あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第十八話 最強の精霊使い走る その2

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そこは、十マイトル四方の岩壁に囲まれた、“休憩室”と呼ばれるには殺風景すぎる部屋だったが、命を賭した冒険者にとっては掛け替えの無い命の洗濯場とも言える場所だった。
 場所によっては魔物が沸きやすい所もあって一概には言えないが、地下六階のここは魔物も沸かず、他から来てたむろする事はあるが、冒険者にとっては重宝されている場所だ。
 私にとっても、仮面夫婦の夫マッスルにとっても懐かしすぎる場所だった。
 時間がないためすぐに出発する予定だが、久しぶりのダンジョンで少しだけ疲れたのか、私も少し呼吸が荒い。
 マッスルは座り込んでしまっている。コイツは筋肉はつけても、それは早く走るため、もしくは長く走るための物では無い。
 ここまで先頭を走っていたJJと名乗る少年は、まるで何事も無かったかのように、ちょっと様子を見てくると、先行して斥候に出た。
「体力がハンパないわね、十歳の子なのに」
 私ははマッスルに話しかけたつもりだったが、マッスルはうつむいて息を整えるので精一杯で、私の話を聞いていなかった。ちょっとは人の話しを聞け! と言いたかったが、こいつには何を言っても無駄だろうと口をつぐむ。
 独り言を言ったみたいで恥ずかしく、話題を変えてフラウに話しかけた。
「……ねえ、フラウさん」
「ウチのことはフラウでええで、ジェシカはん」
 一方のフラウは息を整えるどころか、呼吸さえしてないようにも見える。
 さすが妖精だ。
「じゃあ、私もジェシカでいいわ、お互いタメ口でいきましょう」
 ここまではお互いに共通の知人であるJJがいたため、あまり話しをしなかったので、改めて自己紹介をした感じだ。
「JJくんって、精霊使いの力でジーンからお墨付きをもらったみたいだけど、……どうなの? 妖精の<クック>から見て、あの子の力は本物なの? 」
 ここまで、JJくんの働きは完璧なものだった。
 お姉ちゃん呼びもポイントが高い。……まそれはさて置き。
 時間節約のため魔物を避けつつ、迷路のようなダンジョンを何のためらいも無く突き進む。まるでベテラン冒険者が慣れた自分の庭を走り回るようなものだった。クー・シーの力を使っているとは言え、私の目から見てもそれは驚くべき能力に見えた。
 だって私は四百、え、いや三百……、じゃなくってたった二十五年しか生きてないけど、でも凄いように見えた……気がするのよね。
 その一つ、遠慮なく明りの精霊魔法を使うので走りやすい事この上ない。冒険者の事をよく知っている。
 ベテランの冒険者でも暗いダンジョンは歩みが遅い。いやベテランほど慎重にダンジョンを進むのが常だ。慎重だからこそ生き残ってきたとも言える。
 今日は、強い光のおかげもあって弱い魔物は近寄らないため、ありえないスピードでダンジョンを進んでいる。
 それを、本物の精霊はどう思っているのか。
「ん~何をもって本物か、って判断の基準がよう分からんのやけど……せやねぇ、精霊や妖精がJJによく懐いているのは間違いないようやね。常に妖精の<エアリー>が周囲を警戒しとるし、<クー・シー>の言葉も分かるようやしね」
「<クー・シー>やっぱりいたんだ。こんな事言うとジーンやJJくんに悪いけど、妖精とか精霊って見えないから精霊使いってイマイチ働いてるように見えないのよね」
 冒険者のパーティに属する精霊使いは、その有用性、貢献度に対して評価が低い。精霊使い自体数が少なく、その仕事自体に周囲の人間がありがたみを感じ辛いからだ。
「まあそんなもんやろ。そんでJJはな、あんたらにはめーへんやろけど、他にも何種類か妖精頼んでるようやね。そんだけいっぺんに妖精使役するのは、人間にとっては大変なんちゃう」
 やっぱそうだったんだ。大変なんじゃないか~、位には思っていたけど。
「そうなんだ。……ジーンもその位はやってたと思うけど、精霊使いの中でもすごい事なのか、それとも当たり前の事なのか、それこそ他に精霊使いがいないから比べようも無いわ。まあでもあの歳でジーンと同じくらい出来るなら凄い事なのよね」
「ベテラン精霊使い並みってとこやろか。……せやけどダンジョンで戦えるかって話ならまだ分からんで。だって、戦いに特化した妖精ってまだ見てへんからね」
「そうよね。あの子も魔物と会ったらどうするって聞いたとき、、“逃げる”としか言ってないし。そこは様子見ね。……でもまあ、少なくともシェルパでならやっていけるってとこかしら」
 なんとなく道先案内ならこの先も任せられると、ちょっと安心した。
 そのとき、JJくんが出て行ったのとは別の通路から戻ってきた。
「やっぱり戻ってきちゃった。さっき僕が出てったそっちの通路と、戻ってきたこの通路は奥で繋がっていて、ロックたちも途中で魔物か何かに出会って道を曲がってこの休憩室に戻ってきちゃったみたいだね。匂いはその先は無かったから、あいつらが行ったのは必然的に残りの一つって事になるね」
 そこまで言ったところでマッスルが立ち上がった。
「よし、行く方向が決まったらさっそく出発しよう」
「ギ~ル~マ~ス~、自分は休んだから良いでしょうけど、まだJJくんが休んでないでしょ」
 さっそく通路に向かいかけたマッスルの頭を、私は後ろからワシ掴みにする。
「イデデデ」
「もう、夫婦でイチャイチャするのは後にして。僕は疲れていないから」
「ハッ!? こ、こんな奴とイチャイチャなんかするわけ無いでしょッ! 」
 何でこんな奴と? 私は思い切り否定する。自らまいたガセネタだが、今さらながら後悔した。
「何を照れて――グハッ!? 」
 私の肘打ちがマッスルの鳩尾を痛打する。
「何か悪いこと言ったかな……」
「気にせんほうがエエて」
 JJくんが小さくつぶやくのをフラウはききのがさなかった。私は聞かなかったフリをした。
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