あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第二十四話 少女の野望、妖精の思惑 その1

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「階段ってあれね」
 ジェシカの走る五十マイトル程先の所に、真っ暗な空間が見えてきた。
 ジーンがJJに残したという下層の地図によると、そこは大きな縦抗で、その縦抗の中に下層を貫いて中層へ続く階段があるという。そしてJJの精霊によると、その中でヒアー・ハートが魔物に襲われているらしい。
 ジェシカが竪穴の中を覗くと、光の精霊もついてきて中を照らす。だが光は穴の底や上端まで届かない。周囲を照らすだけだ。と、それに反応して、音もさせずに黒い何かが隠れるように陰の中に身を隠す。
 ――中は魔物の巣窟ね。
 パーティを二つに分けて非戦闘員、ロックとナナイは通路に残すかとも思ったが、護衛に残せるのは、ケイロンとトゥインクルガールズのメンバーだけだ。どれだけ戦えるか不安だ。
 それに危険度は柱の中も外も一緒だ、それならば目の届く範囲に全員いたほうが良い。と、ジェシカは覚悟を決める。、
「中にヒアー・ハートがいると思われるわ。でも魔物も多いみたいだから気をつけてね」
 ジェシカが先頭で階段に足を踏み入れると、明かりの精霊もついてきてくれる。JJが用意してくれた精霊は中々便利だ。
 中は中央が吹き抜けになっていて、長いロープが上から二三本垂れ下がってずっと下まで伸びている。それを囲むように壁に沿って階段がらせん状に上下に伸びている。
 魔物は夜行性なのか、真っ暗闇でも動けるが、逆に強い明かりに弱くすぐ陰に隠れてしまい襲ってこないようだ。
 ――ジュニアスパイダーでも数が多いと危険なqんだけど、光の精霊で逃げてくれてラッキーだわ……まさかJJくんはココまで計算して?
「ギルマス、この階段の手すりぶっ壊して。松明にしましょう。ネイサン火魔法って使える? 」
「え、え~っと攻撃は出来ませんけど、一応」
「松明の棒、用意するから火をつけて。コレがあればクモが来ても多少は防げるでしょ」
――気休め程度だけどね。
 それでも無いよりはマシかと思い、トゥインクルガールズの四人に持たせる。
 ジェシカとケイロン、マッスルは魔物に対応できるよう武器を持っているので松明は無しだ。もっとも前後に光の精霊がいるので二人には必要ないくらいだが。
「だ……だれか、助け……」
 かすかな声が階下から聞こえてきた。ジェシカたちの光が見えたのだろうか。
「ヒアー、いるの返事をして」
「い……ココ……」
 かすかに階段下の方から声が聞こえるが、光の届く範囲にその姿はない。
「下ね、行きましょう」
 光の精霊に助けられながら階段を少しづつ下りていく。そして二、三階層分降りたところで真ん中の吹き抜けのところにエレベターの箱があり、その上に黒くモゾモゾと動くものがいた。
「キャッ」
 クモの魔物の子供ジュニアスパイダーだ。親に似た、何十もの真っ赤な目が精霊の光を反射して妖しく光る。
 明るい光を浴びても逃げない固体、数十匹が塊で一心不乱に何かをしている、エサを食べているのだろうか。
「あれか? 」
 少し離れた上方からジェシカが風魔法を発動させる。
 突風にも似た強い風に煽られ、クモが散らされ、残った数匹が、ジェシカの鞭によって弾き飛ばされた。
 現れたのは、血だらけ満身創痍の人間だ。
「見るな」
 ロックが、ケイロンの背で前に座っているナナイの目を塞ぐ。
「ヒアー!? ヒアー・ハートで間違いない? 」
「あ、あ……」
 身体中を生きたままかじられたのだろう、身体の一部が筋肉がむき出しになっている。
 男はかすかに返事をする。襲われてからそれほど時間がたっていないのか、わずかに命は繋ぎとめているようだ。
 片手片足の間接が一つずつ増えている。これでは高級ポーションも飲ませられない。
 仕方なくジェシカは応急処置で低級のポーションと毒消しを飲ませる。とりあえずこれで、命の危険はないだろう。
「とにかく、縦抗の外に出ましょう。ココにこのままいるのは危険だわ。JJクンとも合流しないと」
 ヒアーをマッスルに担がせる。
 ヒアは気絶したのか動かない。
「ネイサン、手すりに火をかけて。ここのクモは光が苦手みたいだから、ココで火をつけておけば下からあふれて来て襲われる事も多分無いでしょう」
「でも私達もこの階段で上に脱出するんでしょ、火をつけて大丈夫なの? 」
 アイリスの疑問ももっともだが、ジェシカは首を横に振って否定する。
「ここは多分クモの巣、ここを行くのはかなり危険だわ。ジュニアは光が嫌いみたいだけど、親は多分そうでも無いわ。キングが出てきたら逃げられなくなる。それにこの階段は、確か途中で塞がってるはずよ」
 その昔、ダークミストが噴出して、魔物が溢れるようになったその時、下層と浅層を繋ぐこの直通エレベータを閉鎖したのだ。あと二三階層も上がれば昇るれなくなるだろう。
 ヒャッハーはそれを知らなかったようだ。
 ジェシカたちも現役の頃、下層に降りる時にこの階段を使ったことはない。
 ネイサンが手すりに火をつけるのを見て、ジェシカは先導して階段を上り始めた。
 その時、最後尾を歩くトゥインクルガールズの四人が目配せをして頷きあった。
「あんた何してるんや」
 今まで一言も話さなかったフラウが急に大きな声を上げた。
 その声にジェシカとマッスルが振り向くと、アイリスが短剣を逆手に持ってマッスルを刺そうとしているところだった。いや正確にはマッスルが背負ったヒアー・ハートを刺そうとしていたのだ。
 さすが筋肉が脳みそというべきか、素早くマッスルの手がアイリスの短剣を持った腕を掴んだ。
「痛ッ」
 キンと硬い音をたてて短剣が落ちた。
 アイリスが捕まったのを見て、エリザベスがその短剣を拾ってマッスルの脇をすり抜ける。いやすり抜けようとした瞬間、神速の速さでマッスルが反応しエリザベスの腕を反対の腕で掴む。右手でアイリスの腕を掴み、左手でエリザベスの腕を掴み、必然的に背負ったヒャッハーはドサリと背後に落ちる。
「デッ!? 」
「何をしようとしていた」
 巨大な筋肉の固まりに垂下されて、アイリスもエリザベスも、そしてケディもネイサンも身動きができなかった。
 掴まれたエリザベスの腕からやはり短剣が落ちた。
「今まで全然喋らなかったから、存在を忘れていたわ」
 アイリスは、空中でフヨフヨと浮かぶ妖精を睨らんだ。
「JJから言われてたんや、あんたらの様子がおかしいって」
「JJくんが? 」「いつの間に? 」
「このダンジョンに来る前や。メッチャ嫌っとったヒャッハーなのになんで急に一緒にダンジョン潜るようになったのか不思議だって言うっとったで。リズはん、あんたヒャッハーに粉かけられたときニヤって笑ったんやて? 」
 フラウのネタばらしにアイリスは苦笑する。
「リズ、演技下手すぎ」
「……ごめん」
 フラウは落ちた短剣を拾って、ダンジョンで武器無しは命取りになるで――、と言ってネイサンに手渡した。
「良いの? 私もヒャッハー刺すかもしれないわよ」
「あんたは性格が優しそうだから、そんな度胸無いやろ、あったらアイリスに短剣、渡したりせんよね」
 会ってまだ小半刻とたってないのに性格まで見透かされて、ネイサンは何も言えず、だまって短剣を受け取って鞘にしまった。
 それを見てケディも、背中の大剣の柄にかけていた手を下ろした。
「どういう事、まさか下層まで落ちたのも、わざとなの? 」
「そうよ! 」

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