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第一章 『始まりの一ヶ月』
裏14.『剣戟の行方は』
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「はぁっ!!」
騎士剣が黒装束の裾を切り裂く、続いて鉄剣は攻撃でガラ空きになった胴へ刃を振り下ろす。
「おらぁ!!」
それをライドは剣の鞘で受け止める。鞘はミシミシと音を立て、ライドを守る。ライドはそれを利用し、騎士剣の刃をクロードへ向ける。クロードは危険を察知し、軽い身のこなしで受け流す。
「はぁ……はぁ……そろそろ疲れてきたんじゃないかい? 大人しく捕まればこれ以上疲労は溜まらないと思うけど」
ライドの提案にクロードは剣撃で答える。
「はぁ……疲れているのは……貴様の方だろ。だが、多少なりとも疲労感があるからな。そろそろ終わらせてやるよ!」
「くっ……!」
先程から剣を振ることを繰り返しているが、相手に大きな傷を与えることはできていない。これではジリ貧だ。それはお互いに理解している。
だからそろそろ大技を繰り出すほかないのだ。
「僕の力、見せてあげるよ。ーー九の太刀『緋雷針』!」
ライドが後退し、次なる剣技の名を叫ぶとライドの騎士剣は緋く染まり、小さな電流が漂っている。そしてその騎士剣を前を突き出す。すると、剣の先から緋色の鋭利な雷が放たれた。まるで弾丸のような雷だ。
このままではクロードの胴を貫くだろう。しかし、クロードもただ見てるだけではなかった。
「ようやく貴様の本気が見れるのか! ならば、オイラもそれに答えよう! ーー九の太刀『緋雷針』!」
「ーーっ!」
クロードも驚くことにライドと同じ剣技を使ってきた。それはあるはずがないことなのだ。いや、あってはならないことだ。
しかも完成度は高い。綺麗な緋色をしている。ライドよりも高度な剣技だ。これこそが、威力と技量のぶつかり合いだろう。
「なぜだ! なんで君が……お前がその剣技を!」
瞬間、お互いの剣技がぶつかり合う。消滅するかと思われたが、それは起こらなかった。この剣技は緋色の弾丸のようになっている。
つまり、弾丸どうしがぶつかり合うのだ。
となると、どちらも弾丸の性質上、弾道から外れる。
しかし、ライドの剣技の方が一枚上手だった。ライドの剣技はクロードが放った剣技に比べると弾道からは大きく外れていない。
「こんなもの、オイラの剣で弾き返して……っ!」
クロードの鉄剣がライドの剣技に当たると、鉄剣はみるみるうちに溶け出し、クロードの脇腹を射抜いた。
ライドの方でも同じことが起きると思われたが、ライドの足元に弾痕が作られるのみでそれは威力を失くしていた。
「がはっ! 情けないな。こんなことで退く形に……なるとは」
クロードは今すぐにでも意識を失いそうなほどの量の血をこぼしている。
命が少しずつこぼれ落ちる。その感覚はクロードの人生上、初めてのことだった。
ライドのことを仕留めるつもりで出向いたはずが逆に仕留められそうになるという恥辱も初めて受けた。
「ライド・ラバン……レヴァノール。いつか必ず、貴様を仕留めにオイラは現れる。……そのときまで己の剣技を磨いておくんだな」
クロードはそう吐き捨てるように言うと、傷を押さえつつ、飛び去った。
対して、ライドはクロードの言葉なんか一つも聞いていなかった。いや、聞けるほど余裕がなかったのだ。
「なんで、アイツが、あの剣技を……」
放心状態になったライドは俯き、騎士剣もほっぽり出したままだった。それほどライドには信じられない出来事だったのだ。
「あの、剣技、…………ーー師匠」
その一言を最後にライドの意識は途切れた。ライドもクロードほどではないが、傷を負っていた。血は止まっているがそれを凌駕するほどの疲労感。
ライドはただ、王都の外で行われている戦いを待つだけになってしまった。
騎士剣が黒装束の裾を切り裂く、続いて鉄剣は攻撃でガラ空きになった胴へ刃を振り下ろす。
「おらぁ!!」
それをライドは剣の鞘で受け止める。鞘はミシミシと音を立て、ライドを守る。ライドはそれを利用し、騎士剣の刃をクロードへ向ける。クロードは危険を察知し、軽い身のこなしで受け流す。
「はぁ……はぁ……そろそろ疲れてきたんじゃないかい? 大人しく捕まればこれ以上疲労は溜まらないと思うけど」
ライドの提案にクロードは剣撃で答える。
「はぁ……疲れているのは……貴様の方だろ。だが、多少なりとも疲労感があるからな。そろそろ終わらせてやるよ!」
「くっ……!」
先程から剣を振ることを繰り返しているが、相手に大きな傷を与えることはできていない。これではジリ貧だ。それはお互いに理解している。
だからそろそろ大技を繰り出すほかないのだ。
「僕の力、見せてあげるよ。ーー九の太刀『緋雷針』!」
ライドが後退し、次なる剣技の名を叫ぶとライドの騎士剣は緋く染まり、小さな電流が漂っている。そしてその騎士剣を前を突き出す。すると、剣の先から緋色の鋭利な雷が放たれた。まるで弾丸のような雷だ。
このままではクロードの胴を貫くだろう。しかし、クロードもただ見てるだけではなかった。
「ようやく貴様の本気が見れるのか! ならば、オイラもそれに答えよう! ーー九の太刀『緋雷針』!」
「ーーっ!」
クロードも驚くことにライドと同じ剣技を使ってきた。それはあるはずがないことなのだ。いや、あってはならないことだ。
しかも完成度は高い。綺麗な緋色をしている。ライドよりも高度な剣技だ。これこそが、威力と技量のぶつかり合いだろう。
「なぜだ! なんで君が……お前がその剣技を!」
瞬間、お互いの剣技がぶつかり合う。消滅するかと思われたが、それは起こらなかった。この剣技は緋色の弾丸のようになっている。
つまり、弾丸どうしがぶつかり合うのだ。
となると、どちらも弾丸の性質上、弾道から外れる。
しかし、ライドの剣技の方が一枚上手だった。ライドの剣技はクロードが放った剣技に比べると弾道からは大きく外れていない。
「こんなもの、オイラの剣で弾き返して……っ!」
クロードの鉄剣がライドの剣技に当たると、鉄剣はみるみるうちに溶け出し、クロードの脇腹を射抜いた。
ライドの方でも同じことが起きると思われたが、ライドの足元に弾痕が作られるのみでそれは威力を失くしていた。
「がはっ! 情けないな。こんなことで退く形に……なるとは」
クロードは今すぐにでも意識を失いそうなほどの量の血をこぼしている。
命が少しずつこぼれ落ちる。その感覚はクロードの人生上、初めてのことだった。
ライドのことを仕留めるつもりで出向いたはずが逆に仕留められそうになるという恥辱も初めて受けた。
「ライド・ラバン……レヴァノール。いつか必ず、貴様を仕留めにオイラは現れる。……そのときまで己の剣技を磨いておくんだな」
クロードはそう吐き捨てるように言うと、傷を押さえつつ、飛び去った。
対して、ライドはクロードの言葉なんか一つも聞いていなかった。いや、聞けるほど余裕がなかったのだ。
「なんで、アイツが、あの剣技を……」
放心状態になったライドは俯き、騎士剣もほっぽり出したままだった。それほどライドには信じられない出来事だったのだ。
「あの、剣技、…………ーー師匠」
その一言を最後にライドの意識は途切れた。ライドもクロードほどではないが、傷を負っていた。血は止まっているがそれを凌駕するほどの疲労感。
ライドはただ、王都の外で行われている戦いを待つだけになってしまった。
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