あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

文字の大きさ
75 / 103
第二章 王都編

第三十二話  王都 JJ受難 その2

しおりを挟む

 ピシリと鞭でたたかれた。まだ軽く叩かれただけなので怪我するほどじゃないが、それなりに痛い。
「本気で殴られたいのか。子供だからと言って容赦はしないぞ」
「だから、誤解だって――ヅッ!?」
 今度は声が出せなかった。背中に激痛が走る。一瞬息が出来なかった。多分思い切り鞭で叩かれたのだろう。
 さらにもう一撃。
 もの凄い音と衝撃、そして真っ赤に焼けた鉄棒を押し付けられたような、熱さと激痛がオレの体を襲った。
「いい加減吐く気になったか」
「は、吐くも……何も」 
 ビシッと三撃目が今度は肩に落ちる。重い身を切られるような痛さだ。
 なんでオレがこんな目に。
 もう何もかも投げ捨てて、こいつらぶん殴って逃げ出したい。
 だけど、ここで逃げると只の犯罪者プラス逃亡犯。このあとリベルタにも会えなくなるし、ディアも学校で一人ぼっちだ。ここは耐えなければ。
 やはり、護衛にしたいとか言ったハミル辺境伯の誘い言葉は真っ赤な嘘で、オレをはめるための罠だったんじゃないかと思われる。理由は分からないが……。
「オレは……言われたと、り馬車……届け」
「まだ言うか! 」
 あくまでも白を切るオレに、鞭を振るい続ける警邏の男。
 五発目までは鞭を背中に受け、その後は身体の向きを変えられて、胸と腹に五発鞭を受けて、この日の尋問は終わった。
「ふん、明日もその強情が続くかな。牢屋にぶち込んでおけ」
 警邏隊の詰め所の半地下のような石造りの牢屋に蹴飛ばされてぶち込まれた。
 冷たい石畳が、痛いが気持ちいい。
 チクショウ、何が何でも罪を認めさせる気か。
 どうしてこうなったのか謎だが。このままでは本気でまずい。
 身体が持たないので、一本だけ残っていた高級ポーションを飲もうかと思ったら、
「小僧、出ろ。釈放だ」
 鞭を振るった男とは別の男が、気まずそうに牢屋の鍵を開けてオレを釈放した。
「なんで急に釈放されたんだ」
「さっさと行け」
 男はイライラしながら、オレを出口へと促す。
 外に出ると、もう日はギリギリ暮れた、いわゆる逢魔が時という薄気味悪い明るさだつた。その薄暗闇の中、オレを迎えに来たらしい、一人の女が立っていた。
 それはとても意外な人物だった。
「アラアラ、とてもヒドイ格好ザマスわね」
 その女は、オレのズタズタに破れたシャツと傷だらけの身体を見て、抑揚の無い声でそう言った。
 この女は、メセタの街のギルマス?
「メセタのギルマスの……ザーマスさん? 」
「違うザマス。サーマス・ザーパス、ザマス」 
 なんでここに、なんでオレを迎えに、ギルドはどうした?
 様々な疑問が浮かぶが言葉が出ない。
 オレを迎えに来た……味方か。
「ハミル家としてユーを引き取りに来たザマス。釈放されてよかったザマスね」
 そう言いながら、ザマスギルマスは、警邏の人間から、取り上げられていた傷だらけの馬車と四頭の馬を受け取った。
 〝ハミル家として〟ということは、ザマスは辺境伯家の人間なのだろう。
 つまり、オレの敵か。
「ありがとう、ザマス」
「? どういたしませて」
 何をありがとうなのか分からない。
「ユー、人に頭を下げられない人は、一生大人にはなれないザマスよ」
 御者台に上がりながら、オレを見下ろしてザマスが言う。
 そこまで言われて初めて、“ありがとう”と礼を言えと言ってることに気がついた。
 まあ、そうだな。たとえ敵でも、いったんは礼を言っとかないといけないかな。助けられたのは事実だし。油断は出来ないけど。
「あ、ありがとうございます」
「どういたしましてザマス。では光の精霊よ、JJの傷を治すザマス」
 ザマスギルマスが呟くと、オレの傷が癒され、体の痛みがなくなった。
「これは……精霊? 」
 傷が癒される時に感じた暖かい波動は、精霊魔法のようだ。
「この間も思ったザマスが、やっぱりユーは、精霊の魔法がまだまだ、ザマスわね」
「な……」
 精霊魔法自体使い手がほとんどいない中で、オレ以上の使い手なんているはずが……。
 いや、目の前にいるのは、オレ以上の使い手なのか。
 精霊には、ポーションのように傷を癒すような事は出来ない。
 そう思っていた。
 だがそれはオレの思い込みだったのか。精霊の魔法はもっともっと奥深いものなのだろうか。
 だとしたら、精霊の魔法がまだまだと言われても仕方がない。
「まあ、これに懲りたら、もう一度精霊の魔法をシッカリと修行しなおすザマス。今までサボっていた罰に、今日のところは屋敷まで走ってもらうザマス」
 へ? と思っていたら、ザマスはオレを置き去りにして馬車を発車させた。
「さっさと付いてこないと、屋敷に行く前に迷子ザマスわよ」
「おい、ちょっと待てッ」
 この後オレは、馬車を追って辺境伯家まで、小ロウソク一本分ほど全力疾走させられた。

     ※

 辺境伯家に付くと、玄関には二人の女性の影があった。
 もはや夜の帳も下りて、その姿は黒い影としか見えなかったが、なんとなく予感はあった。風の精霊が教えてくれていたから。疲れてよく聞こえなかったけど。
「光の精霊、明かりを」
 疲れた身体に鞭打って、光の精霊にお願いすると、光がぽうっと浮かんで、ディアとリベルタの顔を浮かび上がらせてきた。
「JJッ!? 」
 リベルタが駆け寄ってきて、オレに抱きついた。「心配したんだからッ」
 言ってるそばからディアの声が少し涙声になったのが分かった。
 どうやらかなり心配かけたようだ。
 本当は昨日の内に、この屋敷で合流するはずだったのに、一日遅れてさらに、護衛対象の少女は来たのに、護衛するはずのオレだけ来ないのだ。心配もするだろうな。
 心配させてゴメンとオレは頭を撫でてやる。
 ふとリベルタを見ると、彼女は彼女でホッと胸をなでおろしたといった感じで微笑を見せた。
「まあ玄関先で話し込むのもなんザマスから、中に入るザマス」
「JJ、この服どうしたのッ!? 」
 ザマスがオレ達を屋敷の中に誘おうとした時、ディアがオレの破れたシャツを見て驚きの声を上げた。今頃気がついたのか。
「ああ、えっと階段で転んじゃって破れちゃった」
 ホントの事を言っても心配させるだけだからね。
「本当に? 階段で転んだってこんなに破けないわよ、本当に大丈夫なの? 」
 ディアは心配性だな。オレはディアに大丈夫だといってシャツの破れ目から肌を見せてやる。ザマスのお陰で身体は傷一つない。
「だったらいいけど……本当に大丈夫なの、ねえ、本当!? 」
 ディアは疑り深い性格なのか、本気で心配なのか、オレが肌の一部を見せただけでは信用せず、オレのシャツを脱がせて身体全部を確認しようとする。
「あっ、バカ止めろ、イヤッ、エッチ」
 ズボンまで下ろし始めたので、オレは必死に大事な所を死守する。
「JJくん遅かったじゃない、今まで何やって……何を……って、人の家の前で何やってるのよッ!」
 タイミング悪くオレが半裸にされたところで、シャーロットが玄関から飛び出してきた。
 ようやくディアの攻撃が止まったところで、おれはマジックリングから替えのシャツを取り出していそいそと着替えたのだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...