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第二章 王都編
出禁 第二十九話 JJ王都へ その5
しおりを挟む「ま、まあ、とにかく私達が来たからにはもう安心です。魔物も寄せ付けません。今日の宿泊予定は? アンティコバ? そうですか私達も一緒です。どうでしょう、このまま私達と一緒に行きましょう」
「そ、そうですね~、どうでしょうか」
目的地が一緒なら、知り合いの貴族同士が(時には商隊も混ざって)隊列を組むのはよくあることだ。数が多ければ魔物や山賊に襲われる可能性は低くなるから。ハミル家の馬車とガレア家の馬車が一緒に移動しているのも同じ理由だ。
ただ、シャーロットとしては、あまり一緒には行きたくなさそうだが。
「とっても、良いご提案かと思われます。お嬢様、ご提案お受けなさった方がよいかと思われます。オレハ・アホネン様の広いお心に感謝申し上げます」
「そ、そうですか」
執事がシャーロットの意見も聞かずに提案を受け入れてしまった。ま悪い事じゃないと思うけど、なんだかな。
「では、早速移動しましょう、このままだと明るいうちにアンティコバの街までつけないかもしれませんよ」
オレは西にだいぶ傾いた日を眺めながら提案する。
「うるさい。御者風情は黙ってろ」
オレハが怒鳴る。暗くなって野宿しても知らんぞ。
「そうだ、シャーロット様、私の馬車で向かいませんか。私の馬車なら防寒設備もあるし、クッションもよく効いていますから乗り心地も良いですよ」
オレハが変な自慢でシャーロットを誘う。
辺境伯の馬車が防寒設備がないわけはないし、クッションが効いていないわけがないので、的外れな自慢だが気づかないようだ。
「いえ、でも、殿方と二人と言うのは……」
シャーロットが二の足を踏む。すると
「大変良いお考えですオレハ様。シャーロット様とオレハ様は王立学校でも同級生になるのです。どうです親交を深めるためにも」
イジワル執事がシャーロットを説得する。
おい、お前は誰に雇われているんだ。
公爵家の令息とナイフみたいな執事にそう言われて、押しの弱いシャーロットは不快な表情を覗かせながらも頷いてしまう。
「そういう事なら、私も混ぜてもらわないと」
「む。貴様もいたのか」
馬車の後方からやってきて話に参加したのは、ガレア家の二男ロレンツォだ。
彼もこの春から王都の学校に入学し同級生になる。
「もちろんですよ、私の家はハミル家の寄子で、メセタ市に屋敷があります。学園でシャーロットを護衛するため、ワザワザ一年入学をずらしたほどです、一緒に王都に行くのも当然でしょう。同級生同士親交を深めるというのなら私も入らないと」
ロレンツォの登場にオレハは明らかに嫌な顔をする。
が、一方でシャーロットはようやく笑顔を見せる。
「そうね、それがいいわ。三人でオレハ様の馬車にお邪魔しましょう」
「それはいい」
「く、まあいい。同級生だ皆乗るがいい。三人で親交を深め……ん? 三人でお邪魔するというのは? 」
三人でお邪魔するという事は、シャーロットとロレンツォ以外にもう一人、オレハの馬車に乗るという事だ。
「オレハ様、紹介しますよ。この護衛のJJくんも春から我々の同級生ですよ。JJくん、こちらミンナ・アホネン公爵の嫡男、オレハ・アホネン様だよ」
そう言ってロレンツォは、オレハの前にオレを押し出す。
三人目ってオレかよ。
嫌だなあ、すごお~く気が重い。同乗どころか話だってしたくない。
だけど、ロレンツォにこう紹介されたら挨拶くらいはしないといけないだろう。
「初めましてオレハ様。JJと申します」
簡単に挨拶をする。
よろしくお願いしますとは言わない。ヨロシクしたくないから。
「いけません、こんな出自の分からない平民など――ッ!? 」
そうだ、貴族の馬車に平民は乗ってはいけない。というか単に乗りたくない。
「キミは黙っていてくれたまえ、心の広いオレハ様が良いと言ったんだ。君が差し出がましい事を言えるお相手ではないよ」
「え、あ、いや、しかし……」
ナイフみたいなイジワル執事も、ロレンツォにこう言われては何も反論が出来なかった。
ええっ? 負けるなイジワル執事。
「そうよ、仲間はずれはいけないわ。JJクンが乗らないという事は、同級生とは仲良くしないと言うことでしょ。それなら私も乗れませんわ」
シャーロットもここぞとばかりに反撃する。
「よ、良きにはからえ」
最後オレハが同乗を認め、執事も渋々引き下がって、オレはシャーロットたち貴族令息、令嬢らと共に次の街まで一つ馬車の中で過ごす事になった。
シャーロットの馬車の御者をしなきゃいけないから、と断ろうとしたら、その御者が息を切らせて追いついてきてしまった。
もう言い訳も出来ない。
すっごく気が重い。オレは肉屋に売られる子牛な気持ちで、シャーロットに手を引かれアホネン家の馬車に乗り込んだ。
さすが公爵家の馬車は空間魔法がかけられていて広々していたが、精神的にはとても窮屈な馬車だった。、
馬車の中では親交を深めるというよりも、ほとんどオレの冒険話ばかりだった。シャーロットが聞きたがったのだ。
オレはジーンおじさんに聞いたという態で、中層、下層の魔物を狩ったときに死にそうな目にあった怖かった思い出話、また逆にそいつらを倒した時の嬉しかった事などを語ってやった。
最初はとても悔しそうにオレを睨んでいたオレハだったが、意外と途中から、目を丸くしながら聞き入っていた。
元ギルマスのマッスルが、いつもギルマスの部屋で、鏡に向かってポージングしていた事を話してやったら、シャーロットは腹を抱えて笑っていた。
なんとか気まずいながらも、一応平穏に時は流れた。
車内がだいぶ暗くなったなと思ったその時、馬車が止まった。
「変だな、まだ次の街まで距離があるのに止まっちゃった」
ロレンツォが周囲の山や、森の様子を見ながら首をかしげた。
日は西の山脈の向うに落ちようとしている。
多分、この先進んでも、直ぐに道が見えなくなり走る事が出来なくなるだろう。
夜でも人間ならランプ片手になんとか歩けるだろう。
だけど馬車は明かりもなく、スピードも人よりは早い。道の凹凸など全然見えないのでもう走れないのだろう。
この日は新月に近く、月明かりはあてに出来ない。
様子を伺いに外に出ると、アホネン、ハミル、ガレアの三家の騎士、御者、執事が集まって野宿をするか相談していた。
「こんな所でオレハ様を野宿なんてさせられません」
「だが、もはや道はほとんど見えない。ゆっくり進んだら魔物の餌食だ」
「逃げようにもスピードを上られません。道から外れたら横転します」
「魔物に襲われないようにするのが騎士でしょう」
「だからここで野宿しようと言ってるんだ」
「ここで野宿しても危険性は変わらないでしょう」
「火をたいて寝ずの番をすれば大丈夫だ」
執事達が野宿を反対するのに対し、騎士達と御者が野宿を勧める。
この先はやや深い森の脇を通るので、夜行性の魔物に襲われる可能性があるとかで、もう街まで行く事は出来ないようだ。
どうするかな。
「ねえ、次の街までどのくらいでいけるの」
話が堂々巡りになった所でオレが声をかけた
子供の出る幕じゃない――、とイジワル執事がオレを怒鳴ったが、ボクもこれでも護衛だから――、と強引に話に混ざる。
次の街まではゆっくり走っても大ロウソク一本で(燃える時間、大ロウソク二十四本分で丸一日)でいける距離だという。だがその間に魔物に襲われる難所があるとの事だ。
昼間の魔物騒動と、オレハの横車がなければ問題なく街まで着いたな。
「だったらこういうのはどう? 光あれ」
オレは光の精霊に頼んで明かりを出す。
光がオレ達の周囲二浮かび上がった。それも何十個も。
その一郭だけが昼間のように明るくなった。
「この明かりを馬車の前後と横に多めに配置して進めば、道も見えるし、明るいから弱い魔物なら近寄ってこないよ」
ミストが抜けていくが微々足る物だ。次の街まで余裕で行ける。
「おお、この明かりなら」
野宿をしたくないのはオレも騎士の皆も同じ、道を照らす明かりがあって魔物に襲われる危険がないなら進みたいようだ。
五十マイトル先まで照らせるように、先頭の騎士の前に明かりを四つ、また車列に沿って十個ほど左右に配置し、後ろから襲われないように最後尾にも二つ明かりを配置する。明かりは車列と同じ距離を保って、フワフワ進んでいく。
オレは御者台に乗って光の精霊を操作する。
普通なら特に見張る必要も無いんだけど、車列が貴族馬車三台、荷馬車三台、護衛の騎馬が十四騎と長く、精霊も数が多いので一応見張っている。あと魔物が出てもすぐに対応できるようにね。
「なんかすっごくキレイ。まるで神話にある、星空を走るペガサスの馬車みたい、ステキ」
シャーロットが窓から顔を出してはしゃいでいる。
この娘はまだ物語に夢を見る年頃なんだな。その横でオレハは苦い顔をしている。
大ロウソク一本分燃えるほどの時間で、一行は無事に、この日の宿泊予定地、アンティコバの街についた。
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