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第二章 王都編
第三十六話 魔法騎士学校入学試験 その8
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「JJが手を突いて負けを認めたようだ。どうやら、賭けはオレの勝ちのようだな」
「はい」
「さて、賭けに勝った場合、どういう約束になっていたかな」
試合会場を見ていたラージュ殿下は、得意げに笑みを浮かべて振り向いた。
何だか変なことになっちゃったな。
「えっと、確か、グリズリースレイヤースレイヤーを名乗りたいとか。どうぞご遠慮なく」
「え、いや、違うから。確かに言ったけどそれは言葉のあやだからね」
殿下が慌てて否定してくる。
チッ、誤魔化そうと思ったけどダメだったか。
「シャーロット、チッとか、口から出てるから」
ロレンツォが横から注意してくる。
そんな注意はいらないから、何とか誤魔化してほしい。
「“負けた方は勝った方の言う事を何でも聞く”っていう約束だったが、どんな事をお願いしようかな」
やっぱり覚えていたのね。
まあ小ロウソク半分もたっていないから、オジイチャンでもない限り忘れるはず無い。
王子が十三歳で物忘れが激しかったら、それはそれで問題だ。
「ああ、グリズリーの肉を食べたいとか、結構食いしん坊キャラでしたのね」
「グリズリーの肉“も”って言ったはずだ」
殿下は優越感に浸ってニヤニヤ笑っている。
まるで部屋の隅に追い詰めたネズミを、どうやって料理しようか楽しむネコみたい。
ネコのネズミ料理がどんな物か想像もしたくないけど。
「確かシャーロットはまだ、許婚を決めてはいなかったな」
「は……はい? 」
何を言い出すんでしょう。
確かに、私はまだ決まった許婚がいないわ。
私の場合は、パパが娘を溺愛しすぎているからで、多分二十歳くらいまでは結婚はないと思う。
だって長女のお姉さまだって、十六歳になってもまだ許婚がいないんですから。
「では、こうしよう。オレもまだ許婚は決まっていない。オレの嫁になるか、ん」
え、殿下も許婚が決まっていなかったのか。
だけど、たとえ殿下でもパパが許すとは思えない。
「で、で、殿下。それはさすがにまずいかと。王陛下のご許可を仰がねばならない案件ですので……」
珍しくロレンツォが取り乱して殿下に抗弁する。
が、殿下は平然としたものだ。
「ラージュだ。まあ確かに陛下には申し上げねばならないが、問題ない。常々気に入った女性がいたら連れて来るようにと言われているのだ。まずは一回陛下に会ってみるか」
会ってみるか、ってそんな気軽に合えるお人ではないと思いますよ、陛下って。
さて、どうやってお断りしようかしら。
「そうだ近々姉上の誕生会があるのだ。非公式のものだから、社交デビューする前の者でも出席できる。姉上のクラスメイトと身内とごく一部招待者だけのささやかな会だが、陛下も少しだけ顔を出すはずだ。会うなら丁度良い催しだろう」
えっと、殿下の話はまだ続いていた。
どうやって断ろうか悩んでいると、そこに助け舟が現れた。
「おお、カルロよくやった。見事五連勝だな」
殿下の声に振り向くと、そこには先ほど、JJくんと試合をしていた受験生が立っていた。たしか殿下の護衛騎士の人。
近くで見ると顔立ちは幼さがまだあるけど、体格は大人と言ってもいいくらい、これじゃJJくんだって勝てないわよね。
「申し訳ございません」
たしかカルロと呼ばれてたこの人は、殿下の前にまで来ると突然頭を下げて謝った。
「必ず勝てといわれながら、勝つ事が出来ませんでした」
???
私はこの人が何を言ってるのか分からず小首をかしげ、横の殿下とロレンツォを見ると二人も頭にハテナを浮かべている。
JJくんに土下座させて『参りました』と言わせていた人が何を言ってるのでしょう。
あれ、ついさっきの事を覚えていない?
「どういう事だ? 」
「実は先ほどの試合は……」
どうやらおつむがカワイソウな人ではないようです。
カルロさんが言うには、あの試合JJくんが場外負けで土下座して負けを主張してきたので、審判もそれを認めてカルロさんの勝ちになったけど、『もし場外ラインなどない戦場で戦っていたら、武器をなくした自分は絶対に死んでいた』というのです。
しかもJJくんが場外ラインを出たかどうか、誰も見ていないとか。
つまり、勝ちを譲られた、とカルロさんは言うのです。
「自分が終始攻勢に出ていたと、つい先ほどまで思っていました。ですがそれは誤りで、終始攻めさせられていて、あの少年の手の平の上で踊らされていたのではないかと思うのです。最後、剣を突きつけてニヤリと笑った顔を見て、歴然とした力の差を見せ付けられた思いです」
「ふうむ、さすがグリズリースレイヤーといったところか」
殿下が変なところで感心している。
あれ、……とすると?
「という事は殿下、先ほどの賭けは私の勝ちという事になりますか」
「はい」
「さて、賭けに勝った場合、どういう約束になっていたかな」
試合会場を見ていたラージュ殿下は、得意げに笑みを浮かべて振り向いた。
何だか変なことになっちゃったな。
「えっと、確か、グリズリースレイヤースレイヤーを名乗りたいとか。どうぞご遠慮なく」
「え、いや、違うから。確かに言ったけどそれは言葉のあやだからね」
殿下が慌てて否定してくる。
チッ、誤魔化そうと思ったけどダメだったか。
「シャーロット、チッとか、口から出てるから」
ロレンツォが横から注意してくる。
そんな注意はいらないから、何とか誤魔化してほしい。
「“負けた方は勝った方の言う事を何でも聞く”っていう約束だったが、どんな事をお願いしようかな」
やっぱり覚えていたのね。
まあ小ロウソク半分もたっていないから、オジイチャンでもない限り忘れるはず無い。
王子が十三歳で物忘れが激しかったら、それはそれで問題だ。
「ああ、グリズリーの肉を食べたいとか、結構食いしん坊キャラでしたのね」
「グリズリーの肉“も”って言ったはずだ」
殿下は優越感に浸ってニヤニヤ笑っている。
まるで部屋の隅に追い詰めたネズミを、どうやって料理しようか楽しむネコみたい。
ネコのネズミ料理がどんな物か想像もしたくないけど。
「確かシャーロットはまだ、許婚を決めてはいなかったな」
「は……はい? 」
何を言い出すんでしょう。
確かに、私はまだ決まった許婚がいないわ。
私の場合は、パパが娘を溺愛しすぎているからで、多分二十歳くらいまでは結婚はないと思う。
だって長女のお姉さまだって、十六歳になってもまだ許婚がいないんですから。
「では、こうしよう。オレもまだ許婚は決まっていない。オレの嫁になるか、ん」
え、殿下も許婚が決まっていなかったのか。
だけど、たとえ殿下でもパパが許すとは思えない。
「で、で、殿下。それはさすがにまずいかと。王陛下のご許可を仰がねばならない案件ですので……」
珍しくロレンツォが取り乱して殿下に抗弁する。
が、殿下は平然としたものだ。
「ラージュだ。まあ確かに陛下には申し上げねばならないが、問題ない。常々気に入った女性がいたら連れて来るようにと言われているのだ。まずは一回陛下に会ってみるか」
会ってみるか、ってそんな気軽に合えるお人ではないと思いますよ、陛下って。
さて、どうやってお断りしようかしら。
「そうだ近々姉上の誕生会があるのだ。非公式のものだから、社交デビューする前の者でも出席できる。姉上のクラスメイトと身内とごく一部招待者だけのささやかな会だが、陛下も少しだけ顔を出すはずだ。会うなら丁度良い催しだろう」
えっと、殿下の話はまだ続いていた。
どうやって断ろうか悩んでいると、そこに助け舟が現れた。
「おお、カルロよくやった。見事五連勝だな」
殿下の声に振り向くと、そこには先ほど、JJくんと試合をしていた受験生が立っていた。たしか殿下の護衛騎士の人。
近くで見ると顔立ちは幼さがまだあるけど、体格は大人と言ってもいいくらい、これじゃJJくんだって勝てないわよね。
「申し訳ございません」
たしかカルロと呼ばれてたこの人は、殿下の前にまで来ると突然頭を下げて謝った。
「必ず勝てといわれながら、勝つ事が出来ませんでした」
???
私はこの人が何を言ってるのか分からず小首をかしげ、横の殿下とロレンツォを見ると二人も頭にハテナを浮かべている。
JJくんに土下座させて『参りました』と言わせていた人が何を言ってるのでしょう。
あれ、ついさっきの事を覚えていない?
「どういう事だ? 」
「実は先ほどの試合は……」
どうやらおつむがカワイソウな人ではないようです。
カルロさんが言うには、あの試合JJくんが場外負けで土下座して負けを主張してきたので、審判もそれを認めてカルロさんの勝ちになったけど、『もし場外ラインなどない戦場で戦っていたら、武器をなくした自分は絶対に死んでいた』というのです。
しかもJJくんが場外ラインを出たかどうか、誰も見ていないとか。
つまり、勝ちを譲られた、とカルロさんは言うのです。
「自分が終始攻勢に出ていたと、つい先ほどまで思っていました。ですがそれは誤りで、終始攻めさせられていて、あの少年の手の平の上で踊らされていたのではないかと思うのです。最後、剣を突きつけてニヤリと笑った顔を見て、歴然とした力の差を見せ付けられた思いです」
「ふうむ、さすがグリズリースレイヤーといったところか」
殿下が変なところで感心している。
あれ、……とすると?
「という事は殿下、先ほどの賭けは私の勝ちという事になりますか」
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