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第二章 王都編
出禁 第三十話 誘魔香 その5
しおりを挟む「そういうわけで」
オレはオッチャン隊長から話を引き継いで、犯人を見る。
「犯人を見つける目星はついたけど、何か言いたい事ある? 御者のオジチャン、そして執事のおニイちゃん」
急に名指しをされて執事と御者は、ビクリと身体を震わせた。
今この場で犯人扱いしないで、王都に行ってシャーロットの母親とか、執事達の上役の人とかいるときに断罪してもいい気もしてたけど、どうしてもここで裁かなくちゃいけない気がした。
なぜなら、王都に行くまであと数日、今ここで断罪しなければ、その間コイツらはそ知らぬ顔でシャーロットに使え続けるのだから、それだけは許せなかった。その間にまたシャーロットが怖い目に合わされたら、オレはそれを許したオレを許さないだろう。だから今、罪を認めさせる。
「な、何のことかな……」
「何を言ってる貴様」
あくまでも白を切るつもりかな。
「白を切りとおしたい気持ち和分かるけど、無駄だよ。オッチャン隊長がアンティコバのテイマーギルドで聞けば一発だもん。夕べこの筒型の誘魔香を買ったのが誰かね」
ここで白を切り通しても調べればすぐばれる事だ。
「お、おいJJ」
ん? 隊長も何か聴きたい事はあるのかな。
「オッチャンじゃねえ、お兄さんと呼べ」
オイ!
「今そこは大事な事じゃないから」
「いや、大事な事だ。ただ、そうじゃなくって、お前こいつらがテイマーギルドで誘魔香を買ったの知ってたのか」
「まあね。正確にはこの御者のオジチャン。アホネン家の嫡男が旅の暇つぶしに、護衛騎士に魔物狩りをさせて楽しみたいって言ってるって嘘をついて買っていたよね、御者のオジチャン。……ただ、オレも誘魔香がこれだけ魔物をひきつける力があるなんて想像もできなかった、事前に止める事も出来たんだけど、此処まで威力があると思わなかったから、そのまま使わせちゃった。それはオレも正直反省してます」
ここまで威力が強いと知っていたら、事前に止めてたし、シャーロットだって怖い思いをさせなくてもよかったんだ。オッチャン隊長たちも死ぬ思いしてたしね。
「JJ、お前が責任を追う必要はないよ。でも……お前ホントに十歳か? 」
ロレンツォが話の腰を折る様な事を言う。
「私もそう思った」
シャーロットまで。それには深い訳があるんだ。いつか話すね。話さないかもしれないけど。
「十歳だよ! そんな事は良いから。オレから全部暴露すると……」
オレは強引に話を切り替える。秘技話題そらし。
執事が御者に命令して誘魔香を仕掛けたさせた事。執事はオレハに命令された事、知っている事は全部ばらした。
「知りたいのは、なんで執事のニイチャンがオレハの言う事を聞いているかと、オレハがなんでこんな無茶を言ってきたのかって事」
そこまでオレが言った時、執事が逃げ出した。
「光の精霊、目くらましを」
オレが言うと、オレのミストが少し減って、執事の顔が光った。そして執事は「目が目が~」といってその場ですっ転んだ。
執事はオッチャン隊長に取り押さえられ、締め上げられてとうとう全てを白状した。
「元々俺の兄貴はオレハ様付きの執事で、その関係でオレハ様ともつながりはあったのさ」
そうか、オレハの執事に会ったとき、雰囲気が似てると思ったのは兄弟だったからか。
「だが、今回の騒動の発端は、JJ、貴様だ」
は、オレ?
皆がオレを見る。え、オレ何もしてないんですけど。
「わずか十歳で精霊魔法を使いこなし、エドワルド様にも気に入られ」
「エドワルドって? 」
「お父様! 」「エドワルド・ハミル辺境伯さまだ! 」
シャーロットと、執事から同時に突っ込まれる。知らなかったものは仕方ない。
「……続きをどうぞ」
「エドワルド様は珍しい物と強い者が大好きだ。そういう話を聞くと是が非でも手に入れたくなり、そして手に入れると自慢したくなるんだ」
典型的なコレクターだな。
「それだけなら問題ないが、それをアホネン公爵に自慢したんだ、そして将来婿にしてもいいとまで言ったのだ」
「ブッ! 」「お父様ッ! 」「ホントかっ! 」
オレ、シャーロット、そしてロレンツォまで噴出した。何と言うバカな事を言い出すんだあの親父。シャーロットはそこで顔を赤くしない、勘違いされるぞ。
「オレはその場にいたからわかったが、それは冗談だ。その場にオレハ様がいたのでからかっただけだ」
よかった。心底ホッとした。オレはリベルタ一筋だよ。と心の中でリベルタに思いを告げる。なんだかロレンツォもホッとした顔だ。
「だがオレハ様は本気にした。冒険者上がりの護衛になど負けないと仰ってな。そこでオレハ様はオレに、シャーロット様との仲を取り持つようにと言われたんだ。そして魔物を倒して、公爵家の力を見せ付けようとしたり、馬車で二人きりにさせようとしたり、全て上手くいかなかったがな。JJ、貴様が全て美味しい所を掻っ攫っていったんだ」
掻っ攫った覚えはない。……というよりもなんだか穴だらけの計画で、そんなんで本気で上手くいくと思ってたのか?
勝手に恋敵認定されたけど、オレの方が恥ずかしいわ。
「それでもう一度魔物を集めて、オレにケガをさせて、公爵家の騎士が魔物を倒せばシャーロット様が振り向いてくれると思って、今回の誘魔香の事件を画策したと」
執事は、話す事は全部話したとばかりに口をつぐんだ。
無言が肯定だ。
オレももう聞くことはなかった。
「どうします、この二人」
オレがシャーロットに話を振ると、「どうしますと言われても……」と、シャーロット自身どうして良いか分からないようだ。
「シャーロット、これはこの二人だけ処罰すれば良いと言う問題じゃない」
ここで、今までずっと静かに話を聞いていたロレンツォが口を開いた。
「君の家だけの問題ではなく、公爵家とも深く関係する問題だ。もしかしたらアンティコバのテイマーギルドも罰を受けるかもしれない。とても僕らだけで決められる問題じゃない。一旦二人は捕縛したまま王都へ連れて行こう。その後、キミのお母様へ相談するのがいいだろう。エドワルドさまにも原因の一旦はあるしね」
うん、ロレンツォの言うとおりだ。
シャーロットの父親に言わせると、ロレンツォは頭が良くても腕っ節はからっきしで、心もとないらしい。……でもそうかな。
これだけきちんと考える事もできれば、とても頼りになる存在だと思うけど。シャーロットもホッとしているみたいだし。
魔物が出たらオレでも対処できる。でも、今回のような貴族の家がらみの事はからっきしだ。考えてみるとシャーロットとロレンツォはけっこうお似合いなんじゃないか。オレはお邪魔虫……。
まあその辺は後で良いか。
そろそろ移動しないと。また日が暮れても街につかないと言うのは嫌だな。
この後、オッチャン隊長と部下の騎士たちは、オレハの後を追って、アンティコバの街へ行くそうだ。そして一応テイマーギルドへ裏取りをすると言う。
スタンピードを起こしかけたことに関しては、うやむやには出来ないらしい。
その後、そのままアホネン家に引き続き使えるかは、正直分からないと言っていた。今回、置きざりにされた事に関してけっこうショックだったらしい。
「主家の嫡男が危険になったら、家臣を置いて逃げる、それは仕方ないと思う。だがな、家臣のオレ達の実力を信じて魔物を誘き寄せたんなら、もっと自分達を信じきって欲しかったし、何も確認しないまま自分達を死んだと断定した事にも腹が立つ」
ということだった。
そりゃそうだ。あと、
「嫉妬心に囚われて魔物を誘き寄せて恋敵を屠ろうなどとは言語道断だ」
と憤慨していた。
シャーロットは、オレハとは口も聞きたくないと怒っていた。
「元々、好きも嫌いも意識した事はないわよあんな奴、隣の領の同い年の顔見知りの男の子としか見ていなかったんだから。それが今回、急に執事を使って近寄ってきて、魔物が来たら守りますからとか甘い事を言っておきながら、イザ魔物が来たらさっさと逃げ出すなんて。出来ないなら最初から言うなっていうのよ。しかも、その魔物自分で用意したんですって!? 自分で用意したんなら責任取れって話でしょ! もう、本気で腹が立つわ。自分を生贄にして私たちを逃がせって言うのよ、そう思うでしょッ、JJくんッ!! 」
だそうだ。
生贄はどうかと……。
ま、そういうわけでアンティコバへは戻らず、そのまま次の街へ向かう事になった。
魔物相手にかなり時間を使ったので、明るいうちに町までつけるか心配だったが、シャーロットは本気でオレハを嫌いになったので、そこを曲げてとまでは言えなかった。
暗くなったら、また光の精霊頼りで強行するかな。
いやガレア家の騎士の皆さんは馬がないから歩きだ。やっぱり途中で野宿かな。
ちなみに執事と御者も後ろ手に縛られて歩きだ。
オッチャン隊長とはここでお別れだ。
オッチャン隊長に、アホネン家に愛想が尽きたらハミル家に来てと伝えようかと思ったが止めた。
シャーロットには悪いけど、あの父親もイマイチ信用出来ない。
状況は似たり寄ったりかも知れないからね。
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