あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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第二章 王都編

第三十六話 魔法騎士学校入学試験 その5

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第三十六話 魔法騎士学校入学試験  その5


「久しぶりだね、シャーロット嬢。隣に座ってもいいかな」 
 JJに声援を送った私の背後から、声をかけてきた人がいた。
 振り向いてみると、同い年くらいの男の子。端正な顔立ちで柔和な笑顔。気品ある立ち居振る舞い。仕立ての良い服、これぞ貴族オブ貴族を体現する少年だった。
「こ、これはラージュ殿下、お声をかけていただき光栄に存じます」
 突然現れたのは、ラージュ・ラスクール第四王子殿下。
 同い年だが貴族子弟の中ではまさにトップオブザトップ。
 パパからもらったマジックピクチァーで顔だけは覚えていたので咄嗟に思い出せてよかったけど、どんな性格の方だったかしら……。久しぶりすぎてよく覚えていない。
 なんでこんな所に。緊張する。
「わ、私の方からご挨拶しなければならないところを申し訳ございません。長の無沙汰をお詫び申し上げます。お、お久しぶりでございますが、ご機嫌はいかがでしょうか」
 私は淑女の礼をとって、なんとかきちんとした挨拶をかえす。
 失礼なく出来たかな。
「あははは、堅い、堅いよシャーロット。ご機嫌は悪くないし、公の場所ではないから堅苦しい挨拶は抜きにしようよ」
 私が緊張を優しくほぐすかのように、殿下は気さくに笑みを浮かべて返してきた。
「は、はい。ありがとうございます。私の隣でよければ、どうぞお座りになってください」 
 さすが紳士というべきか、女性の隣に座るのに許可が必要なので、殿下は律儀にずっと立って待っていたのにようやく気づき、私の隣の席へと誘う。
 たしか殿下とは、三年前の“十歳の義”という、その年十歳になった貴族の子弟が集められた親睦会で会って以来の再会になるかな。
「座らせていただく前にもう一人挨拶をさせてもらおう。隣にいるのは初めて挨拶する顔だな……」
 殿下は、私を挟んで反対側の席にいた、殿下が来てからずっと立って待機していたロレンツォを見て聞いてきた。
 しまった、二人は初対面だったか。
 本来、私が最初に二人を紹介しないといけなかったのに。
 貴族位の下の者から話しかけると失礼に当るので、ロレンツォは話しに加わる事ができずにずっと待っていたようだ。
「殿下、ご紹介が遅くなり申し訳ございませんでした。こちらはガレア子爵家の二男ロレンツォ・ガレア様です。ロレンツォ様、こちらの紳士はご存知だと思いますが、ラージュ・ラスクール王子殿下です」
「初めまして、ただいまご紹介にあずかりました、ガレア子爵家二男のロレンツォ・ガレアでございます。春から殿下の同窓生となりますので、若輩者では有りますが、よろしくお見知りおき下さい」
「うむ。ラージュ・ラスクールだ。同級生になる身だ、気楽にラージュと呼んでくれ。代わりに私もロレンツォと呼んでもいいかな」
「光栄です」
 後で聞いた話だと――、
 殿下は三年前の十歳の儀の、さらに三年前から去年まで、十歳の儀に出席する、歳が近い年上年下前後二、三年の、貴族の子弟の顔や立ち居振る舞いを覚えるようにしていたようだ。
 だから、ロレンツォの事も知っていたらしい。
 名前は多分知っていたけど、知らないふりをして私の顔を立てたのでは、とロレンツォは推理したが、それは後のこと。
「ではレディの許可も頂いたので、隣に座らせてもらうよ」
 殿下は私の隣に腰を下ろす。
「相変わらずだなシャーロットは」
 私は意味が分からず小首をかしげ、隣でロレンツォも頭にハテナを浮かべる
「相変わらず……? とはどういう意味でしょう」
 なんだかからかわれたような。悪意はないようだけど、何か不敬でも働いたかな。
 緊張して問い返す。
「三年前に“十歳の儀”で会ったときは、他の貴族の子弟と鬼ごっこしたり、木登りしたり、挙句の果てには喧嘩をして相手の男を泣かしたり、酷いお転婆で城のメイド達が大変だったと嘆いていたぞ」
「そんな事ありませ……」
 あった。思い出した。……思わず顔が赤くなる。
「あ、あの時はまだ子供で、行儀作法も習っていませんでしたので……」
 あの時はパパに騙されて、『同い年の子供が集まるから楽しいぞ』と言われて何も知らずに城に遊びに行ったのよ。まさか王家主催の公式行事だとは知らなかった。悪いのはパパよ。……でも、木登りしたり、男の子を泣かしたのはまずかったかしら。
 上手い言い訳が浮かばず、言葉に詰まると殿下は、さらに畳み掛けてきた。
「少しは変わったかと思ったら、『JJく~ん、頑張って~ッ! 』って。普通、淑女はあんな大声は出さないからな」
「あっ」
 しまった聞かれてた。
 JJくんは私に対しても、貴族に対する固い挨拶などはしないから、私もJJくんに対してはつい貴族らしい発言はしなくなっている。
「あ、あれはその……」
「ははははっ。いいさ、元気なシャーロットに再会できてオレも嬉しいよ」
 殿下の優しい笑みに緊張がほぐれていく。
「ところで」
 殿下が試験の会場に目を移して話を変えてきた。
「あそこの舞台に上がったちびっ子、あれがJJくんとかいう、シャーロットのお気に入りかい」
 殿下はそういって試合の舞台で一周り、いや二周りは大きい男の子と対峙しているJJくんを指差した。
 もうバレバレだわ。
「お気に入りというか、私の護衛だったんです」
「護衛か。腕に覚えがあるようだな。さっき関係者に聞いたら、今年最年少の受験者なのに、ここまで四連勝で勝ち上がってきたらしいぞ」
「そ、そうなんです。やっぱりJJくんは強いんです。この試合も多分勝っちゃうと思います」
「すごい自信満々だな。でも今度の相手はどうかな。体格差が酷いぞ、勝てるのか」
「もちろんです。だってJJくんは、グリズリーの魔物にまで勝っちゃうくらいですから」
 私は、JJくんが褒められて嬉しくなった。
 で、余計な事を言ったようだ。
「グリズリーって。あの熊の魔物か? 立ち上がると身長2マイトルにはなると聞いたことがあるぞ、本当か」
「はい、倒したのは間違いないです」
「ロレンツォ、本当か? それともシャーロットは誇大妄想壁が強かったのかな」
「恐れながら殿下」「ラージュだ」「ラージュ様、倒す所を見てはおりませんが、そう聞いております」
 王子は一瞬驚いた顔をしたが、その後すぐに、いたずらっ子がおもちゃを見つけたような笑みを浮かべた。
「ふ~ん、ロレンツォまで吹くことよ」
「ホラではありませんが」
「じゃあ、賭けないか」
「はっ? 賭けとは」
「シャーロットの護衛が勝つか。相手が勝つか。オレは相手に賭ける、シャーロットはJJに賭ける、負けた方が、勝った方の言う事を何でも聞くというのはどうだ」
「殿下それはいくらなんでも」「ラージュ様それは」
「負けないのだろ、問題ないではないか」
「良いですわ」「シャーロット!? 」
「よし、JJとやらの、グリズリースレイヤーの看板はウチの護衛にもらおう」
 ウチってどういう意味だろう。
 その時は意味は分からなかったが、でもそれは、殿下がココにいる事をよく考えれば分かる事だった。
「あのJJの相手はオレの護衛だ。実力は確かだが、何が不満なのか王家の推薦を断って実力でAクラス入りを勝ち取ると宣言した頑固者だ。その王子の護衛が、辺境伯家の護衛でしかも五歳も年下の子供に負けたとあっては沽券にかかわる。グリズリースレイヤーを倒して、グリズリースレイヤースレイヤーにさせてもらおう」
 なんでも相手の受験生は王宮近衛騎士団の騎士団長の息子で、殿下よりも二つ年上の十五歳、殿下に会わせて魔法騎士学校の入学を二年も遅らせたのだとか。。
 そうか、殿下は自分の護衛が受験しているので応援に来たのだ。
 しまった煽るような事言っちゃった。けどもう後の祭りね。
「い、いいえ殿下。殿下の護衛ならば同い年で勝てる人はいないでしょう。賭けにもならないのでは」
 とは言ってみたが、王子は聞く耳を持たなかった。
「グリズリースレイヤーなのだろう。それともあれは嘘か」
「いえ、本当です。食べましたから」
「シャーロットッ! 」
 また余計な事を言っちゃった。ロレンツォが慌てて止めるが後の祭りだ。
「食べた? 魔物をか? 」
「えっと、美味しかったですよ」
 開き直って言ってみると、殿下は目を丸くした。
 魔物は食べられるという事を知らなかったらしい。私もこの間まで知らなかったけど。
 魔物肉って意外と美味しいし、庶民は結構食べていると教えてくれたのはJJくんだ。
「よし、うちの護衛が勝ったら、グリズリーの肉も食わせてもらおう」
 なぜそうなる?
 他人は知ってて、自分は知らない、ということが嫌いなのだろうか。
「カルロ! 絶対勝て、負けは認めんぞ」
 あっちゃー、なんか王子に火がついちゃった? どうしよう。

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