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第二章 王都編
出禁 第二十九話 JJ王都へ その4
しおりを挟む「あれ、護衛騎士がいない……」
荷馬車を降りて、様子を見に行くと、シャーロットの馬車の前方を走っていたはずの、四騎の騎馬の護衛がいなくなっていて、前方に五頭の魔犬が立ちふさがっていた。
「ま、魔物だ~」
馬車の御者が馬車を離れて逃げてしまった。
もしかして護衛騎士も逃げたのか、たかだか五、六頭の魔犬を相手に?
「シャーロット様危険です。絶対に車外に出ないでください」
シャーロット付きのイジワル執事が馬車に篭城を決め込み、中から鍵をかけた。
そんな大げさな。
風の精霊によると、他に魔物はいない。護衛も近くにはいないようだ。
なぜ護衛がいないのか分からないが、この場は速効片付けて移動しよう。
囲まれると馬車の陰にまわられて、退治が面倒になるし、馬を傷つけられると今後の移動が面倒だ。
コイツらなら<タロス>を顕現させるまでも無い。オレの精霊魔法と剣技とでサクッと退治する。
「光の精霊、こいつらに光の目くらましを」
お願いすると同時にミストが少し抜ける。そして五頭の魔犬の顔が一斉に光る。
キャウン! と魔犬が鳴いてひるんだ隙に、オレは腕のマジックリングから出した大型ナイフで魔犬の喉か頚動脈をはね切っていく。
五頭倒すのにと五十も数える必要はなかった。あっと言う間だ。
一応王都で換金できるだろうと、魔物は全部マジックリングに収納。
そして、オレは御者台に乗ると、素早く手綱をとって馬を発進させる。
「移動します、ついてきて」
後ろの荷馬車にも声をかける。
逃げた御者や騎士の事は知らん。自分達で何とかしろ。
「貴様、何をしている。勝手をするな」
馬車の中から執事ががなって来る。
「このままここにいたら、血の匂いをかぎつけて魔物がよってくるし、明るいうちに次の街にたどり着けないですよ。護衛も逃げていなくなっちゃいましたし、シャーロット様をそんな危険な目にはあわせられません」
「そ、そうです。早く行きましょう」
オレが正論を言うと、シャーロットもそれに気づいたようで青い顔をして、オレの意見に賛成した。
「バ、バカ。それじゃ計画が――ッ!? 」
「計画? 」
「あ、イエなんでもありません」
執事が慌てて何かをぽろっと喋りかけたが、シャーロットが追求するとすぐに口をつぐんだ。
何を言いたかったんだろう。ちょっと気になるな。後で調べるか。
※
馬車が少し進んだ所で、後ろから四騎の騎馬騎士が追いついてきて馬車を止めさせた。
「その馬車止まれ、誰の許しを得て馬車を移動させたッ! 」
多分、馬車の前を走っていた護衛だろう。兜のフェイスマスクを下ろしてるので顔は分からないけど、鎧は見覚えがある。
「誰の許しって、シャーロット様のご要望でしたので。そちらこそ、どちらさんです? 」
分かっているけど、一応惚けて聞いてみる。
「我らを愚弄するか、我らこそハミル辺境伯家の近衛騎士、シャーロット様の護衛だ」
近衛騎士!? マジで? たかだか五、六頭の魔犬相手に逃げ出したのが?
辺境伯は悪い奴で、執事はイジワルで、護衛はへタレ……。シャーロットの周囲はロクな奴がいないな。それでよくシャーロットが素直ないい娘に育ったものだ。
「シャーロット様。シャーロット様の護衛の任を放りだして逃げた騎士が戻ってきましたけど、どうします」
オレは御者台から、小窓越しに馬車の中のシャーロットへ声をかける
シャーロットと二人きりだけの時はお姉ちゃん呼びしてもいいけど、他の人がいるときは様付けで呼ぶようシャーロットの父親から言われている。父親にとってはそれが精一杯の妥協のようだ。
「どうするって言われても……」
「どうするも何もない、普通に合流すればいいだろう」
執事が代わりに答えるが、お前には聞いていない。
一応、どんな罪になるか言っておく。
「いや、敵前逃亡ですから、近衛騎士なら公衆の面前で、貼り付け串刺しか絞首刑です。下手すると家族もろとも……。普通許される事ではありません。この場で首をはねても問題はありませんよ」
「首をは、は……」
思わぬ厳罰に、シャーロットは青い顔をして言葉を呑んだ。
「バ、バカを言うな」「我々は逃げたのではない」「我々は応援を求めて来たのだ」
護衛騎士もあわてて言い訳をする。
応援を呼ぶ? 何の事かと思っていたら、
「シャーロット様、ご無事か」
シャーロットの乗る豪華な馬車に横付けするように、それに負けないくらい豪華な貴族用の馬車が止まった。
「ミンナ・アホネン公爵家の嫡男オレハが助勢に来たぞ。みな魔物を成敗しろ」
馬車の窓から顔を出して叫んだのは、シャーロットと同い年くらいの貴族の少年。
なんだか早口に、周りの公爵家の護衛騎士にまくし立てる。
辺境伯の近衛騎士が連れて来た応援と言うのはコイツらの事か。
ハミル辺境伯家の護衛は、アホネン公爵家が近くに来ていたことを知っていた?
なぜ、どうやって?
「オレハ様、魔物など何処にもいませんが」「まあ、いないに越した事はありませんが」
「なんだと……どういう事だ」
オレハの護衛騎士が周囲を捜索した後、困惑気味にオレハに報告する。
どういうも何も、魔物はやっつけたし。
「オレハ様、ご心配には及びません。魔物は私の護衛が退治しましたので」
隣の馬車からシャーロットが自慢げにオレハに言って、御者台のオレを指差す。
そんな、公爵家に目を付けられそうな紹介の仕方は止めてほしい。
ほら、オレハが厳しい目でオレを睨んでいる。
「おい、貴様、オレハ様の御前だぞ、御者台から降りて礼をとれ」
早速、オレハの執事らしい黒服の男に怒鳴られた。なんか雰囲気がイジワル執事に似ている。
オレは仕方なく御者台を降りて跪き、礼を取る。
こういうのがあるから貴族には近づきたくなかったんだよな。
オレハが馬車を降りてきた。何だと思ったら、
(おい、なんで予定通りやらないんだ。ヒソッ)
オレハが小声でオレに聞いてくる。? ……予定って何だ?
(オ、オレハ様、恐れながらこいつは新しく雇った護衛で、あの例の……計画の事は何も知らないのです。 ヒソヒソッ)
イジワル執事が小声でオレハに言い訳をしている。二人の間で、もしくはもう何人か含めて何か計画があったようだ。
公爵家の騎士は不思議そうな顔、辺境伯家の騎士は顔を背けるか、俺をにらむか。
小声で話すのは、ここにその計画とやらを知られてはいけない人もいるのだろう。
オレハと執事はシャーロットを避けて話をしているように見える。
(何だと、コイツが……シッカリしつけておけ。 ヒソッ)
(ハハッ。 ヒソヒソッ)
シャーロット付きのイジワル執事は、まるで公爵家の人間のようだ。
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