あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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第二章 王都編

出禁 第二十八話 JJブチギレる その2

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「攻撃できる精霊は見せてもらえるかな、下層で契約したと聞いてるよ」
 領主が挑戦的に微笑んだ。
「それは……止めておいた方がいいと思います」
「なぜだね。危険だからかい」
「まあ、そうです。万が一にも領主様にお怪我があったらいけませんので」
「私に怪我をさせる前に護衛が守ってくれる、大丈夫さ」
「ですが、私の攻撃で使える精霊魔法は威力の加減が出来ませんので」
「ふうむ」
 領主が溜息混じりに諦めかけたその時、
「閣下がやれとおっしゃってるのだ、良いからやってみせろ」
 と、護衛の男が苛立ち混じりに叫んで命令してきた。いるんだよね。平和に終わりそうなときに余計な事を言い出す奴。
「本当にいいんですか」
「さっさとやれ! 」
「私は責任は取りませんから」
「ふふふ、大丈夫さ」
 護衛の一人が気色ばんで叫ぶが、もう一人は無言のまま様子を見ている。そして領主は面白そうにオレを見つめている。
 もう怒った。
「そこまで言われては仕方ありません」
 もうどうなっても知らないからな。おれは忠告したからな。後で泣いて謝っても遅いからな
 オレは溜息交じりに宙をにらむ。
 最初はタロスを顕現させようとも思ったがやめた。
 剣で試合などになったら、手加減しそこねて相手を死なせる事になりかねないし、タロスも手加減するのは嫌だろう。
 機嫌が悪くなってかえって危ないかもしれない。
 タロスがオレに協力するのは下層などで、オレの体を使って魔物を倒して暴れたいからだ。
「……炎の世界の住人イフリート、わが呼びかけに応じ顕現せよ」
 オレの中からミスとがゴッソリ引き去られるのが感じられる。
「……」
 炎の魔人イフリート、相変わらず無口な奴だ。
 そしてオレの側の空間に、炎の魔人が宙に浮かんで顕現する。
 イフリートを顕現させた以上、何かを焼き尽くすしかない。ダンジョンなら魔物だったりするけど、この場合は屋敷かな。
「半壊させよ――アチッ!? 」
 イフリートはその瞬間に、輝きをまして炎の温度を上げた。
 そして宙を飛んで、正面の壁をぶち壊して隣の部屋に飛び込んでいく。カーテンなど近くにある可燃物は、それだけで燃え上がっていく。
 そして、南北二棟ある屋敷のうち、南側の建物を全力で飛び回り破壊し焼いて回ってからイフリートは消えていった。
 目の前には直系三マイトルはあるイフリトが開けた穴があり、その向うに、破壊され今も絶賛炎上中の、ほぼ全壊に近い瓦礫が見えるだけだ。
「あああ、待てヤメロ、バカモノッ」
「え、今さら? 無理ですけど」
 偉そうな護衛の方が焦った顔つきでオレに食って掛かるが、俺はその腕をひねってネジり上げ、床に押し倒してやった。
「あ、ああ、ああああ」
 領主は驚きで声も無いようだ。
 南館には人がいないのは風の精霊に調べさせて分かっていたから、南館だけは徹底して破壊させた。
「ここまでとは」
 もう一人の護衛が呟いた。
「威力の加減は出来ないと申し上げておきました」
 うなだれ、膝を突く領主。
 まあ、スッキリしたかな。
 イタズラに人を呼びつけて精霊を見せろとか言うからこうなるんだ。
 責任は取らないと言ってはおいたが、さすがに、ここまでやると後々どんな嫌がらせを受けるか分からない。なので……。
「シルキー、シルキー。いたら姿を見せてくれ。散らかしたわけじゃないんだけど、この壊れた家何とか直せるかな」
 宙に向かって願うと、長いシルバーブロンドをなびかせる白いシルクのワンピースを身にまとった美人の妖精が現れた。
 散らかった部屋を片付けるのが大好きな妖精だ。散らかったというよりは壊れただけなんだけど……。
『……散ラカッテルチガウ』
「気持ちは分かるけど……、前に、ちょっと壊れた部屋の修繕もしてくれたじゃんあれと同じだろ」
『火モボーボー』
「ああ、ついでに消してくれると助かる」
『ワタシ火消シチガウ。大工モチガウ』
「分かってるって、オマエは世界に冠たる家事妖精のシルキーだ」
『ジーンは嘘付キ、部屋ヲ片付ケサセテクレル約束モマダッ!』
「ああッ、それはゴメン、今度必ず。だから今日の所は、な、頼むよ」
 なんだか娘との約束を破ったお父さんみたいな言い訳をしてシルキーに頼むオレ。
 一方領主と護衛は、何もない空中で相手に、独り言で寸劇をするオレを、口ポカン状態で見ている。恥ずかしい。
『みすと、スゴイイッパイモラウ』
「ああ、オレ以外の、この屋敷中の人からミスト持って行っていいよ」
『じーんハクレナイカ』
「オレの責任じゃないからな、屋敷の人に責任とってもらわないと」
『みすと、メチャメチャ超スッゴイイッパイモラウッ! 』
 オレが精霊と契約できる理由の一つが、オレのミストは精霊にとってなんだか甘いんだか何かで美味しいらしい。
 オレの美味しいミストのために精霊はオレの願いを聞いてくれるようだ。
 今回はオレのミスとではないと言うことで、シルキーはへそを曲げてミストを多めに請求するようだ。
 ま、死なない程度にね。
「うっ」「くっ」
 領主や護衛が苦悶の表情を浮かべて膝を突く。それと同時に壊れた屋敷が見る見るうちに復元されていく。
「シルキー、ありがとう」
『フンッ! 』
 アッチャー。今度は本気で散らかった部屋用意しておかないと、契約解除されて逃げられちゃうかもな。
 まそれはそれとして、
「今日の所はもう帰っても良いでしょうか」
 オレはタ修復された壁を見て唖然として膝をついている領主に問いかけた。
「う、うむ」
 何が目的だったのかよく分からないが、領主はミスト不足で立つ気力もなさそうなので、俺を引き止める事もなさそうだった。
「これ、ミスト不足の時に飲むエーテル水です。お口に合うかどうか分かりませんが良かったらお試しください。ではこれで」
 普段から持ち歩いているエーテル水を渡して、そのまま部屋を出る。
 誰の見送りもなく玄関へと向かう。屋敷のあちこちで人が倒れて若干ましな人に解放されていた。
 シルキーの奴遠慮なくミストを搾り取ったな。まあオレがやらせたんだけど。
 全てはあの護衛の奴の責任と言う事で。
 そんなことを考えていると、
「待て、JJ」
 そういってオレを呼び止める声。振り返ると領主が一人オレを追いかけてきた。
 エーテル水を飲んでミストが復活したので、追いかけてきたのだろう。
 なんだろう、屋敷を壊して屋敷中の人のミストを奪って屍累々にした事で、怒ったかな。
「待ってくれJJ、キミを気に入った。キミに是非とも頼みたい事があるんだ」
 頼みたい事……か。
 多分、その頼みたい事を頼むかどうか、それを見極めるため面接をしていたのだろう。
 でも、気に入ったって聞こえたけど気のせいかな? 
 直したとは言え、屋敷を半壊させた奴を気に入るとは、おかしな人だ。この領地は大丈夫なのか。
「頼みたい事とはなんでしょう」
 引き受けたくない。嫌な予感しかしない。だけど精霊によると領主からは悪意は感じられない。話を聞くだけきかないと。相手は大貴族だから。
 あ、もしかして、政敵とか戦争している相手の国に行かせて、相手の街で破壊の限りを尽くして来いとか、そういうことか。それで破壊力を気に入ったと。 
「戦争はしたくありませんが」
「なぜ戦争?」
 違ったようだ。
「JJ、キミは王都の学校に入らないか? 」
 は? 王都の学校? なぜ? この人は何を言ってるのかな。
 イフリートが屋敷を壊した時に、瓦礫で頭でも打ったかな? いや、それは無かったと思うけど。
 オレはその言葉がまるで理解できなかった。


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