60 / 103
第二章 王都編
出禁 第二十八話 JJブチギレる その2
しおりを挟む「攻撃できる精霊は見せてもらえるかな、下層で契約したと聞いてるよ」
領主が挑戦的に微笑んだ。
「それは……止めておいた方がいいと思います」
「なぜだね。危険だからかい」
「まあ、そうです。万が一にも領主様にお怪我があったらいけませんので」
「私に怪我をさせる前に護衛が守ってくれる、大丈夫さ」
「ですが、私の攻撃で使える精霊魔法は威力の加減が出来ませんので」
「ふうむ」
領主が溜息混じりに諦めかけたその時、
「閣下がやれとおっしゃってるのだ、良いからやってみせろ」
と、護衛の男が苛立ち混じりに叫んで命令してきた。いるんだよね。平和に終わりそうなときに余計な事を言い出す奴。
「本当にいいんですか」
「さっさとやれ! 」
「私は責任は取りませんから」
「ふふふ、大丈夫さ」
護衛の一人が気色ばんで叫ぶが、もう一人は無言のまま様子を見ている。そして領主は面白そうにオレを見つめている。
もう怒った。
「そこまで言われては仕方ありません」
もうどうなっても知らないからな。おれは忠告したからな。後で泣いて謝っても遅いからな
オレは溜息交じりに宙をにらむ。
最初はタロスを顕現させようとも思ったがやめた。
剣で試合などになったら、手加減しそこねて相手を死なせる事になりかねないし、タロスも手加減するのは嫌だろう。
機嫌が悪くなってかえって危ないかもしれない。
タロスがオレに協力するのは下層などで、オレの体を使って魔物を倒して暴れたいからだ。
「……炎の世界の住人イフリート、わが呼びかけに応じ顕現せよ」
オレの中からミスとがゴッソリ引き去られるのが感じられる。
「……」
炎の魔人イフリート、相変わらず無口な奴だ。
そしてオレの側の空間に、炎の魔人が宙に浮かんで顕現する。
イフリートを顕現させた以上、何かを焼き尽くすしかない。ダンジョンなら魔物だったりするけど、この場合は屋敷かな。
「半壊させよ――アチッ!? 」
イフリートはその瞬間に、輝きをまして炎の温度を上げた。
そして宙を飛んで、正面の壁をぶち壊して隣の部屋に飛び込んでいく。カーテンなど近くにある可燃物は、それだけで燃え上がっていく。
そして、南北二棟ある屋敷のうち、南側の建物を全力で飛び回り破壊し焼いて回ってからイフリートは消えていった。
目の前には直系三マイトルはあるイフリトが開けた穴があり、その向うに、破壊され今も絶賛炎上中の、ほぼ全壊に近い瓦礫が見えるだけだ。
「あああ、待てヤメロ、バカモノッ」
「え、今さら? 無理ですけど」
偉そうな護衛の方が焦った顔つきでオレに食って掛かるが、俺はその腕をひねってネジり上げ、床に押し倒してやった。
「あ、ああ、ああああ」
領主は驚きで声も無いようだ。
南館には人がいないのは風の精霊に調べさせて分かっていたから、南館だけは徹底して破壊させた。
「ここまでとは」
もう一人の護衛が呟いた。
「威力の加減は出来ないと申し上げておきました」
うなだれ、膝を突く領主。
まあ、スッキリしたかな。
イタズラに人を呼びつけて精霊を見せろとか言うからこうなるんだ。
責任は取らないと言ってはおいたが、さすがに、ここまでやると後々どんな嫌がらせを受けるか分からない。なので……。
「シルキー、シルキー。いたら姿を見せてくれ。散らかしたわけじゃないんだけど、この壊れた家何とか直せるかな」
宙に向かって願うと、長いシルバーブロンドをなびかせる白いシルクのワンピースを身にまとった美人の妖精が現れた。
散らかった部屋を片付けるのが大好きな妖精だ。散らかったというよりは壊れただけなんだけど……。
『……散ラカッテルチガウ』
「気持ちは分かるけど……、前に、ちょっと壊れた部屋の修繕もしてくれたじゃんあれと同じだろ」
『火モボーボー』
「ああ、ついでに消してくれると助かる」
『ワタシ火消シチガウ。大工モチガウ』
「分かってるって、オマエは世界に冠たる家事妖精のシルキーだ」
『ジーンは嘘付キ、部屋ヲ片付ケサセテクレル約束モマダッ!』
「ああッ、それはゴメン、今度必ず。だから今日の所は、な、頼むよ」
なんだか娘との約束を破ったお父さんみたいな言い訳をしてシルキーに頼むオレ。
一方領主と護衛は、何もない空中で相手に、独り言で寸劇をするオレを、口ポカン状態で見ている。恥ずかしい。
『みすと、スゴイイッパイモラウ』
「ああ、オレ以外の、この屋敷中の人からミスト持って行っていいよ」
『じーんハクレナイカ』
「オレの責任じゃないからな、屋敷の人に責任とってもらわないと」
『みすと、メチャメチャ超スッゴイイッパイモラウッ! 』
オレが精霊と契約できる理由の一つが、オレのミストは精霊にとってなんだか甘いんだか何かで美味しいらしい。
オレの美味しいミストのために精霊はオレの願いを聞いてくれるようだ。
今回はオレのミスとではないと言うことで、シルキーはへそを曲げてミストを多めに請求するようだ。
ま、死なない程度にね。
「うっ」「くっ」
領主や護衛が苦悶の表情を浮かべて膝を突く。それと同時に壊れた屋敷が見る見るうちに復元されていく。
「シルキー、ありがとう」
『フンッ! 』
アッチャー。今度は本気で散らかった部屋用意しておかないと、契約解除されて逃げられちゃうかもな。
まそれはそれとして、
「今日の所はもう帰っても良いでしょうか」
オレはタ修復された壁を見て唖然として膝をついている領主に問いかけた。
「う、うむ」
何が目的だったのかよく分からないが、領主はミスト不足で立つ気力もなさそうなので、俺を引き止める事もなさそうだった。
「これ、ミスト不足の時に飲むエーテル水です。お口に合うかどうか分かりませんが良かったらお試しください。ではこれで」
普段から持ち歩いているエーテル水を渡して、そのまま部屋を出る。
誰の見送りもなく玄関へと向かう。屋敷のあちこちで人が倒れて若干ましな人に解放されていた。
シルキーの奴遠慮なくミストを搾り取ったな。まあオレがやらせたんだけど。
全てはあの護衛の奴の責任と言う事で。
そんなことを考えていると、
「待て、JJ」
そういってオレを呼び止める声。振り返ると領主が一人オレを追いかけてきた。
エーテル水を飲んでミストが復活したので、追いかけてきたのだろう。
なんだろう、屋敷を壊して屋敷中の人のミストを奪って屍累々にした事で、怒ったかな。
「待ってくれJJ、キミを気に入った。キミに是非とも頼みたい事があるんだ」
頼みたい事……か。
多分、その頼みたい事を頼むかどうか、それを見極めるため面接をしていたのだろう。
でも、気に入ったって聞こえたけど気のせいかな?
直したとは言え、屋敷を半壊させた奴を気に入るとは、おかしな人だ。この領地は大丈夫なのか。
「頼みたい事とはなんでしょう」
引き受けたくない。嫌な予感しかしない。だけど精霊によると領主からは悪意は感じられない。話を聞くだけきかないと。相手は大貴族だから。
あ、もしかして、政敵とか戦争している相手の国に行かせて、相手の街で破壊の限りを尽くして来いとか、そういうことか。それで破壊力を気に入ったと。
「戦争はしたくありませんが」
「なぜ戦争?」
違ったようだ。
「JJ、キミは王都の学校に入らないか? 」
は? 王都の学校? なぜ? この人は何を言ってるのかな。
イフリートが屋敷を壊した時に、瓦礫で頭でも打ったかな? いや、それは無かったと思うけど。
オレはその言葉がまるで理解できなかった。
72
あなたにおすすめの小説
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
「役立たず」と追放されたが、俺のスキルは【経験値委託】だ。解除した瞬間、勇者パーティーはレベル1に戻り、俺だけレベル9999になった
たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ、アレン。お前のような戦闘スキルのない寄生虫は、魔王討伐の旅には連れていけない」
幼馴染の勇者と、恋人だった聖女からそう告げられ、俺は極寒の雪山に捨てられた。
だが、彼らは勘違いしている。
俺のスキルは、単なる【魔力譲渡】じゃない。
パーティメンバーが得た経験値を管理・分配し、底上げする【経験値委託(キックバック)】という神スキルだったのだ。
俺をパーティから外すということは、契約解除を意味する。
つまり――今まで彼らが俺のおかげで得ていた「かさ増しステータス」が消え、俺が預けていた膨大な「累積経験値」が全て俺に返還されるということだ。
「スキル解除。……さて、長年の利子も含めて、たっぷり返してもらおうか」
その瞬間、俺のレベルは15から9999へ。
一方、勇者たちはレベル70から初期レベルの1へと転落した。
これは、最強の力を取り戻した俺が、雪山の守り神である銀狼(美少女)や、封印されし魔神(美少女)を従えて無双し、新たな国を作る物語。
そして、レベル1に戻ってゴブリンにも勝てなくなった元勇者たちが、絶望のどん底へ落ちていく「ざまぁ」の記録である。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる