」
いい感じに誤解してくれたので、私は曖昧に言葉を濁し微笑んだ。
小さいわりに銅貨五枚。
中々いいお値段のするタマゴサンドだが、何しろアルセンコケットだから仕方ない。
「そうだねぇ、出荷しなかったタマゴでこしらえてるもんで、毎日作れる数が違うんだけど。これなら出来た分だけ都度入れていっても問題なさそうだね」
「はい。箱が満杯になれば知らせが来るよう設定してありますので、私が回収に参ります」
マダムは注文数に驚きつつも、喜んで請け負ってくれた。
私は前金で金貨十五枚を支払い、ついでに店頭にあったタマゴサンドを三つ買って帰ってきた。
これでタマゴサンド問題は解消されたので、心配事が減って大満足だ。
あの保存箱は一旦入れたら私以外は取り出せないし、安心安全。
(ああ、本当に美味しい!自分で作ってもこうはいかないわ)
さすが売り物、さすがアルセンコケット。
私は二つめのタマゴサンドを食べながら、機嫌よく地図を眺めた。
セバ爺からの事前情報によると、乗り合い馬車を乗り継いで王都まで行く場合。
なんと、二十日以上かかるようだ。
途中で馬を変えて走らせる伝令の早馬だと、七日前後で走破できるらしい。
(キャンディならもっと短い日程で行けそうね。うん、そうしよう)
王都までは大きな街が二つあるけれど、寄らないで一気に行くのが良さそうだ。
野営が出来る地点は、セバ爺に地図に印をつけてもらっている。
野営と言っても魔導テントを張って、中で転移して家に戻れば良いだけだ。
──王族である団長は、王都と行き来出来る個人の転移陣を屋敷に設置してるらしいけれど。
個人限定の転移陣らしく、月に数回は王都に戻ってるって話だ。
転移陣というものは、大量の魔力を注入して専門家が描くもの。
その内包魔力を消費して、転移が発動する仕組みだ。
なので、回数制限がある。
製作者の魔方陣師が魔力を再注入すれば、陣の延命は可能だけど、それも数回が限度。
いずれ陣自体が磨耗して、壊れる。
個人限定の転移陣だと陣の消費魔力が少ないから、ちょっとコスパは良いのだ。
(どちらにせよ、高額なものだから庶民には関係の無いものよ)
数人を一度に転移させるような魔方陣だと、消費魔力が莫大になるので使い捨て陣が多い。
(人間の場合、転移魔法は距離が基準になってるから、一度の転移で行けるのは限界があるのよね)
私のように距離に関係なく、座標を基準にした転移する事は出来ないらしい。
そういう特徴もあって、人間が描ける転移陣には限界距離がある。
多分ここ、辺境のギルドにも、緊急用の転移陣はあると思うけれど。
チェシャはギルド所有の馬を乗り変えて、特急コースで行くって言っていた。
私は道中のどこでキャンディの休憩を取って野営するか、を決めて地図に印を付けた。
大きな街近辺では、転移ポイントも決めておこうと思ってる。
庭で大量の牧草を育てて、キャンディのご飯も確保。
野営の時は地面に生やしてもいいけど、休憩中のちょい食べには刈った牧草でいい。
キャンディは水遊びが好きだから、一時間くらいは休憩をする予定。
セバ爺のところに行くと、キャンディの支度は出来ていてルンルンで外に出されていた。
「嬢ちゃん、キャンディだがな、見てみろ」
セバ爺がたてがみを指す。
額の白星以外は栗毛だったキャンディのたてがみが黒っぽい。
「あら? 黒っぽい?」
「魔馬だからな、色変わりの可能性もあるなぁ」
「私、鑑定してみるわ。得意だから任せて」
▶魔馬サエウス(先祖返り)
「※未名称」通称キャンディ
6歳牡馬(未去勢)
草食
健康 良好
魔力 特大(未覚醒)
属性 闇、雷
概要 闘争心が強く、残忍で気の荒いことで知られる馬型魔物サエウスのほぼ純血。
代々は温厚な馬からの先祖返りであり、気性は人間に育てられた為、魔馬としては穏やか。
「……健康みたいよ?人間に育てられたから魔馬としては穏やかなんだってー」
「そうかそうか、健康ならええわ」
セバ爺に別れを告げキャンディを駆って王都に向かう街道を、道が狭くなるまでハイスピードで飛ばしていく。
サエウスかぁ。イヴォークで有名な【人喰い幽馬伝説】の元になった魔物よねぇ。
馬は草食だから肉は食べないけど、アイツらほんと気性荒いもんね、人間を噛みちぎるとかは余裕でやりそう。
色は黒っぽくて、蹄から黒煙が立ち上ってるように見える魔物だ。
言われてみたら、キャンディも蹄からユラユラと魔力が漏れ出てる。
まあ、キャンディはキャンディだから良いんだけれども。
問題はさ、通称キャンディって所よ。
この魔馬、名付けを受け入れていない……。
準備と言っても、コケット村の小さな雑貨店でタマゴサンドの大量注文しただけだけど。
マルシェの翌日、すぐにメイの姿でコケット村に行った私はパン屋さんを探した。
村の人に尋ねると、そんなものはない、あるのは雑貨屋だけだと言う。
あのお姉さん、確かにパン屋とは言ってなかったかも?と思い返しつつ、教えて貰った雑貨屋さんへ。
いかにもお母さんって感じのマダムが店番をしていたので、おそるおそるサンドイッチはあるかと聞いてみた。
「ああー、マルシェのタマゴサンドのお客さんかい。早速来たんだね」
どうやら情報共有されているみたい。
「実は、私の主がいたくタマゴを気に入っておりまして…」
メイの設定は──偏食気味の主に言い付けられてタマゴサンドを大量購入しに来ているメイド、というものだ。
「注文は受けてるけども、いたみやすいよ? 大丈夫なのかい?」
マダムが心配そうに説明を始めた。
「当日中に食べないならオススメ出来ないよ」
私は時間停止を付与した箱をいそいそと取り出した。
この為だけに急遽作ったマジックボックスだ。
「こちらに時間停止型の保存箱があるんです。容量はさほど無いのですが、あのサンドイッチなら三百個は入ると思います。とにかく数が欲しいので」
「あれまあ。そんな高価な? お貴族様のおつかいだったのかい」
いい感じに誤解してくれたので、私は曖昧に言葉を濁し微笑んだ。
小さいわりに銅貨五枚。
中々いいお値段のするタマゴサンドだが、何しろアルセンコケットだから仕方ない。
「そうだねぇ、出荷しなかったタマゴでこしらえてるもんで、毎日作れる数が違うんだけど。これなら出来た分だけ都度入れていっても問題なさそうだね」
「はい。箱が満杯になれば知らせが来るよう設定してありますので、私が回収に参ります」
マダムは注文数に驚きつつも、喜んで請け負ってくれた。
私は前金で金貨十五枚を支払い、ついでに店頭にあったタマゴサンドを三つ買って帰ってきた。
これでタマゴサンド問題は解消されたので、心配事が減って大満足だ。
あの保存箱は一旦入れたら私以外は取り出せないし、安心安全。
(ああ、本当に美味しい!自分で作ってもこうはいかないわ)
さすが売り物、さすがアルセンコケット。
私は二つめのタマゴサンドを食べながら、機嫌よく地図を眺めた。
セバ爺からの事前情報によると、乗り合い馬車を乗り継いで王都まで行く場合。
なんと、二十日以上かかるようだ。
途中で馬を変えて走らせる伝令の早馬だと、七日前後で走破できるらしい。
(キャンディならもっと短い日程で行けそうね。うん、そうしよう)
王都までは大きな街が二つあるけれど、寄らないで一気に行くのが良さそうだ。
野営が出来る地点は、セバ爺に地図に印をつけてもらっている。
野営と言っても魔導テントを張って、中で転移して家に戻れば良いだけだ。
──王族である団長は、王都と行き来出来る個人の転移陣を屋敷に設置してるらしいけれど。
個人限定の転移陣らしく、月に数回は王都に戻ってるって話だ。
転移陣というものは、大量の魔力を注入して専門家が描くもの。
その内包魔力を消費して、転移が発動する仕組みだ。
なので、回数制限がある。
製作者の魔方陣師が魔力を再注入すれば、陣の延命は可能だけど、それも数回が限度。
いずれ陣自体が磨耗して、壊れる。
個人限定の転移陣だと陣の消費魔力が少ないから、ちょっとコスパは良いのだ。
(どちらにせよ、高額なものだから庶民には関係の無いものよ)
数人を一度に転移させるような魔方陣だと、消費魔力が莫大になるので使い捨て陣が多い。
(人間の場合、転移魔法は距離が基準になってるから、一度の転移で行けるのは限界があるのよね)
私のように距離に関係なく、座標を基準にした転移する事は出来ないらしい。
そういう特徴もあって、人間が描ける転移陣には限界距離がある。
多分ここ、辺境のギルドにも、緊急用の転移陣はあると思うけれど。
チェシャはギルド所有の馬を乗り変えて、特急コースで行くって言っていた。
私は道中のどこでキャンディの休憩を取って野営するか、を決めて地図に印を付けた。
大きな街近辺では、転移ポイントも決めておこうと思ってる。
庭で大量の牧草を育てて、キャンディのご飯も確保。
野営の時は地面に生やしてもいいけど、休憩中のちょい食べには刈った牧草でいい。
キャンディは水遊びが好きだから、一時間くらいは休憩をする予定。
セバ爺のところに行くと、キャンディの支度は出来ていてルンルンで外に出されていた。
「嬢ちゃん、キャンディだがな、見てみろ」
セバ爺がたてがみを指す。
額の白星以外は栗毛だったキャンディのたてがみが黒っぽい。
「あら? 黒っぽい?」
「魔馬だからな、色変わりの可能性もあるなぁ」
「私、鑑定してみるわ。得意だから任せて」
▶魔馬サエウス(先祖返り)
「※未名称」通称キャンディ
6歳牡馬(未去勢)
草食
健康 良好
魔力 特大(未覚醒)
属性 闇、雷
概要 闘争心が強く、残忍で気の荒いことで知られる馬型魔物サエウスのほぼ純血。
代々は温厚な馬からの先祖返りであり、気性は人間に育てられた為、魔馬としては穏やか。
「……健康みたいよ?人間に育てられたから魔馬としては穏やかなんだってー」
「そうかそうか、健康ならええわ」
セバ爺に別れを告げキャンディを駆って王都に向かう街道を、道が狭くなるまでハイスピードで飛ばしていく。
サエウスかぁ。イヴォークで有名な【人喰い幽馬伝説】の元になった魔物よねぇ。
馬は草食だから肉は食べないけど、アイツらほんと気性荒いもんね、人間を噛みちぎるとかは余裕でやりそう。
色は黒っぽくて、蹄から黒煙が立ち上ってるように見える魔物だ。
言われてみたら、キャンディも蹄からユラユラと魔力が漏れ出てる。
まあ、キャンディはキャンディだから良いんだけれども。
問題はさ、通称キャンディって所よ。
この魔馬、名付けを受け入れていない……。
30
あなたにおすすめの小説
ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?
浅野明
ファンタジー
ある日突然天使に拉致された篠宮蓮、38歳。ラノベは好きだが、異世界を夢見るお年頃でもない。だというのに、「勇者召喚」とやらで天使(自称)に拉致られた。周りは中学生ばっかりで、おばちゃん泣いちゃうよ?
しかもチートがもらえるかどうかはガチャの結果次第らしい。しかし、なんとも幸運なことに何万年に一度の大当たり!なのにチートがない?もらえたのは「幸運のアイテム袋」というアイテム一つだけ。
これは、理不尽に異世界転生させられた女性が好き勝手に生きる物語。
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~
Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。
うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。
でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。
上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。
——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
異世界カントリーライフ ~妖精たちと季節を楽しむ日々~
楠富 つかさ
ファンタジー
都会で忙しさに追われる日々を送っていた主人公は、ふと目を覚ますと異世界の田舎にいた。小さな家と畑、そして妖精たちに囲まれ、四季折々の自然に癒されるスローライフが始まる。時間に縛られず、野菜を育てたり、見知らぬスパイスで料理に挑戦したりと、心温まる日々を満喫する主人公。現代では得られなかった安らぎを感じながら、妖精たちと共に暮らす異世界で、新しい自分を見つける物語。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる