あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

文字の大きさ
37 / 103

出禁 第十八話 最強の精霊使い走る その4

しおりを挟む


「急ごう、魔物に襲われている」
 二股に分かれている道があって、どちらにも匂いは続いているようで、クー・シーは迷ってクルクル回っていたがそれも一瞬。耳がキョトキョトと動いて微かな争う音を聞き分けたようで、すぐに右方向に走り出した。
「こっちだ」
 クー・シーを信じてオレ達も迷わず右への道をとった。
 すぐに前方の薄暗闇の中、赤い頭が鈴なりに群れを成しているのが見えた。泣き叫ぶナナイの声は聞こえるが赤いの群れに囲まれて見えない。
「ナナイーッ! 今行くでー! 」
「フラウお姉ちゃ~ん」
 やはり魔物の群れに囲まれているようだ。
 魔物は身長四十セルチほどの三頭身、頭でっかちののっぺらぼうでギザギザの歯を生やした大きく裂けた口だけがある、赤い小オニの【クレイジートマト】と黄色い小オニの【デスパプリカ】の群れだ。
 頭のてっぺんに角を一本生やしていて、芽が出た玉ねぎのような形をしている。
 ちなみに、他に茶色の【キラーオニオン】、緑の【ダークパンプキン】、オレンジの【バッドキャロット】がいるが、この五種類のオニは全て同じ種で色が違うだけの差だ。
「ウオリャーーーッツ! 」
 二、三十匹はいる小オニの群れに筋肉の塊が飛び込んだ。
 そして飛び込みざまの大車輪。
 ブオンという風鳴りと共に、漆黒の鋼鉄の刃、マッスルの愛斧でありオーガに止めを刺した巨大武器「鬼切り丸」が十五匹ほどの小オニを、一瞬にして黒い霧に変えた。
 魔物が悲鳴をあげる暇も無いほどの早業だ。やっはり筋肉は持久力よりも瞬発力に長けているようだ。
 さすが引退してギルマスに収まっていたとは言え元は第一線級の冒険者だ。地下十四階辺りの魔物は物ともしない、そして現役時代と変わらず思い切りがいい。
 ……まあ悪く言えば慎重さが無いとも言える。以前はそれで高級素材をズタボロにしてしまっていたのだが、今回は大正解だ。
 オニは何故か分からないが、倒されると実体を残さず黒い霧になって消える。小さいものは魔核も残さない。旨みの無い魔物だ。素材も何もないから何も考えずに戦斧をぶん回して倒してしまえばいい。
 オレも飛び込もうと剣を抜く。が、一瞬早くジェシカの鞭が小オニの群れをなぎ倒す。
 まとめて十匹以上の小オニが壁に叩き付けられ五匹ほどが霧となって消えた。
「あとは僕がやるよ」
 最後残った五匹はナナイたちに近すぎ、斧や鞭を振り回すのはチョット危険だったので、まとめてオレが引き受ける事にした。
 マジックリングから取り出した刃渡り二十五センチマイトルのナイフを両手に持って、小オニの群れに踊りこむ。
「ゲッ」「グエッ」「ギャッ」
 当るを幸いに切り飛ばし、ものの十数秒で小オニの群れは霧となって消えた。
「なんてひどい事を」 
 鬼の群れがいなくなった通路に、切り傷による血だらけのロックとナナイが倒れていた。
 穴から落ちたときに出来た傷もあっただろうが、大半は鋭利な刃物などで切られた傷だった。小オニたちの爪で切られたものだろう。
 小オニは嗜虐心が強く、こうした弱い者や動けなくなったものを爪などで少しずつ切り刻んで楽しむ事がある。
 二人は気絶しているのか倒れたまま目を開けない。
 死んでないよな。
 ジェシカがロックの半身を起こして支え、フラウがナナイを支える。手の脈を測ると弱々しいが反応がある。
「まだ生きてる」
 オレはマジックリングから、ギルドから預かった下級ポーションを取り出しジェシカたちに渡す。
 さっそくロックとナナイに飲ませると小さな傷がたちまち消えていく。
 そしてだいぶ出血していたので、増血剤となるサンギス水も飲ませやる。
「う、うん」
「もう怖い事あらへんで、ゆっくり寝ててや」
 二人が微かに反応して目を覚まそうとしたので、フラウが自分の手の平で、まぶたを上から押さえた。
 目を覚まそうとしていたロックとナナイがまた深い寝息を立て始めた。
 何かしたんだろうな。魔法か種族固有のスキルか何かか。
「だいぶ恐い思いしたやろからね、少し寝かせて気持ちええ夢見させたんや(ヒソ)」
 オレは怪訝な顔をしていたのだろう、フラウがこっそり教えてくれた。
「このままやとトラウマになるさかい、夢で記憶をあいまいにさせたんや(ヒソヒソッ)」
 イタズラ好きの妖精は、意外と子ぼんのうな世話好きな妖精だった。 
 夢魔みたいな事するなと思ったが、こいつの場合元々がクックという夢魔よりも高位の妖精らしいから、そういうものなのだと納得しよう。
 ナナイにとっては悪い事ではなさそうだし。
「JJ、ウチが預けた荷物、持って来てよかったな」
「ああ」
 そう言ってオレは預かった荷物を取り出した。
 宿屋に置きっぱなしにされていたナナイの着替えなどが入った荷物を、フラウが念のためにと持ってきてマジックリングに預かっていた物だ。
「傷だらけんなってかわいそうに、今着替えさせたるさかいね。男どもはあっち向いててや」
 そう言ってフラウは、かぎ裂きだらけで血だらけのナナイの服を着替えさせ始めた。
 やはりフラウは子供の面倒見がいい。オレの時も古着を買ってくれたりと意外と面倒を見てもらった。……まあそれ以上に迷惑をこうむっているが。
 オレはジェシカが面倒を見ているロックの様子を見る。
 こっちも傷だらけで、服はかぎ裂きだらけだ。
「ロックの着替えは? 」
 ジェシカが聞いてきたので「ない」と答えると、なぜか恨みがましい目を向けてきた。なぜに?
 ジェシカの謎行動は放っておく事にして、ロックの怪我の状態を見る。
 やはり足を怪我しているようだ。足首が紫色にはれ上がっている。落とし穴に落ちたときに怪我したのだろう。それとは別に足の関節が一個増えている。まあつまり脛の骨が途中であらぬ方向に曲がって骨折している。
 度合いにもよるが、骨折の怪我はポーションで直すとまずい。骨を折って曲がったまま高級ポーションを飲ませたりすると、曲がったまま骨がくっついてしまうから。
 先ほど飲ませた下級ポーション位なら、擦り傷は治せても骨折は直せないから問題ない。
 で、ロックの怪我はどうすれば良いかというと、まず最初に整復して骨を正しい位置に戻す必要がある。
「骨折れてるみたいだね、誰か骨接ぎできますか? 」
 オレは知っているが、JJがマッスルが骨接ぎできる事を知ってるのはおかしいからあえて聞く。
「そうね、……それならギルマスにやってもらいましょう」
 一瞬ためらったが、ジェシカはマッスルに指示をだす。あくまでも夫のマッスルを他人行儀にギルマスと呼ぶ。これは仕事中のけじめと言うやつらしい。
 フラウが寝かせたのを幸いに、少し荒療治だがマッスルに骨接ぎをしてもらう事に。
 骨折の整復は力任せで、勢いで元の形に整えてしまわないといけない。ゆっくりやっても痛いだけだから。この手の力技はやはりと言うかマッスルが上手い。
「おう、まかしとけ」
 久しぶりにジェシカに頼られて張り切ったマッスルが、ロックの曲がった足を掴むと、「フンッ」と力任せに引っ張り、真っ直ぐに戻す。
 ギャーーーーーッッッツ!!!
 ロックの口からこの世の終わりのような叫び声が聞こえ、整復が終わったとたん、またパタンと倒れて気絶した。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...