あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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第二章 王都編

出禁 第三十話 誘魔香 その4

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「オッチャンこっち」
「お兄さんと呼べ! ってお前、誘魔香の場所分かるのか」
 森の奥へ向かって走り出したオレに、隊長が追随する。
「妖精に聞いた」
「妖精使いってホントだったのか。よしエール、ビア、二人はオレについて来い、シークお前がここの指揮を取れ」
 魔物の海を両手のナイフで掻き分けるオレ、それを見て隊長がオレの右横から参戦し、さらに部下二人を呼んでオレの左横と後方に配置する。
 オレ達は即席パーティ、ダイヤモンド隊形で森に分け入る。
 森を通る街道の、入り口から少し行った所を右に曲がって、クーは獣道のような細い道を行く。
 進むほどに、魔物の数が多く、強くなっていく。
 クオン、と鳴いてクーが反応した。
「近い、たぶんあそこだ! 」
 オレが指差した先に、大量の魔物、そしてその中心に一際デカイ魔物がいた。
「あ、あれは、ジャイアントグリズリー……」
 普通滅多に見られない大型の魔物だ。森の入り口で倒したグリズリーの変異種で体高は倍近くある。
 クーがこの忙しい時でも、えらい? えらい? と聞いてくるので「えらいえらい」といって手の平を舐めさせた。甘やかせすぎか?
「見つかる前に逃げましょう」
 付いてきた騎士はさっそく逃げ腰だが、「もう遅い」と隊長が言った。
 だって、あれだけ鎧をガッチャンガッチャン鳴らしてりゃ、そりゃ気がつくさ。
 ジャイアントグリズリーが凶暴な目つきでオレ達を睨んだ。
「仕方ない、ビアお前のサウザンド二ードルで魔物の数を減らせ、アイツにも少しは効くだろ、あいつがひるんだらオレとエールが懐に飛び込む。小僧は戻って仲間を呼んでくれ」
 なんだかオッチャン隊長が悲壮な決意で作戦を練る。
 だけど。
「そんな心配は要らないよ」
 もうゴールは見えている。
「わが呼びかけに応じ、憑依せよ<タロス>」
 オレは迷わずタロスを呼び出す。
『ほう今回はダンジョンではないな、だが中々――』
「そういうのいいから、さっさとやるよ」
 顕現したタロスが、嬉しそうな感想を漏らしたが、急いでいるオレはさっさと魔物を倒したかった。
 腕のリングから片手剣、ファイブフィンガードソードを取り出し、身長四マイトルはあるジャイアントグリズリーへ向かって飛び掛り、脳天へ一撃、そして身体をひねって肩に着地すると、そのまま剣を突き立てるように、左肩から胸へ剣を突き刺し心臓を串刺しにする。これでジャイアントグリズリーは即死だ。
「なんであんな簡単に、ジャイアントグリズリーを」
「簡単そうに見えるけど、頭まで四マイトルはあるぞ、あのジャンプ力、空中で体勢を変える身体能力、剛毛で分厚い毛皮を突き刺す腕力、どれも子供の出来ることじゃねえ」
「バカモノ呆けてる場合じゃない。残りは小物だ蹴散らせ」
 オレはタロスが暴れ足りないので、散々付き合って、騎士の二人といっしょに魔物を蹴散らし続けた。その間に隊長はジャイアントグリズリーの足元にあった誘魔香を回収した。
 ふたの閉じ方が分からなかったようなので、一緒に色々いじったらネジ式で捻ると穴が閉まって匂いがもれなくなることが分かった、という態にした。
 オレが誘魔香の道具の使い方を知ってるのはおかしいからね。
 これで新たな匂いが発生する事はなくなった。
「よし、さっさと戻ろう。仲間とオレハ様が心配だ」
 え、ちょっと待って、
「この素材置いて行くの? 」
 魔物素材はイコール金だ。オレにこの魔物の死骸を捨てていく選択肢はない。
 急いでジャイアントグリズリーを手始めに、四割ほど魔物を回収した。細かいのは泣く泣く諦めた。
 オレもシャーロットたちが心配だったからね。
 森の入り口で、公爵家の残っていた騎士三人が疲労困憊で座り込んでいた。ただここに集まっていた魔物は全て倒したようだ。 
「……また、持って帰るか」
 無言で頷いたオレは、急いで魔物を回収する。グリズリーやグレイウルフを中心に大き目の物だけでも回収した。
 隊長が言うには、目的があって魔物を倒す以外に騎士は魔物を倒しても回収する事はないそうだ。持って帰るのも嵩張るから大変だしね。
 オレはアーティファクトのリングがあるから問題ない。持って帰れるものはなるべく全部持って帰りたい派だ。
 急いで馬車まで戻ってみると、ここでも中々修羅場になっていた。
 シャーロットの馬車とロレンツォの馬車が魔物に囲まれている。中で人が籠城しているようなので、集中的に狙われているようだ。
 四人の騎士が馬を守って奮戦しているのが見えた。
 よし今行くぞ! 
 顕現したタロスはまだまだ暴れる気満々で、力がみなぎってくる。おれは躊躇なく魔物に襲い掛かった。
「オレ達よりずっと前から戦っていたよな」「体力オバケ」「目が血走ってる」
「あいつ、嬉々として魔物に飛び掛っていった」「バトルジャンキー」「血に飢えた狼」
 風の精霊が、騎士たちの言葉を拾ってきた。
 ヒドイ言われようだ。
「ア~~ン、JJくん恐かったよ~~」
 魔物をあっさり駆逐して馬車に近寄ると、たまりかねたかのようにシャーロットが、ボロボロの馬車から飛び出してきて、泣きながら抱きついてきた。
 よしよしもう大丈夫だよ。
 こうしていると「お姉ちゃん呼びしなさい」とか言っても、シャーロットは子供だな。
「JJクンって、ホントに強かったんだね。信じてないわけじゃなかったけど、ビックリしちゃった。助けてくれてアリガト」
 泣き止んだシャーロットが、顔を赤くしてお礼の頬にKISSをしてきた。
 ちょっと照れる。けっこうカワイイところあるね。将来は美人になりそうだ。
 オレハはこういう役回りをしたかったんだろうな。
 オレはリベルタ一筋だけど。
 ロレンツォに聞くと、ここにも誘魔香の香りが漂ってきて魔物が襲ってきたという。
 このまま此処にいるとまた魔物に襲われそうなので、少し移動して、風上の誘魔香が漂ってこないような丘の上に移動した。
 馬車に残っていた人に被害がないか聞くと。幸いシャーロットや、ロレンツォ、そして御者、執事、侍女などは、二つの貴族馬車に分かれて篭城し、全員無事だったようだ。さすが貴族馬車豪華なだけではなく頑丈なようだ。
 馬車を引く馬もガレア家の騎士四人が頑張ったため無事だった。その代り、騎士たちが乗っていた馬は食われるか逃げるかして、一頭もいなかった。またハミル家の騎士は全員逃げたそうだ。
 コイツらは、今後どこかで見つけたら、敵前逃亡の罪で全員貼り付け串刺し決定だな。
 そしてアホネン家は――、馬車も何もなかった。
「残された騎士たちの皆さんの前で言うのもなんだけど、オレハは散々自分の配下の騎士がシャーロットを守るとか言っておきながら、ここまで魔物が押し寄せてくると、皆を置いてさっさと逃げちゃったんだ。戦略的撤退って言ってたけど、単純に恐くて逃げただけだね。騎士の皆さんは死んだと思ってたみたいですよ」
「な……」
 アホネン家の近衛騎士、オッチャン隊長は言葉もなく聞き入っていた。
 オレ達も報告をする。森の中に魔物を誘き寄せる誘引物質の誘魔香があった事、ジャイアントグリズリーまでいた事、そして
「今回の事は、だれかが」オレハジロリと御者を睨む。
「誘魔香という魔物を集めるアイテムを森で使った事が原因だったみたい。ね、タイチョーさん」
「ああ、証拠の誘魔香は回収した」
「「えっ……」」
 そこまで話したとき、執事と御者が、小さく驚きの声を上げた。
 だからオレはワザとオッチャン隊長に話しかけた。
「ねえ、この誘魔香って何処でも買えるの? 」
「まさか、誘魔香は危険なんだ。普通の店で買えるもんじゃないさ。そうだな軍隊なら自分達で作るかな、買うならテイマーギルドかな。錬金術ギルドだとどうかな」
「やっぱりこんな所で魔物集めようとしたなら、近くの街のテイマーギルドが仕掛けたのかな」
「そうかもしれんが、違うかもしれん。何処で作ったかなんて分からんな」
「でもその筒の匂いを出す所、ずいぶん変わった形してるよね」
「うん、……まあ、そうだな。こんな変わった形ならどこで作った物かもすぐ分かるかもな。昨日の街アンティコバにもテイマーギルドはあったし、そこで聞いてみるか」
 オッチャン隊長は犯人がすぐ側にいるとも知らずに、犯人を追い詰めていく。
「そうすればこいつを買った奴とか、これを仕掛けた奴までたどり着けるかも知れねえな」
 犯人、イジワル執事と御者は顔を青くして話を聞いていた。

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